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running2025.06.05

129年続くBoston Marathon(ボストンマラソン)は何がすごいのか

■129回の伝統の大会に出場

近代五輪の翌年1897年からスタートした伝統の129回目のボストンマラソンに夫婦で参加してきました。ボストンマラソンとは、最初の参加者は15人、それが、今では3万人近いランナーが参加するワールドマラソンメジャーズ6大大会の一つとなっています。

とは言え、同じくアメリカで11月に開催されるニューヨークシティーマラソンでは5万5千人、今年4月のロンドンマラソンでは5万6千人が完走しギネス記録となったように規模だけ言えば、他にも大きなレースはあります。

それでも何故ボストンが凄いのか。一言で言って、コース、応援、そして、期間中の町全体の雰囲気、 “すべてがリアルマッコイ(本物中の本物)“だからです。では、長い年月をかけて培われたこの大会の雰囲気を紹介していきましょう。


■エイジグループ別に参加標準記録がある

ボストンマラソンは、出場するためには、基本、参加標準記録を破る必要があり、ちなみに、2025年の申し込みでも、参加標準タイムは破りつつも、惜しくも1万人以上の落選者がいたぐらい熾烈な争い、まるで走る前の関門、“ゼロ次関門”が厳しい大会です。


※ボストンマラソンオフィシャルページより引用


参加標準記録を破ったランナーから速いタイム順にエントリーされると言うと、何だかアスリートな大会をイメージするかもしれませんが、その標準記録は、実はエイジグループ別(年齢別)に分かれていて、むしろ、歳を重ね、頑張っているランナーを応援してくれるような仕組みになっているのが特徴です。

まあ、日本で言えば、別府大分毎日マラソン、福岡国際マラソン、女子の大会であれば、大阪国際女子マラソンのような参加記録を突破しないと出られない大会に、[年齢別の参加標準記録]が設定されているのです。

上記の3レースは、速いタイムを持っている=若い、が前提で作られた制度になっていますが、ボストンスタイルであれば年齢を重ねることがネガティブではなくなりますよね。

そして、アメリカではボストンマラソン参加に向けて、BQ、Boston Qualified(ボストン参加資格)を破る大会が各地で行われています。アメリカの大会カレンダーはボストンを中心に回っていると言っても言い過ぎではないですね。


■これぞ、マラソン、これがマラソンだ

そして、このレース、140m以上の高低差とジェットコースターのようなコース、(ちなみに東京マラソンは約40mの高低差)そして、直線距離が半分以上を超え、実は、世界陸連の公認ルールに沿ったコースではなく、言わばボストンがルールと言わんばかりのそのコースになっています。

スタートしてしばらくかなり下ります。でもそうと思うとすぐに軽い上りがきます。まあ、こんな調子で基本的には下り基調なのですが、アップダウンの繰り返し、フラットな場所がないジェットコースターのようなコースでしたね。また有名な30K過ぎの難所、心臓破りの丘(ハートブレイクヒル)は、意外にすんなり行きました。何しろ他にもアップダウンがありましたからね。

そして、ハートブレイクヒルが終わると、そこからゴールまでは10K程度下りになります。しかし、それがうまく行かないのがボストンマラソン、「ダウンバッド」と呼ばれるように下りなのにペースが上がらなくなりました。


結局、そこまでの上り下りで足を使ってきているので、ダウンバッドになってしまうのですよね。ただそれでも最後は何とかゴールに辿り着き、2時間44分36秒で完走できました。とにかく、一言で言って、キツイけど走り甲斐のあるコースでした。不思議とまた走りたいと思う自分がいますね。


■そもそもスタート地点に行くまでが常識外の連続

ちなみに、歴史的なコースのスタート地点は、まさに小さな町からスタート、道もかなり狭いです。とても国際大会が行われるコースとは思えないアットホームな雰囲気の小さな町?村?からスタートします。


コースが狭いので、3万人の一斉スタートではなくて、ランナーによってスタート時間が違う時差スタート(ウェーブスタート)方式になっています。日本では一般的ではないですが、アメリカのマンモスレースでは一般的な運営方法です。

そして、スタート地点のホプキントンからボストン市街地までのワンウェイの直線コースでして、まず、市内中心部のボストンコモンに集合して、スタート地点のポプキントンに大会が用意したスクールバスで向かいます。約3万人をスタート地点まで1時間以上の道のりを移動させるわけですから、これまた何とも規格外です。


そして、バスがアスリートビレッジに到着するも、実際のスタート地点はなんとその約1K更に先、そこまでみんな当たり前のように歩いて移動します。とにかく、日本でも未体験な連続が続き、そしてスタートを迎えると、そこには更に難コースが待っているというわけです。世界で最も古いフルマラソンの流儀はタフそのものでしたね。


■マラソン前後のイベントはまさにアメリカ流

ボストンマラソンは愛国の日の4月第3週の月曜日にレースデイがあります。私たちはその週の水曜日に到着、金曜日にEXPOにBIB(ゼッケンを)受け取りに行きました。

その会場、ハインズコンベンションセンターでのEXPOは主に大会スポンサーのアディダスのグッズの販売とBIBの受け渡し機能に特化していて、むしろその会場をはみ出すように町中がマラソンEXPO会場になっていましたね。


期間限定のランニングブランドのPOP UP SHOPが町のあちこちにあり、限定販売の商品や、ボストンマラソンのオフィシャルグッズが至るところで販売されていて、スタート・ゴールがあるブライトンストリートは到着した水曜日あたりから交通は部分規制されて、町はボストンマラソン一色になっていました。

その一本裏のニューベリーストリートも、メーカーの期間限定のPOP UP SHOPが集中するエリア、土曜日には1万人のB.A.A 5Kレースがあって、その後の日曜日にはシェイクアウトランがあちこちであり、マラソンウィークは超盛り上がります。

シェイクアウトランとは、マラソン前日にある「みんなで体を動かしておきましょう」的なイベントで、アメリカ人にとっては恒例のイベントです。午前8時から順番にあちこちでランニングブランド主催のシェイクアウトランがあり、しかも、知っているランナーはそれをハシゴする感じで、ニューベリーストリートはランナーで溢れかえります。

これ、知らないで見た人は、もはやレースかと思うはずです。


■ボストンマラソンの地元の運動会

そして、ボストンマラソンは何と言っても大会当日の応援もすごい。至近距離での応援は町中がこのマラソンを楽しみにしている証拠ですよね。


そしてボストンは、マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学、ボストン大学と学生の町ですから、参加者は学生はもちろんですが、何だか若いランナーが多いように感じましたね。

結局、子供の頃からこのイベントを見て育てば、応援することからはじまって、体力がある人なら、別にランナーでなくても当然走りたいと思うのでしょうね。上半身裸のランナーとか、ジーンズのランナーがマラソン3時間を切ってくるわけですから、もはやこの町の運動会のような感覚なのかもしれません。2万8千人の出走者のうち、マサチューセッツ州のランナーが4,300人強と約15%が地元ランナーというデータからもそれは裏付けられる気もします。

そんなローカルな側面もありますが、もちろん世界6大大会の一つですし、129回も歴史がある凄い大会、そんなある種の2面性は言葉ではなかなか伝えられないかもしれませんが、今回参加してみて、参加標準をクリアしているランナーであれば、絶対に出場してみたい大会だと思いました。貨幣価値には換えがたい、貴重な経験ができるはずです。
 


<著者プロフィール>

ランニングシューズフィッティングアドバイザー

藤原岳久(FS☆RUNNING(旧 藤原商会)代表)


日本フットウエア技術協会理事

JAFTスポーツシューフィッターBasic/Advance/Master講座講師

足と靴の健康協議会シューフィッター保持


・ハーフ1時間9分52秒(1993)

・フルマラソン2時間34分28秒(2018年別府大分毎日マラソン)

・富士登山競走5合目の部 準優勝(2005)

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