ラグビー日本代表 新ジャージ発表会レポート。世界で戦うから、世界で勝つためのジャージへ。

世界で戦うから、世界で勝つためのジャージへ──。
9月20日に開幕するラグビーWCで日本代表が着用する新ジャージのレプリカジャージが、7月10日から発売されている。それに先立って、3日に発表記者会見が行われた。
最初に登壇した(公財)日本ラグビーフットボール協会の清宮克幸副会長は、興奮気味に切り出した。
「私も長くラグビーに関わってきましたが、すごいですよ! こんなに格好いいジャージは見たことがありません」
清宮副会長の言葉どおり、新ジャージには斬新なアイディアが盛り込まれ、最新のテクノロジーが反映されている。
左:ホームジャージ 右:オルタネイトジャージ(セカンドジャージ)
デザインのコンセプトは『兜:KABUTO』である。武士道の精神で世界と戦う、との意味合いが込められた。
ファーストジャージは伝統の「日の丸」カラーを基調とし、兜の前立てをモチーフとした鋭角ラインのストライプが採用されている。「V」の字が生み出す錯視効果で身体を大きく見せ、相手を威圧することも期待する。
背面には「V」ではなく富士山をモチーフに山型を描き、後方から迫る相手に速さを感じさせる。日本代表らしいスピード感、躍動感、力強さが、トータルで表現された。赤を縁取るように使用されている「サンライズゴールド」は、富士山のご来光をイメージした。
左胸で輝く桜のエンブレムは3D化された。選手たちが胸に宿す代表選手としての誇りを強調するもので、キャプテンのリーチ マイケルは「ボールを持ったときに滑らない」と、その実用的な効果も口にする。
リーチらの代表選手たちは、ジャージを制作した(株)カンタベリーオブニュージーランドジャパンの担当者と、試作品の段階から意見交換を重ねてきた。彼らの声は実感に基づいたものなのだ。
ジャージの生地に目を凝らすと、和柄の地紋が描かれていることに気づく。「力、ならわし、縁起」を意味する吉祥文様が勝利を祈願する。
日本の伝統にインスピレーションを受けた地紋には、堀江翔太が共感の声をあげた。33歳の経験豊富なフッカーは、3大会連続のWC出場が確実視されている。
「武士道の精神が込められていることも、和柄のデザインも、僕はとてもいいと思います。日本の伝統は大切にしていきたいですし、日本の方だけでなく海外の人にも好まれそうですね」
機能性は向上が目覚ましい。耐久性、軽量性、運動性、快適性(速乾性やベタつきの軽減)のすべてがアップした。袖、脇の下、肩の三か所に伸縮性の異なる素材を使用し、ラグビーならではの動きを効果的にサポートする。より強く、より速く、より動きやすいジャージへ進化したのだ。
素材の進化には、福岡堅樹が声を弾ませる。ウイングの彼はトライゲッターであり、相手のタックルをいかに交わすのかがプレーの生命線となる。
「スピードを生かす自分は、つかまりにくさを大事にしています。瞬間の勝負のところで相手につかまりにくいこのジャージは、軽くて肩回りや腕周りも動きの邪魔になりません。いい武器になってくれます。早く試合がしたいですね」
ラグビーはポジションによってプレーが異なり、選手の体格や動きかたも変わる。前回WCのジャージではフォワード用とバックス用で異なるシルエット(形状)のものが提供された。
今回はフォワード用をフロントロウ用とセカンドロウ・バックロウ用の2つに分け、バックス用と合わせて3種類のジャージが開発された。
最前列で身体を張り、スクラムを組み合うフロントロウ用は、強いコンタクトに負けない耐久性とホールド感を共存させた。胸部が発達した体形に負担をかけないシルエットも特徴である。
フッカーの堀江は「胸が立体的でキツさを感じることがなく、それでいて適度なルーズ感もあって身体にカチッとはまります」と評価する。
セカンドロウ・バックロウ用ジャージは、オールラウンドのポジション特性に合わせて耐久性と軽量性にホールド感をミックスし、ベストバランスが追求された。フランカーやナンバー8のポジションでプレーするリーチは、「とても快適です。身体が締まっている感じが気に入っていて、肩のすべり止めがスクラムで効果を発揮してくれそう。楽しみです」と、笑みをこぼす。
バックス用はトライにつなげるポジションが意識された。スピード豊かなランニングつながる軽量性と伸縮性、相手選手につかまれにくいシルエットが取り入れられている。
ジャージとともにショーツとストッキングも一新された。ショーツもフロントロウ用、セカンドロウ用・バックロウ用、バックス用の3種類が開発された。ストッキングには2本指の足袋型が採用された。グリップ力を高めるためで、日本代表では初めてである。選手たちは自分の好みに合わせて、指の分かれてない通常のストッキングを選ぶこともできる。
素材やシルエットなどでイノベーションを追求し、着やすさと戦いやすさを進化させたジャージは、歴代史上最強レベルと言って差し支えないだろう。ブルーと紺を基調としたオルタネイトジャージ(セカンドジャージ)にも、同様の機能がすべて搭載されている。
センターを中心にプレーするニュージーランド出身のラファエレ ティモシーは、「日本の文化の和柄が入っているのが素晴らしいです」と胸を躍らせ、南アフリカ出身のヴィンピー・ファンデルヴァルトも「デザインも着心地もとてもいいです。このジャージを着て試合をするのが楽しみでたまらない」とWC開幕を心待ちにする。
堀江は責任感を新たにする。彼の言葉は日本代表入りを目ざす全選手に共通するものだろう。
「このユニフォームの価値を上げられるかどうかは、僕たち選手にかかっている。(日本代表合宿で)厳しいトレーニングをしているので、WCで結果を残して価値をあげたい」
新ジャージは7月27日に行なわれる『リポビタンDチャレンジカップ パシフィックネーションズ 2019 日本ラウンド』第1戦のフィジー代表戦で初めて着用される。最強のギアを手に入れた日本代表のパフォーマンスが楽しみだ。