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football2020.10.07

サッカー日本代表、欧州組で形成されたヨーロッパ遠征での戦い方とは。

SAMURAI BLUEことサッカー日本代表が、実に11カ月ぶりとなる活動を行なっている。10月5日からオランダに集合し、トレーニングを積んでいるのだ。9日にはカメルーン代表と、13日にはコートジボワール代表とのテストマッチも組まれている。

森保一監督率いる日本代表は、長い空白期間を強いられてきた。

新型コロナウイルスの感染拡大により、国際サッカー連盟(FIFA / フィファ)は今年3月と6月の国際Aマッチを全世界的に中止した。8月下旬から9月上旬の活動も、欧州サッカー連盟だけに制限されていた。

日本代表が最後に活動したのは、昨年11月までさかのぼらなければならない。東京五輪世代を含めたその時々のベストの布陣となると、同年10月が最後になる。

それだけに、森保一監督は「多くの方が(試合の)実現に向けて頑張ってくださったことに感謝の気持ちを持って臨みたい。そして代表の活動ができる喜びを持って、練習に、試合に臨みたい」と話した。

発表された25人のメンバーは、すべて欧州のクラブに所属する選手である。Jリーグの選手とスタッフはPCR検査を2週間に1度受け、外部との接触をできる限り避けながらリーグ戦に臨んでいる。日本代表の活動期間もJリーグは開催されており、国内でプレーする選手が今回の遠征に参加すると、政府の要請により2週間の自主待機が求められる。およそ1カ月にわたって、リーグ戦に出場できなくなってしまう。「帰国後の自主待機を考えると、国内の選手の招集は難しい」というのが、森保監督の判断だった。

ちなみに、ヨーロッパ内にも渡航制限や入国制限が敷かれている国がある。森保監督は「セルビアとロシア」をあげており、パルチザン・ベオグラード(セルビア)のFW浅野拓磨、FCロストフ(ロシア)のMF橋本拳人が選考の対象外になったと見られる。

メンバー招集には、様々な制約が課せられた。それでも、十分に楽しみな陣容となっている。ヨーロッパでプレーする日本代表選手のボリュームの厚みを、改めて感じさせる陣容と言っていい。

森保監督の選考そのものに驚きはなかった。およそ11か月ぶりの活動ということで、「基本的なコンセプトの確認と意思統一」が合宿のテーマになるからだろう。システムについては「まずは4バックでトレーニングを積んで試合に臨みたい」と語っており、これまで同様に4-2-3-1が採用されることになりそうだ。

GKは川島永嗣、権田修一、シュミット・ダニエルの3人体制だ。昨年11月のキルギス戦と同じ顔触れである。所属クラブで定位置をつかんでいる選手はいないが、欧州でプレーする選手という条件では、この3人がベストな選択なのだろう。

DFはキャプテンの吉田麻也(サンプドリア / イタリア)と酒井宏樹(オリンピック・マルセイユ / フランス)、それに森保監督の指揮下で定位置をつかんだ冨安健洋(ボローニャFC / イタリア)、昨年11月のキルギス戦で吉田とコンビを組んだ植田直通(セルクル・ブリュージュKSV / ベルギー)らが名を連ねる。東京五輪世代のチームではボランチで起用される板倉滉(FCフローニンゲン / オランダ)は、今回はCBで選出された。

注目は左サイドバックか。当初は8月末からマルセイユの一員となった長友佑都(マルセイユ / フランス)がリストアップされていたが、コンディション不良のため不参加となった。このため、今夏にFC東京からハノーファー96(ドイツ)入りした室屋成や、ポルティモネンセSC(ポルトガル)所属の安西幸輝に、左サイドバックでアピールの機会が巡ってくるかもしれない。

オランダのAZアルクマールに在籍する菅原由勢は、日本代表初選出となった。東京五輪世代の20歳は複数ポジションをこなすポリバレントなタイプで、「将来的に日本代表に十分絡んでくるという期待も込めて」(森保監督)の招集である。

MFは原口元気(ハノーファー96 / ドイツ)、柴崎岳(CDレガネス / スペイン)、遠藤航(VfBシュツットガルト / ドイツ)、南野拓実(リバプールFC / イングランド)ら、森保監督のもとで中核を担ってきた選手が顔を揃えている。

原口と遠藤はクラブで存在感を示しており、柴崎もスペイン2部のクラブに居場所を見つけた。ダブルボランチは柴崎と遠藤のコンビで間違いなく、東京五輪世代の中山雄太(PECズヴォレ / オランダ)は短い時間で存在感を発揮できるか。

激戦区はこれまで同様に2列目になるだろう。左サイドのレギュラー格だった中島翔哉(FCポルト / ポルトガル)が、今回は招集を見送られている。これまでの起用法にクラブでのパフォーマンスを加味すれば、原口が左サイドのファーストチョイスになるはずだ。左右両サイドでプレーできる三好康児(ロイヤル・アントワープFC / ベルギー)は、左サイドでの起用もあるかもしれない。

トップ下は森保体制でチーム最多得点の南野がリードし、久保建英(ビジャレアルCF / スペイン)が追いかける構図か。所属クラブでのアピール度なら、鎌田大地がリードする。アイントラハト・フランクフルト(ドイツ)所属の24歳は、直近のリーグ戦でシーズン初得点を記録しているのだ。

右サイドは堂安律(アルミニア・ビーレフェルト / ドイツ)と久保に加え、伊東純也(KRCヘンク / ベルギー)が争う。レフティーの堂安と久保はカットインからのフィニッシュやスルーパスで、伊東はタテへ抜け出しでのクロスで、チームの攻撃にバリエーションをもたらす。

FWには岡崎慎司(SDウエスカ / スペイン)、大迫勇也(ヴェルダー・ブレーメン / ドイツ)、鈴木武蔵(KベールスホットAC(ベルギー)の3人が招集されたが、岡崎が負傷により合流できなくなってしまった。さらに大迫は、9日のカメルーン戦後にチームを離れることになった。

大迫が在籍するブレーメンは、17日にリーグ第4節を控える。彼がこの試合に出場するためには、ブレーメン保健当局が定めたプロトコルに従わなければならない。「新型コロナウイルス感染のリスク地域への渡航者は、帰国後に5日間の自宅隔離を義務づける」というもので、カメルーン戦後に帰国することで17日に間に合わせるというのがクラブの意向である。

ここまでの起用法から判断すれば、カメルーン戦の1トップは大迫で間違いない。彼がチームを離れるコートジボワール戦では、今夏に海外組のひとりとなった鈴木が起用されるだろう。

ただ、FWが少ない一方で2列目の人材が多いことを考えると、3-4-2-1の布陣が採用されるかもしれない。

3バックを敷くことになっても、吉田、植田、冨安、板倉と最終ラインに不足はない。ダブルボランチは4-2-3-1と同じ柴崎と遠藤で、ウイングバックも左右ともに2人以上が控える。

2シャドーはこのシステムでも激戦区だ。それでも、南野か鎌田を1トップへ上げて堂安と久保の2シャドーにする、といった配置が可能になる。

10月5日から13日までの活動となる今回は、来年3月再開予定のカタールW杯アジア2次予選への準備という位置づけだ。テストマッチでも結果を求められるのは代表の宿命だが、何よりも待ちに待った活動である。

森保監督は「新型コロナウイルスや日本で頻繁に起こっている自然災害などで傷ついている方、困難な生活を送られている方が多いなかで、元気、勇気、根気、最後まで戦い抜くことを表現できればと思っている」と話す。指揮官の言葉どおりにアグレッシブで躍動感に溢れ、一人ひとりの個性がピッチ上に表現されることを期待したい。

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