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running2024.10.31

S4+ YOGIRI(エスフォープラス ヨギリ)は4切り(ヨギリ)だけじゃない高スペックなレースデイシューズ

■サブ4ランナーを応援するS4+ YOGIRIが発売

ランナーの痒いところに手が届く豊富なラインナップを誇るASICSから、その象徴的なモデル『S4+ YOGIRI(エスフォープラス ヨギリ)』が発売されました。 

「サブ4は、壁ではない。」 のキャッチコピーの通り、YOGIRI(ヨギリ)とはフルマラソン4時間を切る=4ギリの意味で、【SPEED(スピード)】、【STABILITY(スタビリティー)】、【SAFTY(セーフティ)】、そして【SUB4(フルマラソン4時間ギリ)】の4つのSで、ランナーのマラソンサブ4を応援するコンセプトのシューズです。

前作S4のコンセプトを引き継ぐ形でアップデート されたS4+ YOGIRIですが、アッパーからソールユニットまで大幅に変更されています。今回のこのモデルに対する力の入れようをこのあたりからも感じますね。

ただ、わたしには、そのネーミングだけで、サブ4というニッチな層を狙っているモデルのようには感じません。わたしは、METASPEED PARIS(メタスピード パリ)シリーズのミッドソールと同じ素材「FF TURBO PLUS」を上層部に使っているような機能性からも、このシューズ、かなり守備範囲が広い、もっと多くのランナー層にハマるモデルのように感じています。

では、その辺りも含めて、早速S4+ YOGIRIを解説していきましょう。


■ S4+ YOGIRIには「FF TURBO PLUS」が搭載

このシューズ、ミッドソール上層にはあのMETASPEED PARISシリーズと同じ反発弾性・復元力の高い素材「FF TURBO PLUS」が搭載、そして、下層には「FLYTEFOAM」というコンビネーションソールになっています。

それらでサンドイッチするのがスプーン形状のカーボンプレート、反発弾性の強い素材+プレートという速く走るロジックを押えた構造は、4つのSのうちの【SPPED】の側面を強く感じる高スペックになっていると言っていいでしょう。

一方、下層のEVAベースの「FLYTEFOAM」は、やや硬度をあげた素材にして、4つのSのうちの【STABILITY(スタビリティー)】、【SAFTY(セーフティ)】 を担保しています。同社デイリートレーナーの人気品番ではお馴染みのクッション性の高いミッドソール素材「FF BLAST PLUS」をあえて使用していないことにもそれは現れていますね。

また、踵部付近にかけて上層部がアッパーを包み込むように張り出すお椀状の形状もそれを補完していて、あくまでレースデイシューズというカテゴリーでできる最大限のスタビリティー・セーフティーを演出していると言っていいでしょう。

ハイエンドなスペックと安定要素の柔と剛のバランス感を強くコントラストした、そんな2面性ソールを持つのが、S4+ YOGIRIなのです。


■S4+ YOGIRIは高スペックの中にも扱いやすさがある

早速履いてみると、たしかに安定する、そして、METASPEED PARISシリーズのグニャッというあの感触ではない、やや硬めの印象が全体を支配します。ただ、走りだすとスピードが自然に出る感覚なのですよね。

柔らかい感触というよりもとにかく自然に進む、その事実こそ、このシューズのスペックの効果でしょう。

結局、METASPEED PARISシリーズのミッドソールは、FF TURBO PLUSのみで構成された、まさにゴム鞠のようにソフトでバウンシーな物体です。この柔らかさを推進方向にベクトルさせるには、ランナーが瞬時に地面を押して、押し返す必要があります。

それができないとタイミングが遅れてグラグラする、という不安定な印象の方が強くなってしまう諸刃の剣と言えます。安定要素すら排除して反発弾性の強さを求めたモデルですから、これがいわゆる“足が持たない“と言う感覚と言えます。

これをタイミングとして一発で捉えて、物理学の法則通り、強い力を加えることで、押し返す力を増幅させる仕組み、これがスーパーシューズ、METASPEED PARISシリーズなわけです。


それに対して、S4+ YOGIRIは着地時にプレスした分だけ、自然に反応してくるような感じで、もっと扱いやすさがあるモデルと言っていいでしょう。これが剛柔のコンビネーションソールのブレンド感がなせる技なのです。


■S4+ YOGIRIはどんなランナーに合うのか

アシックスでサブ4シューズと言えばアレ。そうです、MAGIC SPEED 4とその守備範囲がかぶるように思います。

こちらは、ソール全体をデイリートレーナーの素材「FF BLAST PLUS」で構成して、踏みつけ部に「FF TURBO」搭載というやはり剛柔コントラストソールで、その間にカーボンプレートをサンドイッチしている構造です。

「FF TURBO PLUS」のS4+ YOGIRI、「FF TURBO」のMAGIC SPEED 4は推進力にはやや差があり、「FF BLAST PLUS」はデイリートレーナーの素材ですから、MAGIC SPEED 4の方が、もっと安定要素寄りの構造になっていると言えるかもしれません。

扱いやすさではMETASPEED PARIS シリーズの弟分、推進力ではMAGIC SPEED 4の兄貴分という印象で、推進力と安定要素のバランス感を感じるS4+ YOGIRIは、サブ4をするためというより、サブ4以上を目指すランナー向け、そんな言い方の方が合うシューズだと思いますね。

例えば、METASPEED PARISシリーズで後半大幅失速してしまう3時間前後のランナーだって、イーブンペース型で全体ペースを上げたいサブ4以内のランナーだって、S4+ YOGIRIは、使い方、ニーズによって、時にはMETASPEED PARISシリーズのオプションにもなり、時にはMAGIC SPEED 4のオプションでもあるような、この2足の守備範囲をまたぐようなそんなシューズと言ってもいいかもしれません。

まさに痒いところに手が届くラインナップというわけです。


■最新機能を満喫して、ランナーとしての趣味を高めましょう

ランニングシューズは、何しろランニングにおける唯一の道具ですから、日々進化する最新技術を謳歌できることはランナーとして醍醐味、価格に変えられるものではないとわたしは思っています。

最近は、各ブランドで違うモデル?っていうぐらい前作と比較してかなりドラスティックな変更がなされることが多くなっています。ですから、最新モデルが発売されたタイミングで、前モデルを安く買うことは必ずしも得ではない、そう思います。

前モデルが安いから買う、と言うのは一見得をしているようですが、感覚的には、2つ前ぐらいのモデルを買うようなケースも往々にしてありますから、せっかく最新機能搭載したモデルを体験できるのに、わざわざ過去の機能性を感じるのはランナーなら本当に損なこと、そう思ってしまいますね。

より自分の趣味であるランニングを深めたい、自らの目標達成を期待するというランナーは、わたしは最新機能性を選ぶべき、真にそう思います。

結局、2017年以来、レースデイシューズは、ランナーの力を伝えるシンプルな機能性からシューズとランナーのコラボレーションで記録を達成する時代に変わっています。


そして、このS4+ YOGIRIだって数年前では考えられなかった高スペックのレースデイシューズと言えますし、前モデルからのアップデートもとてもドラスティックで、シリーズは一緒と言えども、もはや違うモデルです。

ですから、この最新シューズをニーズのある一人でも多くのランナーに楽しんでもらって、そして、うまく活用してもらって、自分の目標を達成してほしいですね。
 


<著者プロフィール>

ランニングシューズフィッティングアドバイザー

藤原岳久( FS☆RUNNING(旧 藤原商会)代表)


日本フットウエア技術協会理事

JAFTスポーツシューフィッターBasic/Advance/Master講座講師

足と靴の健康協議会シューフィッター保持


・ハーフ1時間9分52秒(1993)

・フルマラソン2時間34分28秒(2018年別府大分毎日マラソン)

・富士登山競走5合目の部 準優勝(2005)

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