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running2021.08.23

『レースもトレーニングもトータルで考える』Think on the RUN ―走りながら考える― vol.11

過日の東京五輪では戦前の予想通り、高温多湿の厳しいレースコンディションとなりました。長距離種目の多くではトップアスリートでさえもゴールに辿り着かないという由々しき事態となりました。普段、常人には考えられないようなトレーニングを重ねていてもこの環境下での長距離レースには自然が大きな壁となって立ちはばかることがよくわかりました。

レース前半、先頭を引っ張った選手や先頭集団に無理してついていった選手の多くは、中盤から後半にかけて失速してしまう光景を何度も目にしました。一方、優勝した選手のほとんどはレース前半から中盤は無理なエネルギーを使わず、レースと自分に集中し、勝負所となる後半やラストスパートにフォーカスしたレース運びが印象的でした。日本では「前について行け」と応援されることが多いですが、レース中もゴールを見据えて冷静に、トータルでレースプランを組立てないと、思い描くゴールは訪れないこともわかりました。



我々市民ランナーの多くはトップアスリートとは違い、日々のトレーニングメニューをコーチが作成し見守ってくれることはありません。そのためGPSウオッチや心拍計で日々のトレーニングをデータ分析し、ときにはトップアスリートと自分のフォームを重ね、その違いや弱点を強化するために、走ること以外にウエイトトレーニングや体幹トレーニングなどを取り入れられている方も多いと思います。また、最新のギアを身にまとい、距離を積み、スピード練習をしているにもかかわらずご自身のパフォーマンスが上がってこないのは何故でしょうか?様々な理由が考えられますが、心技体、レースに直結したトレーニングメニューになっていないからかもしれません。

世界記録の多くはネガティブスプリット(前半はペースを抑えて後半にかけてペースを上げていく)で達成されています。私がマラソンで自己記録を出した時も30-35kmや35-40kmの後半のスプリットが最速でした。ではトップアスリートのように普段のトレーニングで40km走を行い、後半10kmをペースアップするようなトレーニングをしたかと問われれば、答えはノーです。一度に40km以上を走るようなトレーニングをした経験は数回しかありません。時間や場所の調整をすれば可能なのかもしれませんが、我々市民ランナーには現実的トレーニングではないと感じています。それよりも日々のトレーニングに意味を持たせ、月や年単位でトレーニングを計画・遂行し、その内容や結果を客観的に分析及び改善し続けた方が経験上パフォーマンスアップに繋がると思います。また、ケガに悩まれている方も多いと思いますが、ストレッチや治療を沢山行ってもフォームのバランスが悪いと、なかなか治らないと思います。そんな時は勇気を持ってトレーニングを中止することが大事だと思います。長期的な視点で捉えれば、無理をして走り続け、更にバランスを崩すことよりも一度立ち止まって考えた方がケガを治す答えが見つかると思います。

今回の五輪ではレースの組立てとそれに向けたプロセスとアプローチが大切であることがわかりました。レースも日々のトレーニングもゴールを見据え、トータルで考えたいですね。人には個人差がありますので、それぞれのゴール設定とそれに向けたトレーニングメニューは他人と同じであるはずがありません。感情の赴くままに走るのではなく、自らの感情をコントロール、計算し、戦略的且つスマートに走ることが目標達成に向けての近道だと思います。コロナ禍で引き続き先行きが不透明な状況ではありますが、いつか再開されるレースを願って、トータルで考えてトレーニングしてゆきましょう。


 

■Profile

横山 順一

年齢: 51歳

ランニング歴: 39年

國學院大學卒業(1992年)

#junike0708


略歴

中学より陸上競技を始める。800m, 1,500m, 4×400mRを専門とする一方、大学では箱根駅伝予選会にも4年連続出場。マラソンは社会人になった20歳代後半から現在に至る。

外資系スポーツメーカーなどに勤務後、現在はコンサルティング会社にてターンアラウンドスペシャリストとして経営コンサルティング、企業・ブランドのブランディングなどを従事。


自己ベスト

フルマラソン: 2時間26分55秒

ハーフマラソン: 1時間08分50秒


主な出場レース

東京マラソン、福岡国際マラソン、びわ湖毎日マラソン、別府大分毎日マラソン

ニューヨークシティマラソン、ゴールドコーストマラソン、ホノルルマラソン、バンクーバーマラソン

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