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football2022.01.12

三浦知良、プロ37年目の新天地“鈴鹿ポイントゲッターズ”でゴールをしてカズダンスを披露できるか。

去就が注目されていた“キング・カズ”こと三浦知良が、新天地を明らかにした。自身のアイコンでもある背番号11にちなんで、1月11日の11時11分、J2リーグの横浜FCからJFL(日本フットボールリーグ)の鈴鹿ポイントゲッターズへ期限付き移籍することが発表された。

2005年7月より在籍する横浜FCからは、22シーズンも契約更新のオファーを受けていた。自身のキャリアでもっとも在籍年数の長いクラブに、カズ自身も愛着を感じている。

その一方で、ピッチへの渇望があった。

2021年シーズンはケガなどによる長期の離脱がなかったが、J1リーグ戦の出場はわずか1試合で、しかも1分のみに終わった。チームが6試合を戦ったリーグカップでも、3試合に途中出場しただけだった。


54歳になったいまも、カズは「もっとうまくなりたい」と口にする。サッカーへの情熱は、まったく色あせていない。むしろ、年を重ねるごとに熱量が高まっているようにさえ感じられる。実際に21年シーズンの開幕前には、「サッカーへの情熱は増している感じですね」と笑顔で話していた。

真っすぐに純粋にサッカーと向き合う姿勢は、チームメイトに大きな影響を与える。誰にとっても未踏の道をたったひとりで切り開いていくカズは、プロフェッショナルの模範と言っていい。彼がいるだけで、チーム全体に太い芯が通るのだ。

ただ、カズ自身はピッチの上で自分の価値を示したい、と考えている。だからこそ、新たな環境を求める意思を表したのだった。

出場機会を求めるカズには、所属元の横浜FCが契約更新を打診したのをはじめとして、J2のFC琉球、国内4部に相当するJFLの鈴鹿ポイントゲッターズ、FC大阪、高知ユナイテッドFC、関西1部リーグのおこしやす京都、関東1部リーグに昇格したばかりの南葛SC、それにアルビレックス新潟シンガポールが獲得に名乗り出た。争奪戦が繰り広げられたのだ。

カズ自身は昨年末から自主トレをスタートさせ、並行して各クラブとの面談を進めていった。そのなかで大切にしたのは、「一番自分が情熱を持ってプレーできるのはどこか」だった。

カズの言う情熱を紐解けば、FWとしての仕事を果たすことになる。近年は中盤で起用されることもあったが、カズのストロングポイントはアタッキングサードでの仕掛けであり、ずば抜けた決定力だ。シュートの感覚と精度に衰えはない。重圧を跳ねのけるメンタリティは、数多くのビッグゲームで証明してきた。「FWですから得点やアシストに絡むこと。それによってチームに勝利をもたらせるようにしたい」との思いは、カズの胸のなかでずっと育まれてきたものである。

同時に、2月で55歳になる自分が、FWとして活躍できる環境を冷静に見定める必要もあっただろう。カズ自身は「シーズンで上位に入ればJ3に上がれるとか、JFLに上がれるとか、優勝できるとか、近くにチームの目標があるのがいいですね。自分がプレーして、クラブの目標に関われるところがいいと思っています。そこに貢献できることが重要ですね」と、移籍先を選ぶ際の基準を説明していた。

そのなかで、兄の「ヤス」こと三浦泰年さんが監督兼ゼネラルマネージャー務める鈴鹿ポイントゲッターズが浮上したのだった。かねてからカズは、「自分を必要としてくれるクラブなら、カテゴリーは問わないです」と話している。

昨シーズンのJFLで4位に食い込んだ鈴鹿は、J3昇格を現実的なターゲットにしている。クラブの目標と自身のモチベーションはしっかりと重なる。21年途中からチームを指揮する実兄が具体的な起用法を持っていることも、決断を後押ししたに違いない。


横浜FCのオフィシャルウェブサイト上で、カズは「このたび、JFLの鈴鹿ポイントゲッターズに期限付き移籍することを決めました。2005年から実に16年間という長い時間、横浜FCでプレーしてきました。みなさんとともに戦い、これまで積み上げてきた数々の思い出や誇り、そして感謝の気持ちを胸に、新しいチャレンジに踏み出します。横浜FC、みなさんの幸運を願っています。本当にありがとうございました」とのメッセージを届けた。

同時に、鈴鹿のオフィシャルウェブサイトにもメッセージを寄せている。

「鈴鹿ポイントゲッターズに関わるすべてのみなさん、こんにちは。三浦知良です。このたび横浜FCより加入することになりました。ここでプレーする機会を与えていただけたことに感謝し、ピッチの上でクラブの勝利に貢献できるよう努力していきます」

注目すべきは「ピッチの上でクラブの勝利に貢献」とのフレーズだろう。18年以降の4シーズンは、リーグ戦の出場試合数が9、3、4、1とひとケタに止まっている。戦いの舞台はJ2からふたつ下がるが、鈴鹿でしっかりとピッチに立ち、得点やアシストといった数字を残すことで、カズは自らの存在価値を証明していくに違いない。

そもそも、順風満帆なキャリアを過ごしてきた選手ではない。

高校を中退して留学したブラジルでは、絶えず向かい風にさらされながらプロへステップアップした。1990年の帰国後は、ウイングからストライカーへ転身した。日本代表では数多くの印象的なゴールを記録しながら、ワールドカップ出場は叶わなかった。クラブレベルでも厳しい評価を下されたことがある。

そうした苦難に直面するたびに、カズは力強い反発力を見せてきた。逞しく立ち上がっていった。彼にとっては挑戦こそがエネルギーなのだろう。

2022年のJFLは、3月13日に開幕する。キング・カズのプロ37年目のシーズンは、これまでとは違う種類の注目を集めそうだ。

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