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football2021.10.05

「正念場の“W杯・アジア最終予選”に期待する、海外から戻ってきた日本代表選手の気迫あふれるプレー」

「正念場の“W杯・アジア最終予選”に期待する、海外から戻ってきた日本代表選手の気迫あふれるプレー」

日本代表は7日に敵地でサウジアラビアと、12日に埼玉スタジアムでオーストラリアとW杯・アジア最終予選を戦う。初戦でオマーン相手に痛恨の黒星を喫した日本にとって、最初の正念場となることは間違いない。

ただ、個人的には“あまり”心配はしていない。

もちろん、“少しは”心配している。正直、オマーン戦の内容は衝撃的だった。過去の予選、日本はすべての試合で勝利を収めたわけではないが、ほとんどの試合で主導権は握っていた。無観客とはいえ地元で戦いながら、オマーンに試合をコントロールされる時間が長かったという事実は、決して軽く見るべきではない、とも思う。

だが、あの1試合、あるいは見せ場のなかった中国相手の1-0をもって「もうダメだ」と決めつける気にはなれない。まったく、なれない。

オマーン戦に関して言えば、まず相手が素晴らしかった。そして、いまだかつて“素晴らしいサッカーをするオマーン”と戦ったことのなかった日本は、完全に面食らってしまった。非常に出来の悪い選手が少なくなかったことも事実だが、オマーン=強敵という前提がチーム全体、もとい、国民全体に共有されていれば、あれほど日本にとって無残な試合になることはなかっただろう。25年前、アトランタで日本に苦杯を喫したブラジル人ならば、敗れた遠因と要因が痛いほどよくわかるはずだ。

中国に関しては……あまりにも相手が臆病すぎた。弱い相手にはとことん高飛車で、強い相手には極端に低姿勢。なんだか、かの国の外交姿勢そのものを見せつけられたようで、正直なところ、ゲンナリした。おまけに試合後、中国の監督は試合内容に満足している、といったコメントを残しているのだから、もう何をか言わんやである。日本に2ケタ失点を食らったモンゴルやミャンマーでさえ、中国よりははるかに勇敢で好感がもてた。

ともあれ、今回の最終予選が、日本が突破を果たしてきた過去5回の最終予選と比較すれば、2番目に厳しい戦いになるのはどうやら間違いない。

四苦八苦、艱難辛苦を乗り越えてたどりついた98年のフランスに比べると、06年ドイツ、10年南アフリカ、14年ブラジル、そして18年ロシアを目指す戦いはまったくもってぬるかった。もちろん、現場のスタッフや選手は胃に穴が開く思いで戦っていたのだろうが、一歩間違えれば地獄に落とされるという緊迫感は、南米や欧州の予選を戦う国々に比べれば圧倒的に低かった。わたし自身、あのジョホールバル以降、「あまりのピンチにそのあとの記憶が飛んだ!」などという経験はしていない。

いざ本当にそういう状況になれば豹変してしまう可能性は否定しないが、現時点でのわたしは、久しぶりに味わうスリルを楽しんでもいる。なんなら、グループ3位になってプレーオフに回るのも、もっというなら、まさか、まさかの予選敗退を喫することになったとしたら、押し寄せてくる絶望感に身を委ねてもいいかな、とまで思っている。

メキシコ・W杯予選の敗退はJリーグの誕生につながり、ドーハの悲劇はジョホールバルの歓喜を生んだ。痛恨の敗戦は、常に日本サッカーを成長させてきた。ならば、レベルは上がっているにも関わらず、世間的、世界的な地位としては停滞気味のJリーグの劇的な発展を呼び込むためには、凄まじい劇薬があってもいいと思うからだ(ま、いざとなれば勝て勝て勝て勝て勝ってくれ、になること確実だけれど)。

マジメな話、この9月での2連戦は、勝ち点6を獲得するのが理想ではあるものの、勝ち点4、または勝ち点2で終わっても悪くないと思っている。最悪なのは勝ち点0で、その次によくないのが勝ち点3。

え?なんで勝ち点3が2より良くないの? と思われた方のために説明すると、勝ち点2ということは、2試合とも引き分けということで、現時点で日本より勝ち点で3上回っている2チームとの差は、縮まりはしないが広がりもしない。つまり、来年のリターンマッチで勝てば、少なくとも勝ち点では並ぶことが可能という計算になる。

ところが、1勝1敗の勝ち点3ということになれば、サウジアかオーストラリア、どちらかとの勝ち点差は6に開いてしまう。全部で10試合しかないリーグにおける勝ち点差6は、ほぼほぼ限界ラインに近い。リードした側は、残り試合のリスクを減らす方向に転換することも出来る。日本としては、これが最悪のシナリオだとわたしは思う。

おそらく、メディアやファンが期待するのは海外でプレーする選手になるのだろうが、わたしは、今年からJリーグに戻ってきた選手に注目したい。

これまで、海外から戻ってきた日本代表選手の多くは、ほぼ時を同じくして代表の座を失った。Jリーグで得られる経験値や自信が、海外ほどではなかったから、ということなのだろう。

だが、時代は変わり、いまやJリーグと海外の最大の違いは、レベルというよりはギャラという面が強くなってきた。世界トップクラスのサッカーが誰でも、どこでも見られる時代になったことで、島国であることのハンデもだいぶ小さくなった。

これは日本に限った話ではない。東京五輪で日本を苦しめたメキシコは、そのほとんどが国内リーグでプレーする選手たちだった。ヨーロッパでプレーしていなければ国際大会では戦えない、という思い込みは、完全に過去の話となりつつある。

というわけで、長友には、酒井には、大迫には、依然として自らが世界と戦いうるレベルにあることを証明してもらいたい。日本に帰って来たのは、ヨーロッパのクラブから見捨てられたからではなく、単に日本のマーケットのクローズがヨーロッパより早かったため、つまり両天秤にできる状況ではなかったがためのものだと、見せつけてほしい。

それができなければ、Jリーグのレベルは相変わらず低いという世間の思い込みは、まだしばらくは色濃く残る。W杯に出場する、しないに負けないぐらい、深刻な問題だとわたしは思う。

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