中井卓大(レアルマドリード・カデーテA)が日本凱旋!連覇逃すも渡欧6年間での進化見せる【U16キリンレモンCUP2019】
サッカー16歳以下のチームが出場する「U16キリンレモンカップ2019」が、4月19日から21日まで平塚市・馬入ふれあい公園サッカー場と茅ヶ崎市・柳島スポーツ公園で開催された。
今大会には、国内大注目の15歳、“ピピ”ことMF中井卓大が所属するレアルマドリード・カデーテA(U-16)が、2連覇をかけて出場。ここでは、大会最終日の21日に行われた3位決定戦と決勝戦の模様をお伝えする。
U16キリンレモンカップ2019は、海外からの強豪チームを招待し、日本サッカーの競技力向上を図るため相互錬磨の機会を与え、参加するU16年代の選手が国際交流でグローバルな思考・視野を持つことを目的として開催。
日本からはFC東京、東京ヴェルディ、湘南ベルマーレ、ジェフユナイテッド市原・千葉、三菱養和サッカークラブ、海外からはレアルマドリード・カデーテA (スペイン)、チョンブリーFC (タイ)の計8クラブが参戦し、熱戦を繰り広げた。
21日の3位決定戦には、準決勝でそれぞれ敗退した東京Vとジェフ千葉が対戦。開始5分までは一進一退の攻防が続いたが、前半16分にジェフ千葉FW岸本和也が左サイドからカットインして右足でシュート。ボールは右ポストに当たってそのままネットに吸い込まれ、チームに先制点をもたらした。
一方の東京Vも負けじと応戦する。前半21分、FW瀬川サーシャのパスを受けたMF西谷亮がドリブルでペナルティエリア内に持ち込むと、GKとの1対1を制して同点ゴール。高校生らしからぬ落ち着いた足さばきで、試合を振り出しに戻した。
同点に追いつかれたジェフ千葉だが、すぐさま反撃に出る。前半27分、先制点を挙げたFW岸本のシュートのこぼれ球を、MF原田陸斗がネットに押し込み勝ち越しゴール。千葉イレブンは歓喜に沸き、ベンチも立ち上がって喜びを爆発させた。
ジェフ千葉はその後、東京Vの猛攻を受けるも最後まで守りきり、2-1で勝利。チーム全員で3位の座を勝ち取った。
そして、この日最後に行われた決勝戦は、ここまで勝ち上がってきた大会連覇を狙うレアルマドリードと初優勝に挑むFC東京が対戦。注目を集めるレアルマドリードMF中井は、今大会4試合目の先発出場。
世界有数のビッグクラブで活躍を続ける15歳の“凱旋”に、スタジアムは大いに盛り上がった。
レアルマドリードの選手らがバスから会場入りする際には、会場に集まった子どもたちが、“ピピ”の姿を一目見ようと駆け寄り、サインやハイタッチを求めて長蛇の列が作られていた。そのことから、わずか15歳の若さで、すでに“世界のスタープレイヤー”としてサッカー少年たちの憧れの存在になっていることがわかる。
準決勝まで9得点と全チーム中、最多ゴール数のレアルマドリードは、4-3-3のフォーメーションで臨む。対して準決勝まで無失点と鉄壁の守備を誇るFC東京は、4-4-2の布陣で堅守速攻を武器に若い“銀河系軍団”に挑む。
前者の一方的な試合展開も予想されたが、前半開始1分、思わぬ形で試合が動いた。FC東京DF宮下菖悟が右サイドからクロスをあげると、FW野澤零温がヘディングで合わせて先制ゴール。レアルマドリードのGKアドリアンは、FC東京の電光石火の攻撃に一歩も動くことができなかった。
いきなり追いかける展開となったレアルマドリードだが、MFジェレミを中心にFC東京を攻め立てる。身長は165cmと、180cmの中井をはじめ高身長の選手がズラリと揃うチームの中では小柄ではあるが、試合を通じてひときわ大きな存在感を放っていた。
抜群のスピードと高度なテクニックを活かし、左サイドからのドリブル突破で何度も好機を演出。失点直後には、ゴールとはならなかったが、自らのドリブルでGKと1対1の決定機を作った。
MF中井は攻守ともに安定したプレーを展開。スペインで磨き上げた丁寧なパスさばきで攻撃の起点になり、レアルマドリードの中心プレイヤーとしてチームを牽引し続けた。
前半は得点を決められなかったレアルマドリードだが、後半から本領を発揮する。同5分、MFミゲルが左サイド深くからドリブルでカットインして中央にパスを送ると、MFチャモンがワンタッチで約25mから豪快なミドルシュートを放つ。ボールはゴール右隅に突き刺さり、ようやく1-1の同点に追いついた。
このまま流れに乗りたいレアルマドリードだったが、その後、決定機を作るもゴールを決め切ることができなかった。そのまま得点は動かず、延長戦に突入。ほぼ互角の展開で試合は進んでいった。
だが、延長戦でも得点は生まれず、試合はPK戦にもつれ込んだ。FC東京が順調に2人が連続して決める中、レアルマドリードは2人立て続けに相手GK彼島優のビッグセーブに阻まれてしまう。4人目を止めて粘りを見せるも、5人目に決められ、中井が蹴る機会がないまま4-2(PK戦)で終戦。激闘の末に、FC東京の前に屈した。
連覇を逃したレアルマドリードは落胆の色を隠せない。勝敗が決定した瞬間は中井もピッチに背をついて倒れ込み、両手で顔を覆った。
愛称の“ピピ”は、サッカーで上手くいかないことがある際に“ピーピー”と泣いていたことからつけられたと言われているが、今回も惜敗した悔しさから涙を堪えることができなかった。
「せっかく遠くまで来たので、でっかいトロフィーをマドリードに持って帰りたかった」と肩を落とした中井。だが、以前よりフィジカル面は強化されており、大会を通じて安定したプレーを披露した。スペインの地で戦い続けた6年間により、国際大会で確かな成長の跡を残してみせた。
試合後には、表彰式で笑顔を見せた中井。記念撮影の際には白い歯を見せ、死力を尽くして戦ったFC東京の選手たちと固い握手を交わした。
表彰式後のインタビューでは、大会を振り返って「僕もみんなもいい経験になりました。勝ちたかったけど、勝てなかったこともいい経験にしたいです。またマドリード帰って頑張りたい」とコメント。
続けて、大会で学んだことを聞かれると「日本人選手は体力があってよく走る。マドリードに帰ってからもっと走って、負けないように頑張りたい。あと、サッカーだけじゃなくもっと人間として成長して上を狙っていきたい」と力強く話した。
また、「目指しているのはA代表」と日の丸への想いも口にした中井。これからも世界的名門クラブの下部組織で鍛錬を積み、日本代表の中心プレイヤーとしてピッチに立つことを目指す。