『WBSC プレミア12』スーパーラウンドへ突入!野球日本代表 侍ジャパンは東京五輪への試金石として初制覇を目指す!
ラグビーの次は野球だ。
4年に一度の国際大会が、日本を舞台に開催されている。世界各国の野球代表が集う国際大会『WBSC プレミア12』のスーパーラウンドが、11月11日から行われているのだ。
『プレミア12』という大会名が示すとおり、世界野球ランキングのトップ12か国(※1)が集う舞台である。台湾、韓国、メキシコを舞台とオープニングラウンドを勝ち抜いた6チーム──日本、アメリカ、韓国、台湾、メキシコ、オーストラリアが、17日のファイナルを目ざして激しいバトルを繰り広げている。
『プレミア12』は今回が第2回目の大会だ。歴史は浅い。メジャーリーガーは出場していない。それでも、参加チームは今大会に並々ならぬ熱を注ぐ。
国の威信とプライドを賭けた戦いであり、来夏の祭典の予選を兼ねているからである。アジア・オセアニア最上位国(日本を除く)と北中南米最上位国は、東京五輪の野球競技の出場権を獲得できるのだ(※2)。
6チームの監督が一堂に会した10日の記者会見で、アメリカのスコット・ブローシャス監督は「疑いの余地なくモチベーションは高い。五輪の出場枠を取ることが我々の目標だ」と語っている。4年前の第1回大会を制した韓国の金卿文(キム・ギョンムン)監督も、「目標は当然優勝だ」と話す。
侍ジャパンこと日本代表の稲葉篤紀監督は、引き締まった表情で会見に臨んだ。「台湾でのオープニングラウンドの3試合にすべて勝てたことは、チームを大きく前へ進めました。選手たちは少しずつ自信を持ってきている。チームはいい状態に仕上がっている」と、言葉に力を込める。
対戦相手の指揮官も、侍ジャパンを警戒している。ケガ人を除けば国内最強布陣となる日本の編成について、オーストラリアのデービッド・ニルソン監督は「スキルで熟練した選手が多い」と分析する。アメリカのブローシャス監督も「強力なチームだと理解している」と評した。
オープニングラウンドでは、4番の鈴木誠也(広島)が存在感を見せつけた。初の個人タイトルとなるセントラル・リーグ首位打者と最高出塁率を獲得したシーズンの好調を持ち込み、3試合で11打数5安打、2本塁打、9打点と文句なしの数字を残した。侍ジャパンの4番として大きな重圧を背負っているはずだが、「チームが結果を残すために」との思いを胸に刻み、周囲の期待をモチベーションに変えている。
鈴木とクリーンナップを組む近藤健介(日本ハム)は、3番でありながら「つなぎ」を意識している。ベネズエラとの初戦では定評のある選球眼を生かし、5打席で4四球を選んだ。そのひとつは、押し出しの決勝点である。
バッティングセンスにも疑いの余地はない。19年シーズンは2シーズン連続の打率3割を記録した。近藤の存在が相手投手への心理的プレッシャーとなり、チャンスが拡がっていくパターンは、侍ジャパンでもチームの強みとなっている。
攻守両面での活躍が光るのは、セカンドの菊池涼介(広島)だ。ポスティングシステムでのメジャーリーグ挑戦を表明したこの29歳は、プロ入り2年目の13年から7年連続でゴールデングラブ賞を射止めている。抜群のフィールディングで堅守を支え、チームバッティングで勝利を手繰り寄せるきっかけを生み出すのだ。
その菊池と二遊間を組むのが坂本勇人だ。キャプテンとして巨人を5年ぶりのリーグ優勝へ導いた30歳は、侍ジャパンでも重要な役割を担っている。プレミア12は2大会連続出場で、WBCの出場経験もある。国際大会特有の緊張感には慣れている。チームを精神的に支えていくひとりとしても、侍ジャパンにおける役割は大きい。
投手陣も充実している。
台湾でのオープニングラウンドでは、山口俊(巨人)、高橋礼(ソフトバンク)、今永昇太(DeNA)が先発の役割を果たした。山口は今シーズンのセ・リーグ投手3冠右腕で、高橋は日本一に輝いたソフトバンクで12勝6敗の好成績を残した。今永は侍ジャパンでも貴重な先発左腕で、今シーズンはチームトップの13勝をマークした。
リリーフ陣も頼もしい。今回のプレミア12ではパ・リーグの最優秀防御率を受賞した山本由伸(オリックス)らがセットアッパーを務め、2シーズン連続でセ・リーグ最多セーブを記録した山﨑康晃(DeNA)が試合を締めくくる展開を、"勝利の方程式"としている。
侍ジャパンにとって今回のプレミア12は、東京五輪への試金石となる大会だ。17年からチームを指揮する稲葉監督は、「世界一になるためには、以前から言い続けているコミュニケーションと結束力が重要です。チームがひとつになったところが、国際舞台では勝っていく。侍ジャパンもより強い結束力を持って、『プレミア12』のスーパーラウンドに臨みたい」と、言葉に力を込める。
47歳の指揮官が『プレミア12』の先に見据えるのは、もちろん東京五輪だ。自身も08年の北京五輪に選手として出場した経験を持ち、五輪の野球競技は12年、16年と2大会連続で種目から外れてきた。来夏の東京五輪は日本のレベルを世界にもう一度アピールする機会であり、稲葉監督にとっては12年越しのリベンジの舞台となる。
「北京では準決勝で韓国に、3位決定戦ではアメリカに負けて4位に終わった。メダルが獲れずに負けてしまったので、悔しい思いしかありません。その悔しさをバネに、ここまでやってきました。東京五輪で金メダルを獲れるように、と」
1984年のロサンゼルス五輪以来となる金メダル獲得へ。稲葉監督が率いる侍ジャパンは、プレミア12を栄光への懸け橋として突き進んでいく。
(※1)2018年末までのWBSC(世界野球ソフトボール連盟)ランキングに基づく。
(※2)東京五輪の野球競技には6チームが出場する。すでに日本(開催国)とイスラエル(アフリカ・欧州予選1位)が出場権を得ており、そのほかにプレミア12から2チーム、アメリカ予選から1チーム、最終予選から1チームが、それぞれ出場権をつかむ。
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