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football2020.01.01

2020年サッカー界の展望 『東京五輪は、サッカー日本代表史上もっとも大きなチャンス!』

傍若無人にして鎧袖一触。日本人の与り知らないところでマラソンの開催地が札幌に変更されたように、いまや国際オリンピック委員会(IOC)はやりたいことをやりたいようにやり通す、世界でも屈指の強権集団となった感がある。

五輪を競技者にとって最高最大の舞台と位置づける各競技団体にとっても、IOCは極めて大きな存在であるらしい。新たな競技に認めてもらいたい団体はもちろんのこと、様々な理由や利権により外される可能性がある団体も、IOCへのロビー活動は欠かせない。東京大会の正式種目から外れるかも、との報道が出てからのボクシング関係者の巻き返しは相当なものだったとも聞く。

だが、向かうところ敵なしにも見えるIOCにも、たった一つだけ、頭のあがらない競技団体がある。

国際サッカー連盟(FIFA)である。

なぜIOCはFIFAに頭があがらないのか。理由は簡単。サッカー選手にとって最高の大会は、五輪ではなくW杯だから、である。

五輪がなければ世界一を決める舞台がなくなってしまう競技と違い、サッカーは五輪がなくなっても困らない。というより、五輪をサッカーにとっても世界一を決める場にしようと目論むIOCは、FIFAからすると自分たちの既得権益を侵す存在としか映らない。

従って、プロの参加を解禁し、大会のレベルと重要度をW杯並に高めようとするIOCの動きに、FIFAは難色を示し続けてきた。なぜ数ある五輪種目の中でサッカーだけが23歳以下という年齢制限を課しているのか。それは、観客動員の面からも大会のドル箱となるサッカー競技の価値を高めたいIOCの懇願と、W杯の権威を脅かすことは断じて許さないというFIFAの妥協の産物による。そして、おそらくは今後100年が経過しようとも、五輪のサッカーがこの競技の世界一決定戦になることはない。

ということで、他の競技と違い、金メダルが必ずしも世界一を意味するわけではないサッカーだが、かといって金メダルを獲るのが簡単だ、というわけではない。

どういうわけか、W杯よりも五輪のサッカーを重視してきた日本は例外としても、近年では、かつては五輪になど見向きもしなかったサッカー大国も本格的(といってもA代表に比べれば差はあるが)に力を入れ始めており、勝つことの難易度は格段に増してきている。

そんな大会で森保監督率いる日本五輪代表は金メダル獲得を目標として掲げているのだが、果たして、実現は可能なのだろうか。

極めて困難だが、日本サッカー史上もっとも大きなチャンス──というのがわたしの見方である。

純粋に戦力だけを見た場合、日本が金メダルを獲得すると考えるのはいささか無理がある。ただ、今大会の日本には戦力プラス地元の大声援という非常に大きなアドバンテージがある。リーグ最下位のチームであっても、ホームであれば優勝争いをするビッグクラブを倒すことがあるのがサッカー。そして、金メダルを獲得するにはまだ力不足の感もある日本だが、大会参加国の中で最低レベルの実力、というわけでもない。運に恵まれれば大きなことをやってのける──前回のW杯でいえば、クロアチアに近い立ち位置と言っていいかもしれない。

昨年の後半あたりから、日本代表、五輪代表の戦いぶりがパッとしなかったこともあり、森保監督に対する風当たりは急速に強くなってきているが、個人的には、まったく心配していない。というのも、出来の悪かった試合は、グラウンドコンディションが極端に悪いか、主力がいなかったかのどちらかだったからである。

自分たちでボールを保持し、動かし、パスで崩していくサッカーを指向する森保監督のチームにとって、ボールがスムースに転がらない荒れたグラウンドでの試合は、あまり好ましいものではない。逆に、主力が揃っていて、整ったグラウンド状態での試合であれば、チームは一定のクオリティと結果を残してきている。

よほどの天変地異に見舞われでもしない限り、東京五輪のサッカー会場は最上級のコンディションで行なわれるはず。つまり、日本にとっての不安材料は一つ取り払われる。

となると、問題は「主力」になる。ここまで、森保監督のチームが素晴らしい戦いぶりを見せたときに、極めて重要な役割を果たしたのがポルトでプレーする中島とリバプールへの移籍が決まった南野なのだが、この2人、どちらも23歳以上なのである。

大会のレギュレーションでは、23歳以上の選手は3人までのメンバー登録が認められている。いわゆる“オーバーエイジ”なのだが、五輪ではこの枠の使い方がカギになってくる。

ただ、五輪はFIFA主催の大会ではないため、ワールドカップと違い、日本サッカー協会が呼びたいときに呼びたい選手を呼べる、というわけではない。所属クラブと交渉し、相手を納得させるという手続きが必要になってくる。

もしクラブ側が「NO」といえば、日本としてはどうしようもない。

中島、南野の参加が認められ、さらにブレーメンで活躍する点取り屋の大迫や、森保体制にとってもう一人のキーパーソン、柴崎(ラ・コルーニャ)のどちらかが参加できることになれば、上位進出の可能性はグッと増す。

個人的には、金メダルはともかく、銅メダルはまず行けるのでは──と見ている。それぐらいのところは、運やホームの後押しはなくとも実力で狙える。

となれば、重要になってくるのは各クラブと交渉する日本サッカー協会の手腕、ということになってくる。最大の障壁は、五輪のサッカーというものに対する興味が極端に低く、そもそも参加する資格すら与えられていないイングランドのリバプールになるかもしれない。

W杯ではイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの英国4協会それぞれの独立性が認められているが、IOCは「英国」という国家しか認めておらず、そのことが、イングランドにおける五輪・サッカーに対する興味を著しく低いものとしている。

サッカーの国際大会が純粋なピッチ上の戦いから、協会や国の交渉力、資金力なども含めた総合力の勝負になって久しいが、五輪・サッカーの場合は特に協会の力が重要になってくる。

南野、中島、柴崎、大迫──ここにあげた4人のうち、本当に3人を呼べるようなことがあれば、それはもう、日本サッカー協会の大きな勝利である。

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