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football2024.07.12

久保建英が超一流の選手にたどり着くために必要なタイトルに向けて!

歴史に名を残すような名選手は、ことごとくタイトルを獲得してきている。W杯ならば文句なし、チャンピオンズ・カップ(リーグ)、欧州選手権でもOK。生まれた国が弱くて代表チームとしてのタイトルには無縁でも、リーグ戦の優勝を勝ち取っていれば大丈夫。つまり、ペレやベンケンバウアー、マラドーナやメッシはW杯で、クライフやプラティニ、クリロナあたりはヨーロッパのタイトルで条件クリア。ジョージ・ベストやライアン・ギッグスは代表チームが弱かった分、マンチェスター・ユナイテッドで無双した。


だが、久保には未だ、プロとして優勝の経験がない。個人としてのタイトルもない。

そもそも、彼には世界の歴史に名を残すような才能はない、という前提に立つのであれば、レアル・ソシエダでファンやメディアの信頼を獲得した久保にダメだしをするのは理不尽極まりない、ということになる。もう十分。あとはこのままやってください、という感じ。

ただし、いやいや、久保にはもっと巨大な可能性があるはず、と信じている人間の一人としては、少しばかり焦れったさを感じてしまう。というのも、このままレアル・ソシエダでのプレーを続ける限り、世界のファンが久保建英の名前をしっかりと記憶に刻み込む可能性は、ほとんどないからである。

来季以降の“ラ・レアル”が、今年のブンデスリーガにおけるレバークーゼンのように、永遠に揺るがないように思われたジャイアント・チームの牙城を崩しでもしない限り、いずれはサンセバスチャンのファンからも忘れられる。阪神でプレーした多くの外国人選手のうち、自分が覚えているのは誰で、なぜなのかを考えると、そういう結論に達せざるをえない。

もちろん、ビジネスとしての側面が巨大化しつつある現代サッカーにおいて、選手が自分の望むクラブでプレーするのは簡単なことではない。だが、サッカーの世界には、優勝を狙えるクラブでプレーし、優勝を経験しなければ見えてこない境地のようなものが、おそらくはある。トッテナムのモドリッチと、レアル・マドリードのモドリッチは、知名度にしてもプレーのレベルにしても、クロアチア代表での大黒柱ぶりにしても、ほとんど別人である。

ちなみに、モドリッチがトッテナムからマドリードへ移籍したのは、彼が27歳のシーズンだった。まだ23歳の久保が焦る必要はないと思わないこともないのだが、モドリッチの場合は、クロアチア・リーグの超名門ディナモ・ザグレブでプレーし、リーグ3連覇も経験している。Jリーグの優勝を経験しないままスペインに渡った久保とは、明らかに経験値において違いがある。


何より気になるのは、久保のキャリアにおいて、優勝を宿命づけられたチームでプレーした経験が一度もない、ということである。FC東京も横浜F・マリノスも、Jリーグ屈指の強豪ではあるものの、優勝を逃す=失敗と捉えられるようなチームではない。マジョルカ、ビジャレアル、ヘタフェはもちろんのこと、かつてはリーガ屈指の強豪だったラ・レアルにしても、いまや本気でタイトルを望んでいるファンがどれだけいるか、という話である。

ただ、レアル・ソシエダは悪いチームではない。というか、ステップアップを果たすうえでは、最上級の部類に入るといっていい。

このクラブからは、いまなおフランス代表で活躍するグリーズマンが巣立った。レバークーゼンをクラブ史上初のブンデスリーガ優勝に導き、急速に“ポスト・グァルディオラ”としての評価を高めつつあるシャビ・アロンソもそうだった。ラ・レアルでの活躍は、他のクラブ以上にビッグクラブへとつながっている。ヨハン・クライフに憧れたかつてのシャビ・アロンソと同じ背番号を背負う久保が、注目されないはずはない。

というわけで、ここから先、久保の命運を決するのは、マネージメントする人間の力量と判断にかかるところが大きい気がする。先にも書いた通り、優勝を経験せずして歴史の名を残したサッカー選手はほぼ、いない。優勝を狙えそうな、それでいて出番もある程度確保できて、かつ、サッカーの方向性が適していると思われるチームを、どれだけピックアップし、交渉に持ち込めるか。

もちろん、交渉を有利に持ち込めるかどうかは、久保が無双できるかどうかにかかっている。

移籍するまでもなく、40年近くタイトルから遠ざかっているラ・レアルに優勝をもたらすのもいい。レアル・マドリード、バルセロナの2強と戦うときには無類の強さを発揮する男になるのもいい。とにかく、どこかの段階でいま以上の何かを残しておかないと、大化けへの道は開けない。

おそらくはこれまで、久保のサッカー人生における最大の目標は自分のスキルを、レベルをあげること、だったはずだ。それはそれで、まったく間違いではない。だが、より上のステージに行くために必要なのは、チームが勝つこと、チームを勝たせること、である。

そのために、自分は何をすべきか。そう逆算して考えることこそが、実は飛躍の秘訣なのではないかと最近思うようになった。

やっぱり、超一流になるには2位じゃダメなんです。

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