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football2021.05.12

アンドレス・イニエスタが日本での引退を視野に入れた、ふたつの思い。

37歳の誕生日を迎えた5月11日に、ヴィッセル神戸のアンドレス・イニエスタが記者意見に臨んだ。楽天グループと楽天ヴィッセル神戸を統べる三木谷浩史会長が同席し、新たに2年間の契約延長に合意したことが発表されたのだった。

18年5月末に東京で開かれた入団会見と同じく、イニエスタは白いTシャツに黒いジャケットで登壇した。「コンニチハ、ミナサン」と日本語で切り出し、そこから先はスペイン語で思いを明かしていく。

「3年前にここ東京で、エキサイティングなプロジェクトを発表しました。この新たな挑戦は私と私の家族にとって、本当に大きな一歩でした。この3年間、苦しく大変な時期もありましたが、ともに乗り越えてきました。同時に、クラブ史上初のタイトルとしての天皇杯獲得だったり、初のACL(アジアチャンピオンズリーグ)出場だったりと、ともに歴史も築くことができたと思います」

3年間の歩みを振り返ると、次は契約延長を決めた理由だ。心の奥深くの部分を、イニエスタは言葉にしていく。

「自分にとって周りから信頼を感じられる、大切にしてもらえていると感じられることが、何よりも大事なことです。3年前にここに来たときに感じた熱い思い、その同じ思いでこの挑戦に挑み続けたいと思います。これから2年間、このプロジェクトに関わり続けられることにワクワクしています」

イニエスタが語る「プロジェクト」とは、「チームをさらなる高みへ連れていく」ことだ。20年元旦の天皇杯で優勝を飾り、クラブ史上初の3大タイトルを獲得したが、リーグ戦では18年が10位、19年が8位、20年は14位に終わっている。「自分は小さいモチベーションを感じないというか、大きな目標を勝ち取りたい性格なので、このチームをさらなる高みへ連れていくための貢献をしたい」との意欲を燃やしている。

バルセロナでクラブ世界一に、スペイン代表で世界王者となり、あまたのタイトルを獲得してきた男である。リーグ戦で優勝争いに絡めていない現状に、満足できるはずはない。


勝利への強い執着心は衰え知らずだ。

20年12月に開催されたACLが、記憶に新しい。


イニエスタは決勝トーナメント1回戦で負傷しながら、3日後の準々決勝に途中出場した。1対1のまま突入したPK戦では、重圧のかかるひとり目に登場してキックを成功させている。

この時負ったケガによって、チームのキャプテンは長期離脱を強いられることとなる。ACLもベスト4で敗退してしまったから、大きな代償を払うこととなった。それでも、この歴戦の勇士が見せた勝利への飽くなき執念は、チームのメンタリティの幹として継承されていくはずだ。

イニエスタと同じ1984年生まれの選手では、ブラジル人DFのチアゴ・シウバ(チェルシー)、イタリア人DFジョルジョ・キエッリーニ(ユベントス)、オランダ人FWのアリエン・ロッベン(フローニンゲン)らが現役を続けている。ユベントスで全盛時と変わらない得点能力を発揮しているクリスティアーノ・ロナウドも、日本の学校制度ならイニエスタと同学年の36歳だ。セリエAでは39歳のズラタン・イブラヒモビッチが、ACミランとの契約を22年6月まで更新している。

イニエスタにも選択肢があったに違いない。新たな冒険へ進むこともできたはずだが、ヴィッセルとの契約延長を望んだ。

記者会見では、ふたつの思いを明かした。



ひとつ目はファン・サポーターへの思いだ。Jリーグのスタジアムで自らの注がれる歓声を、イニエスタはしっかりと受け止めている。

「ヴィッセル神戸のファンと日本のサッカーの皆さんにも、感謝を申し上げたいと思います。愛情とリスペクトを持って皆さんがおもてなしをしてくださったことで、私と私の家族にとって神戸と日本が第二の故郷になりました。自分を歓迎してくれて本当に感謝していますし、皆さんが示してくれた応援や気持ちに応えていかなければいけないと、ひしひしと感じています。そのためにも、今後も努力を続けています」

ふたつ目はクラブへの思いだ。今回の2年契約は、ヴィッセルでキャリアを終える意思表示とも読み取れる。同時に、イニエスタは引退後もヴィッセルとの関係を継続したいとの意思を示した。

「いつまでも選手としてピッチでプレーを続けることはできません。いつか終わりは来るものです、ただ、自分はこのプロジェクトを始めるときに、大きなモチベーションを感じてこれまでやってきましたし、これからもやっていきたいと感じています。そのなかでもちろん、選手としてのキャリアをここで最後まで続けていきたいと思っていますし、サッカー選手としてだけではなく、このクラブと今後も色々な形で常に関わり続けたいと思っています。それが私の希望です」

もちろん、契約を延長したばかりのいまは、ピッチ上でのパフォーマンスに意識を向ける。

昨年末のACLで負った負傷が癒え、5月1日のサンフレッチェ広島戦で今シーズン初めて15分間プレーした。9日の横浜F・マリノス戦では31分までプレータイムを伸ばしている。三浦淳寛監督のもとで上位につけるチームに、さらなる勢いをもたらすことを誓う。



「3年前に大きなモチベーションと意欲を感じてこのプロジェクトに関わりました。それはいまも感じています。ただ、そのモチベーションが薄れてきたと感じたら、自分が最初にそれを言うと思います。それまではピッチでこのクラブに関わっていきたいですし、その意欲を持って今後も続けていきたいと思います」

“黄金の国”を舞台としたイニエスタの冒険は、第2章に突入していく。

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