野球用語のフロントドアとは? バックドアとの違いや投げ方など詳しく解説
野球中継を見ている際に、「フロントドア」という用語を耳にしたことがあるでしょう。野球の本場であるアメリカのメジャーリーグでは以前から一般的な野球用語でしたが、メジャーから日本球界に戻ってきた選手が活用したことで、近年は日本でも定着し始めています。
しかし、フロントドアとは実際にどのようなものなのか、しっかり理解していないという方も多いのではないでしょうか。ここでは、フロントドアやバックドアとはどのようなものかをはじめ、フロントドアを投げるメリット、投げ方のコツなどをご紹介します。
【目次】
■フロントドアとバックドアの違い
そもそも、フロントドアとはどのようなものなのでしょうか。また、フロントドアと混合しやすいバックドアと呼ばれるものもあります。どちらも似たような場面で使われますが、どのような違いがあるのでしょうか。それぞれの意味や違いを解説します。
・フロントドアとは
フロントドアとは、打者の内角のボールゾーンからストライクゾーンへ球を変化させて、ストライクを取る投球術のことです。ホームベースを家、打者を家の正面玄関として見立てたときに、ボールが正面玄関から家に入っていくような軌道を描くため、フロントドアと呼ばれています。
例えば、右投手対右打者が対戦している場合は、スライダーやカットボール(カッター)、カーブなど、打者から逃げていく変化球を活用して、内角のボールゾーンからストライクゾーンへ変化させるのがフロントドアです。
右投手対左打者の場合は、シンカーやツーシーム、シュートといった変化球を活用します。
内角のボールゾーンからストライクに入るスライダーを活用した内角攻めは、「インコース(内角)のスライダー」を略してインスラなどと呼ばれることもありますが、これもフロントドアになります。
・バックドアとは
バックドアは、打者の外角側のボールゾーンからストライクゾーンに変化する球を投げてストライクを取る投球です。フロントドアとは逆に、正面玄関(バッター)の遠くから家(ベース)に入ってくるため、裏口という意味でバックドアと呼ばれています。
投球の例としては、右投手対右打者の場合はシュートやツーシーム、右投手対左打者ではスライダーやカットボールなど、打者に向かって食い込む変化球を活用するのが特徴です。
・シュート回転した球は全部フロントドア?
右投げの投手が左打者のインコースにストレートを投げた際に、ボールが意図せずにシュート回転してしまうことがあります。このような場合もフロントドアと呼べるのでしょうか。
一般的に「シュート回転してしまった球」を投げるときは、体が開いていたりリリースポイントがおかしかったりして、ボールに力を伝えきれていない状態です。
意図せずにシュート回転したボールを投げてしまうとコントロールが安定せず、真ん中に入る甘い球になってしまうこともあるでしょう。また、ボールそのものの回転数が悪いため、球威も落ちます。
一方、しっかりと意図して投げたシュートボールなら、ボールのキレがあるためバッターの打ち損じを狙うこともできます。
このように、ボールをシュート回転させたのとシュート回転してしまったのでは、似ているようで意味が大きく異なるのです。
あくまでも、しっかりした回転のストレートを投げ切れるうえで、シュートボールをインコースに投げることが重要で、シュート回転したボールを一様に効果的なフロントドアだということはできません。
■フロントドアのメリットやデメリット
フロントドアを活用することは、投球にどのような影響を与えるのでしょうか。ここでは、フロントドアを使うメリットやデメリットをご紹介します。
・フロントドアのメリット
フロントドアは、打者の内角ボールゾーンからストライクゾーンへとボールが変化します。そのため、打者に「この球はボールになる」「ぶつかって死球になるかも」と思わせ、反応を遅らせることが可能です。
投手がボールを投げてから打者の手元に到達するまでの時間は1秒にも満たないため、反応を一瞬でも遅らせることができるフロントドアは非常に有効な武器となります。
仮にボールが変化しなかったとしても、ボールゾーンへ投げているため打たれる可能性は低いです。そのまま見逃せばストライクになりますし、打ちにいったとしても、反応が遅れていれば打ち損じてゴロやフライになる可能性もあります。
また、ストライクゾーンを中心に勝負するので無駄なボール球を減らし、球数を抑えることも可能です。球数制限がある場合でも、少ない球数でアウトを取ることができるため、長いイニングを投げることにつながります。
球数制限の厳しいメジャーでフロントドアやバックドアが多用されているのは、こうした点も理由のひとつです。
さらに、ストライクゾーンだけでなくボールゾーンも効果的に活用するため、左右を大きく使うことで投球の幅が広がる点もメリットです。
・フロントドアのデメリット
フロントドアは使いこなせれば非常に効果的な武器になりますが、デメリットもあります。
まず、インコースをめがけてボールを投げ切るため、手元が少しでも狂うと打者にボールをぶつけて死球となってしまう恐れがあります。そのため投手には、打者の内角にボールを投げ切れる精密なコントロールと度胸が求められます。
また、フロントドアの本質は、打者の反応を遅らせてタイミングをずらすこと、ストレートだと思わせるような変化球で芯を外すことの2つです。タイミングやボールの見極めができていないバッター相手には意味がなく、たまたまタイミングがあってしまった、ということも考えられます。
さらに、金属バットを使っている場合は、多少の芯から外れたとしても金属バットなら長打にできてしまう可能性があるため、完全に打ち取ることが難しい点もデメリットです。
■フロントドアの投げ方
フロントドアを投球に取り入れるためには、まずインコースにボールを投げ切るだけのコントロールは必須です。また、打者がボールを簡単に見切れてしまっては、フロントドアを投げる意味がないため、キレのあるボールを投げなければいけません。
まずは自身のフォームをしっかりと固め、ストライクゾーンの内外に投げ分けることができるコントロールと、力強いストレートを投げられるだけの体の使い方をマスターすることが大切です。
力強いストレートをコントロール良く投げられるようになると、カットボールやツーシームといった、フロントドア・バックドアで多用される動く球が、より効果的に働くようになります。
フロントドアを活用する際は、打者の体の方をめがけて投げることを意識するようにしましょう。しっかりと打者に向けて投げ切ることを意識しないと、ボールが真ん中に入って甘い球になってしまう可能性もあります。
そのためにはコントロールだけでなく、プレートの立ち位置を調整して、自分が内角に投げやすいポイントを見つけることも大切です。
■フロントドアで投球の幅を広げよう
フロントドアやバックドアのような、ボールからストライクになる球を使いこなすことができれば、ストライクゾーンをより大きく使うことにつながり、投球の幅を広げることができます。
特に、ボールのタイミングをしっかりと取れる良いバッターと対戦するときほど、フロントドアは有効な投球術です。
コントロールやボールのキレを磨き、フロントドアを使いこなせるように努力しましょう。
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