アディゼロ ボストン 13(ADIZERO BOSTON 13)が2年ぶりにアップデート!これは必ず試してほしいトレーニングモデル!

■アディゼロ ボストン 13(ADIZERO BOSTON 13)が満を持して発売
ついに、2年のときを経てアディゼロ ボストン(ADIZERO BOSTON:以下、ボストン)シリーズが12から13にフルモデルチェンジしました。
1982年にスタートしたこのシリーズは今回の新商品発表も4月のボストンマラソン会場であったように、世界最古のフルマラソンレースであるボストンマラソンにそのネーミングは由来します。
ちなみに、アディダスがボストンマラソンをスポンサーしたのは1989年からで、それ以前よりマラソンというスポーツのその象徴でもある「ボストン」という名前を使ったモデルとしてスタートしていることからも、このシューズのその性格を表していますよね。
今回、レーシング用シューズと同じ低密度で反発弾性の高いミッドソール素材のLIGHTSTRIKE PRO(ライトストライクプロ)が13.8%と大幅に増量したことが大きなトピックスなのですが、全体的にしっかり感、スムーズ感があって、速く走る機能性と長く走る上の快適感がバランス良く両立したモデルになっているという印象です。
では、アディゼロ ボストン 13(ADIZERO BOSTON 13:以下、ボストン 13)はどんなフルモデルチェンジをして、どんな特徴があって、どんなランナーに合うのか?早速解説していきましょう。
■ジョグ用ではない、あくまでレースデイシューズ、それがボストン
デイリートレーナーを全体的に軽量にしたような定番シリーズだった、かつてのボストンは、速く走るという概念の創出、それに伴う構造的な変化から、10代目よりグラスファイバー製の5本指ロッドが挿入された近代的レース兼トレーニングシューズにドラスティックに生まれ変わりました。
その流れは、今回13に続いていて、むしろこのモデル、3代目といった方が適切な表現かもしれません。ややランナーの走力や用途を選ぶADIZERO ADIOS PRO 4(アディゼロ アディオス プロ 4)やADIZERO ADIOS PRO EVO 1(アディゼロ アディオス プロ エヴォ 1)のようなレーシング用シューズとは対照的に、速さを生み出す仕組みは持ちつつも、それをコントロールしやすい構造になっていて、ボストンシリーズは“誰でも履ける“というポジションのレースデイシューズですね。
ということもあって、ジョギングで使うには構造が複雑すぎて、ゆっくりなペースにはシンプルで最適なモデルが他にありますし、こちらボストンはやはりあくまでレースデイシューズ、速く走るニーズを満たすモデルであることは間違いありません。
河口湖で先日行われた新作ボストンの発表イベント「ADIZERO BOSTON 13 TOUR」にゲストとして参加された國學院大学卒業、現在はロジスティード所属の平林清澄選手も、このモデルをジョグで履くことはなくて、ペースが比較的速めの距離走などで履くと言っていましたね。その言葉が象徴的です。
■走り心地は超ソフトというより超スムーズ
河口湖では、メディアの皆さんもこのモデルをしっかり体感するために、やや速めのペースであるキロ5分を切るぐらいのペースと、6分ペースのグループに分かれて10K走りました。ちなみにキロ5分のチームは平林選手も一緒に走るということで、なんとも贅沢な10Kになりましたね。
その平林選手も、今回のモデル、前回までの前足部のグラスファイバー製5本指ロッドを効かせてグングン進む、というより、全体的にスムーズになって使いやすいというコメントがありました。「このシューズかなりいいですよ、ハーフ63分ぐらいなら行けちゃいますよ」って走っているときに言っているのを聞いてしまいましたが、このボストン13、既に彼の信頼が厚いようです。
確かに、ミッドソール素材のLIGHTSTRIKE PROが大幅に増量して、ミッドソールの外側を見ると地面までLIGHTSTRIKE PRO 1層(踵のみLIGHTSTRIKE)になったのですが、走り心地は「超ソフト」より「超スムーズ」の印象ですね。
ミッドソール内側にはLIGHTSTRIKE PROおよびEVA素材ベースのLIGHTSTRIKE、ともにフルレングス入っております。もちろんソフトフィーリングはありますが、それぞれ独立して速く走るギミックが効いているというより、その安定要素がうまくブレンドされて、ライド感がとてもスムーズで使いやすい、コントロールしやすいモデルになっていますね。
■アッパーのフィット感がとても良くなった
そして、その安定要素は、今回変更されたアッパーも一翼を担っていますね。ヒール部、履き口の周り、シュータンなどにパッドが入って肉厚になり、フィット感としっかり感が増したからです。
前作は、レーシーな軽量アッパーを目指したものだっただけにグラスファイバーのしなり具合に踵が負けてややルーズな感覚はありましたが、今回はそんな感覚が全くない、どちらかというとボストン11の雰囲気、踵周り全体に安定感がありますね。
とは言え、シームレスなエンジニアードメッシュであることは前回同様で、縫い目がないことで足当たり、通気性も良く最新シューズらしい仕上がりですね。
■推進力もいい、というか前回よりもいい
別の日に、私の閾値ペース3:30/kmにあげて実走しても、その印象は変わらず、グラスファイバー製のENERGYRODS 2.0とLIGHTSTRIKE PROが共鳴して推進力を生み出す感じは気持ちがいいですね。
前作ボストン 12も履きやすかったのですが、もっと前足部のロッドを使ってガリガリ進むようなモデルでしたが、平林選手の言うようにロッドの感覚がやや薄れてソール全体で進むようなスムーズな印象になりました。
私はボストン 11までの安定要素の雰囲気もありつつ、推進力が高いボストン 12のような感じもある、ボストン 11とボストン 12のブレンドしたようなモデルになったなって感じています。
ボストンは結構ジョグで使用している市民ランナーも少なくないとは思いますが、やはり、これはある程度スピードを出して、それを安定させるテンポアップモデル、ある人にとってはトレーニング用ですが、ある人にはレースデイシューズになるようなモデルですね。
■速く走りたいランナーを応援するシューズ
価格も18,700円(税込)と据え置きはうれしいところ。やはり、他社のライバルモデルあたりをはっきり意識した価格設定になっています。
それも象徴していますが、アディダスの商品の中で、もちろん、いちばん速く走れるシューズではない、だけど、ゆっくり走るシューズでもない、ランナーにとってちょうどその中間のペースを快適にする機能性があるシューズであるのがボストン13のポジションです。
また、アディダスにはADIZERO EVO SL(アディゼロ エヴォ SL)やADIZERO SL 2(アディゼロ SL 2)といった似たような性格の軽量なテンポアップシューズがありますが、ボストン13にはグラスファイバー製のロッドが搭載されていることが大きなポイント。その蹴り出し助力は、やはり、レースデイのような速く走るランナーを応援するシューズであることを象徴していますね。
このシューズは平林選手のようなアスリートであれば、それは距離走用になるでしょうし、サブ4を目指すランナーやサブ4(フルマラソン4時間切り)をすでに達成したランナーがさらに上を目指すレース用になるでしょうし、もちろん、5Kや10Kあたりのショートディスタンスレースでの晴れの日のシューズになるランナーもいるでしょうね。
ちょっと早いですが、秋のレースに向けて、用途が合いそうなランナーは是非一度は足入れすべきモデルですよ。
これは、マストトライの1足です。オススメです。
【アディダス ランニングシューズ特集ページ】
<著者プロフィール>
ランニングシューズフィッティングアドバイザー
藤原岳久(FS☆RUNNING(旧 藤原商会)代表)
日本フットウエア技術協会理事
JAFTスポーツシューフィッターBasic/Advance/Master講座講師
足と靴の健康協議会シューフィッター保持
・ハーフ1時間9分52秒(1993)
・フルマラソン2時間34分28秒(2018年別府大分毎日マラソン)
・富士登山競走5合目の部 準優勝(2005)