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football2024.02.29

開幕したJリーグ、前代未聞の興奮と期待!予測不能の戦い!

わかるはずがないものを、わかったようなフリをして書く。それが、わたしの考える野球なりサッカーなりのシーズン予想である。

もちろん、中には凡人には見えないものを捉える目を持ち、わかるはずがないように思えるものを実は限りなく正解に近い形で理解している方もいないではない。だが、残念ながらわたしは違うし、今年もまた、わかったような態で新シーズンのJリーグを展望してみる。

……いつにもまして、わからない…。


20年代のJリーグを牽引してきたのは、間違いなく神奈川の2チームだった。川崎フロンターレと横浜F・マリノス。特に、徹底的に主導権を握ることにこだわり、攻めて攻めて攻め倒すスタイルを、哲学を押し出した川崎フロンターレのやり方は、Jリーグの軸になっていたと言ってもいい。彼らが自分たちのスタイルを貫いた一方で、多くのクラブは、川崎フロンターレを倒すやり方を懸命に模索したからである。

だが、サポーターならずとも魅力を感じずにはいられなかった川崎フロンターレのサッカーは、ある種のジレンマを抱え込むことにもなった。つまり、魅力的なサッカーを展開する選手たちは、海外のスカウトの目にも魅力的に映った。結果として、川崎フロンターレからは毎年のように主力が引き抜かれていった。

現場の努力と懸命の補強で何とかチーム力の下落を食い止めようとしてきた川崎フロンターレだったが、空いてしまった穴を埋めるのは簡単なことではない。負けることはあっても内容で劣勢に回ることはほぼなかったチームには、昨年あたりから勝ちはしても実は押し込まれていた、といった試合が徐々に増えていった。

その傾向は、おそらく今年も変わらない。ACLやスーパーカップを見る限り、その傾向にはむしろ拍車がかかりそうな気さえする。つまり、優勝候補ではあるものの、かつてのように他を圧倒するような存在ではない。

日本に限らず、ほとんどのリーグ戦の場合、まず優勝候補にあげられるのは前年度の優勝チームということになる。となれば、本来はヴィッセル神戸の名前をあげなければならないのだろうが、正直、川崎フロンターレに敗れたスーパーカップの内容が良くなかった。


ヴィッセル神戸にとって、最大のストロング・ポイントが大迫の決定力にあることは間違いない。前線で収め、かつ決めてくれる大迫が今年も健在である以上、そこを使っていこうと考えるのは当然のこと。ただ、その使い方というか、大迫にボールを配球していくスタイルが、いささか単調すぎたようにわたしには感じられた。

自分たちがリードしている展開であれば、このやり方は効果もある。だが、リードを許し、相手が重心を後ろに置く展開となると、大迫めがけてロングボールを放り込むだけのサッカーではいかにも苦しい。ケガなどで戦列を離れている選手が戻ってくればまた変わってくるのかもしれないが、下手をするとシーズン途中での監督交代、なんて事態が起こりうるかもしれない。正直、これだけ芳しくない内容で開幕を迎える前年度王者は、ちょっと見た記憶がない。

大本命、とまではいかないものの、わたしが一番印をつけたいのは横浜F・マリノスである。18年にポステコグルーを迎えたことから始まったオーストラリア人指導者の系譜は、新監督のキューウェルで7年目に突入した。もちろん、前任者のマスカットと異なる部分もあるのだろうが、選手の側からするとある一定の継続性は感じられるだろうし、新監督就任に伴うアレルギーが起きる可能性は低い。実際、ACLでも日本勢で唯一ベスト8に勝ち上がっており、相当な注目を集めるであろう東京ヴェルディとの開幕戦の結果、内容いかんではすんなりと首位を走る可能性もある。

浦和レッドダイヤモンズも面白い。ここ数年、開幕前に優勝候補にあげる人も少なくなってしまった印象はあるものの、選手個々のレベルは依然としてJリーグのトップレベルにある。キャリアのほとんどを自国で過ごしてきたノルウェー人のヘグモ新監督の手腕に未知数の部分はあるものの、要所要所に強かったレッズの記憶を持つ選手が配置されているのは大きい。4位に終わった昨シーズンだったが、失点はリーグ最少だった。計算できる守備力をベースとして保持したまま、引退した昨シーズンのチーム得点王カンテの穴をいかにして埋めるか。簡単なことではないが、しかし、他チームが抱える課題に比べてとりわけ大きいとも思えない。

優勝となると厳しいだろうが、ぜひとも頑張ってほしいチームもある。

まず真っ先に思い浮かぶのはサンフレッチェ広島。浮かんでは消え、消えては浮かぶを繰り返してきた待望の新スタジアムがついに完成し、新シーズンを素晴らしいサッカー専用競技場で迎えることになった。会場の臨場感はもちろんだが、アクセスの面でも大幅に改善され、チームの成績次第ではリーグと街に旋風を巻き起こすことも考えられる。ガンバ大阪、京都サンガF.C.と新しい専用スタジアムを手にしたチームの低迷が目立つだけに、サンフレッチェ広島にはぜひとも、専用スタジアムを持つことによってチームが、街がどれだけ変わるかを証明してもらいたい、と思っている。

もう一つ気になるのが、チームとして初のJ1昇格を果たしたFC町田ゼルビア。ご存じの通り、青森山田を全国屈指の強豪に育て上げた黒田剛監督のもと、昨年はJ2を圧倒的な強さで駆け抜けた。昨年、黒田監督には2回ほどインタビューをさせていただく機会があったが、負ければ終わりの高校サッカー界で安定した結果を残してきただけあって、勝つこと、負けないことの方法論については、わたしの知る限りずば抜けていた。

黒田監督によれば、新シーズンの目標は「東京で一番になること」だそうで、まずは東京ヴェルディ、FC東京を成績で上回ることによって、東京での地盤を拡張していきたい考えのようだった。Jリーグが発足してもう30年以上が過ぎたが、実は、東京のチームがリーグを制覇したことは一度もない(黄金時代のヴェルディは川崎をホームタウンとしていた)。首都のクラブが優勝したことのないリーグ戦は世界的に見ても極めて珍しく、また、東京は大規模なサッカー(フットボール)専用競技場を持たない、先進国唯一の首都でもある。

FC町田ゼルビアに限らず、東京に拠点を構えるチームが結果を残し、専用競技場を求める声が高まっていけば、Jリーグ、日本のサッカーはまた新たな次元に突入することができる。そういった意味でも、町田には期待したいし、サンフレッチェ広島、ガンバ大阪、京都サンガF.C.、J2で素晴らしい新スタジアムを持つことになるV・ファーレン長崎あたりには、ファンが会場に足を運びたくなるような試合を見せてもらいたい。

いずれにせよ、例年になく先が読めない、楽しみなリーグの開幕である。

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