マラソンを控えたランナーたちへ――神野大地が語る「最高の走り」のための準備とは?

おきなわマラソンの開催が間近に迫る中、ランナーたちは万全の準備を整えているだろうか。そんなランナーをサポートするため、スポーツデポ具志川店ではランニングアンバサダー・神野大地選手を招いた特別イベントが2月15日に開催された。
プロランナーとしても活躍する神野選手が、大会当日に役立つストレッチやレース前の過ごし方、さらにおすすめのアイテムについて解説。レース本番に向けた最終調整の場として、多くのランナーが熱心に耳を傾けた。
■広場までのウォーミングアップランで体をほぐす
イベント当日、スポーツデポ具志川店に集まったランナーたちは、神野選手とともに広場まで軽いランニングを実施。
ジョグを通じて体を温めながら、適切な準備運動の重要性を学ぶ時間が始まった。
「レース当日にベストな走りをするためには、ウォーミングアップが欠かせません」
そう語る神野選手は、ストレッチの目的を説明しながら、ランニング前後でのアプローチの違いを強調した。
■「ウォーミングアップとクールダウン」目的を間違えないことが重要
「レース当日にベストな走りをするためには、ウォーミングアップが欠かせません」
そう語る神野選手は、ストレッチの目的を説明しながら、ランニング前後でのアプローチの違い を強調した。
しかし、実際には誤ったストレッチ方法を取り入れるランナーも多いという。
「走る前に静的ストレッチ(じっくり筋肉を伸ばすストレッチ)をしている人を見かけますが、それは逆効果。レース前に必要なのは、”動くための準備”をすることです」と神野選手。
■レース前は「動的ストレッチ」で体を起こす
動的ストレッチは、筋肉を温め、関節の可動域を広げ、心拍数を上げることで、走り出しをスムーズにするための準備運動だ。
動的ストレッチの主な効果
・可動域を広げ、スムーズな動きを可能にする
・心拍数を上げ、体をレースモードに切り替える
・筋肉を温め、怪我の予防につながる
特に、肩甲骨を動かすストレッチや、腸腰筋(太ももを引き上げる筋肉)を刺激する動きが効果的。
「ランニングに近い動作を繰り返すことがポイントです」と神野選手は強調する。
■レース後は「静的ストレッチ」で疲労回復
一方、レース後に必要なのは「静的ストレッチ」。これは、疲労を抜けやすくするために、ゆっくりと筋肉を伸ばし、その状態を維持すること を目的としたストレッチだ。
「動的ストレッチと静的ストレッチを逆にしないことが重要です」と神野選手。
静的ストレッチの主な効果
・筋肉の疲労回復を促す
・可動域を維持し、次回の練習やレースに備える
・太ももやハムストリングス、腕をじっくり伸ばし、柔軟性を保つ
レース後は、すぐに座り込まず、まずは軽いジョグなどで体を徐々に落ち着かせてから静的ストレッチを行うのが理想的だ。
■実践!神野選手直伝のウォーミングアップ
ここからは、神野選手が実際に指導したおすすめの動的ストレッチを紹介する。
肘回し(肩甲骨の可動域を広げる)
「肘は顔に沿って真上に上げることを意識してほしい」と神野選手。
1.両手の指先を肩に添えた状態で、肘を前方から上へ持ち上げる
2.円を描くように後方へ回す
3.頂点に達したら、肩甲骨を意識しながら肘を後ろへ引き、そのままゆっくり下ろす
4.1周を3秒ほどのペースで、前回し・後ろ回しそれぞれ20回ずつ行う
■脚の引き上げ(腸腰筋を活性化)
1.脚を肩幅に開いて立ち、片脚を一歩後ろに下げる。
2.脚と上体が一直線になるように前傾姿勢をとる。
3.腸腰筋を意識しながら、上体を起こすと同時に後ろの脚の膝を引き上げる。
4.この動作を左右20回ずつ繰り返すことで、ランニング時のスムーズな脚運びをサポートする。
「ウォーミングアップは”ランニングに近い動作を繰り返す”ことがポイント。これを行うだけで、走り出しの感覚が大きく変わるはずです」と神野選手。
神野選手の指導のもと、参加者たちは真剣な表情でストレッチを実践し、レース当日に向けた最終調整を行った。「しっかりと体を準備すれば、本番でのパフォーマンスは大きく変わります。ぜひ今日学んだことを活かして、明日は最高の走りを!」
ストレッチ講義の後は、スポーツデポ具志川店に戻り、神野選手とのトークセッションが開催。ランナーたちは直接質問を投げかけ、レースに向けた貴重なアドバイスを受ける機会となった。
神野大地が語る「最高の走り」への準備──食事・メンタル・レース戦略まで徹底解説!
「前日は何を食べるべき?」「当日の朝の過ごし方は?」「緊張をどう乗り越える?」市民ランナーにとって気になる疑問に、神野選手が自身の経験をもとにアドバイスした。
最初に挙がった質問は、レースを翌日に控えたランナーにとって最も気になる「前日の食事と過ごし方」についてだった。
この日、神野選手が語ったのは、「エネルギー補給を最優先に考えること」の重要性だった。
「基本的には炭水化物をしっかり摂ることが大切です」と神野選手。自身の前日メニューは、「生姜焼き定食+ご飯大盛り+うどん」という、エネルギー補給を意識した組み合わせ。
ただし、ランナーによって消化のしやすさや好みは異なるため、自分に合ったものを選ぶのがベストだという。
■避けるべき食べ物
・油っこいもの(消化に時間がかかる)
・生もの(体調を崩すリスクがある)
・生野菜(食物繊維が多く、エネルギーの吸収を妨げる)
「前日は栄養よりもエネルギー補給を意識してください。もし白米が苦手なら、うどんやパスタでもOK。とにかくエネルギーを蓄えることが大切です」と神野選手。
■レース当日の朝食と準備
レース当日の朝食について、神野選手は「おにぎりと味噌汁が基本」と話す。
「でも、おにぎりだけだと物足りないという人は、大福やカステラ、どら焼きなどの甘いものをプラスするのもおすすめです」と紹介。
■神野選手の朝食メニュー
・おにぎり2個+大福 or カステラ
・味噌汁(具は少なめでOK)
また、味噌汁には塩分が含まれているため、脱水予防にも効果的だという。
■食事のタイミング
・朝食はレースの3時間半~3時間前までに済ませる
・レース1時間前~1時間半前にエネルギーゼリーやバナナで軽く補給
「エリートランナーは5時間前に起きますが、市民ランナーなら4時間前が理想」神野選手はそう話し、レース前の準備についてもアドバイスを送った。
・起床後に軽く散歩やジョギングをして体を起こす(無理にしなくてもOK)
・3時間前までに朝食を済ませる
・時間に余裕を持って会場に向かう
「会場に着いてからバタバタしないよう、しっかりスケジュールを立てておきましょう」と神野選手は強調した。
■水分補給と前日のお酒について
「お酒は控えたほうがいいですね」と神野選手。理由は、脱水になりやすい。睡眠の質が低下する。更に「お酒を飲むと、一時的には眠くなりますが、睡眠の質は下がります。レース前はなるべく避けましょう」と忠告。
■水分補給のポイント
・スポーツドリンクは10分ごとに2~3口を目安に
・スタートまでに500ml~1Lを目安に水分補給
・夜中に目が覚めたら、水をひと口飲む
「レース前の尿の色が濃い(黄色い)と脱水状態のサイン、尿が透明になるまでしっかり水分を摂りましょう!」と呼びかけた。
■メンタル面と緊張への対処法
「レース直前の緊張をどう克服すればいいか?
この質問に対し、神野選手は「緊張しないようにするのではなく、受け入れることが大事」と答えた。「これだけ練習してきたんだから、緊張するのは当然。むしろ『そりゃそうだよな』と受け入れてあげることが大事です」
■レース当日の過ごし方
・4~5時間前に起床
・試合の準備をする
・朝食をとる
・会場に向かう
・受付をする
「やるべきことをスマホのメモに書き出し、それに集中すれば、気づいたらスタートしているはずです、スタートしてしまえば、意外と緊張しないもの」
緊張でエネルギーを無駄に消耗しないようにしよう、と神野選手はアドバイスを送った。
■レース戦略:ネガティブスプリットの重要性
最後に、神野選手が推奨する『ネガティブスプリット』(前半を抑え、後半にペースを上げる走り方)について。
「市民ランナーの皆さんは、前半で ‘貯金’を作りたがります。でも、それは間違いです」
■サブ4を目指す場合の例
・前半1時間57分通過(速すぎる)→後半2時間3分→結果4時間超え(戦略ミス!)
・前半2時間通過(適正ペース)→後半2時間切り→ 4時間達成!
「前半でオーバーペースになると、30km以降で一気に失速します。むしろ、前半を抑えることで、後半でしっかりペースを維持できるんです」
「当日、アドレナリンが出て『今日の俺はいける!』と思っても、必ずツケが回ってきます」
神野選手は笑いながらも、しっかりと念を押した。
「ネガティブスプリットを意識し、冷静なレース運びで自己ベストを目指してください!」
■最後に:神野選手からのメッセージ
「レースに向けて、皆さんたくさんの時間を費やしてきたと思います。だからこそ、戦略的に走り、目標を達成してほしいです。‘抜かれても気にしない’前半で抜かれた人のほとんどは、後半で抜き返せます。ぜひ、最後まで諦めずに走りきってください!」
神野選手の言葉に、会場は大きな拍手で包まれた。
■「最高のレースへ――確かな準備とともに」
トークショー終了後、参加者たちは神野選手のアドバイスを振り返りながら、それぞれのレースへの思いを新たにしていた。
積み重ねてきた練習の成果を発揮するために、明日は冷静な判断と確かな走りが求められる。沖縄の地で迎える本番。ランナーたちは万全の準備を整え、スタートラインに立つ。