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baseball2020.01.02

2020年野球界の展望 『野球日本代表が東京五輪の果てに待っている未来とは。』

さあ、いよいよ五輪イヤーである。

昨年、日本人は“世界三大スポーツイベント”の一つ、ラグビーW杯を経験した。大会序盤こそ静かだったが、日本が勝ち進んでいくにつれ、その熱狂は会場周辺から日本全国へと瞬く間に飛び火していった。あの興奮、感動を昨日のことのように記憶している人もいることだろう。

記憶、ということでいえば、18年前のサッカーW杯や、22年前の長野冬季五輪のことを覚えていらっしゃる方も少なくないはず。あれも、日本中がスポーツの熱で覆い尽くされた瞬間だった。

だから、ひょっとすると来るべき東京五輪を、ラグビーやサッカーのW杯や、冬季五輪と同じ括りで捉えている方がいるかもしれない。かつてのわたしがそうだったように、である。

だとすると、度肝を抜かれる。

確かに五輪は“三大スポーツイベント”の一つだが、正直なところ、3位のラグビーや2位のサッカーとは次元が違う。たとえば、昨年のラグビーW杯はお隣の中国や韓国ではほとんど報道されなかったし、94年のサッカー・アメリカW杯のときは、大会期間中であっても「何しに来たの? サッカーW杯? 何それ、どこでやってんの?」みたいなことを幾度となく聞かれた。

だが、わたしが初めて観に行ったアトランタ五輪は違った。開催都市となったアトランタはもちろん、どの都市、どの街にいっても五輪ムードが溢れていた。サッカー至上主義、W杯至上主義だったわたしは、ほとんど呆気にとられたといってもいいほどだった。

そんな夏季五輪がやってくる。東京と銘打たれてはいるものの、間違いなく、日本全土が五輪の熱に浮かされる毎日がやってくる。

正直、あの圧倒的な楽しさを思えば、メダルの獲得数など小さな話である。五輪を国威発揚の場と考え、メダルの数を国力に換算して悦に入るのはあまりにも古い。ラグビーW杯で熱狂した日本人は、仮に金メダルが一つも取れなかったとしても十分に大会を楽しめるはずだとも確信している。

もちろん、そうはいっても自国が負けるよりも勝った方が大会は盛り上がる。となれば、日本が勝てそうな競技、勝ってほしい競技に注目が集まるのは当然のことである。

そんな中、柔道やバドミントン、水泳などと並び、いや、それ以上に金メダルが期待されてしまうのが野球ではないか。

「大丈夫、金メダルは獲れるんじゃないっすか」

明るい口調でそう断言したのは、元ロッテの里崎智也さんである。その根拠は実に明解だった。

「去年日本が優勝したプレミア12よりも参加国が少ない(6カ国)。アメリカ代表にメジャーリーガーが加わらない。日本が不利になる日程は考えにくい。普通に考えたら勝てるでしょう」

なるほど、言われてみれば納得である。現役時代、「敵地の声援とか、全然気にならないタイプでした」という里崎さんは触れなかったが、地元観客の大声援は日本にとってのプラスになることはあっても、相手のプラスになることはまずない。経験値にバラつきのある五輪の審判であれば、場内の雰囲気によって微妙なジャッジに揺らぎが出てくることも考えられる。

おそらく、大会直前に発表される英国ブックメーカーのオッズでも、日本がダントツの1位になるのは間違いない。

今大会と同じく、優勝候補の筆頭と言われながら苦杯を喫した北京五輪の例もあり、楽観するわけにはいかないにせよ、わたしも、日本が金メダル獲得の最右翼と見る。あとは、北京五輪のときのジェフ・ウィリアムス(オーストラリア・阪神)のような、手のつけられない絶好調の変則ピッチャーにあたらないことを祈るばかりである。

ただ、野球に関してはちょっと気になることもある。

前回の東京五輪が開かれた1964年、プロ野球はセ・リーグが阪神、パ・リーグが南海の優勝を果たしている。関西勢同士の対決となった日本シリーズは第7戦までもつれ込む熱戦となったのだが、優勝のかかった最終戦、甲子園球場に足を運んだのはたったの1万5172人だった。これは、いまも残る日本シリーズ最終戦の最少観客数である。

なぜこんなことになったのか。理由はもちろんいくつもあるのだろうが、まず言われるのが東京五輪の影響である。第7戦が行なわれたのは10月10日。つまり、東京五輪が開幕する日でもあったのだ。

幸か不幸か、巨大化する五輪はその費用を賄うため、大口スポンサーであるアメリカで4大スポーツのうち3つがオフ・シーズンとなる真夏へと開催の時期をズラした。従って、今回の東京五輪がプロ野球のクライマックスと重なることはないのだが、それでも、世間の目がいつもよりもプロ野球から離れてしまうことは確実である。

世間の興味ほど移り気なものはない。

つい半年前までまったくのマイナースポーツだったラグビーが一躍人気スポーツとなったが、いわゆる“にわか”の人たちは、それまでスポーツに何の関心も持っていなかったのだろうか。

そんなことはない。

見る人にしてもプレーを始めた子供にしても、それまで何のスポーツにも関わってこなかったということはまずありえない。他のスポーツを見ていたし、やっていた。そう見るのが普通だろう。

ということは、ラグビーが人気を集めたことによって、観客が減った競技、競技人口が減った競技があるはずなのだ。

バスケットボールやバドミントン、スポーツクライミングといった競技は、東京五輪を機に一気にメジャースポーツへと駆け上がる可能性がある。東京五輪によってスポーツを楽しむ層のパイは大きくなるだろうが、奪い合いもまた、いままでよりもはるかに激しいものになる。

そして、メジャー入りを目論む競技に関わる人たちは、いままで自分たちに目を向けてくれなかった人たちを振り向かせようと知恵を絞っている。

同じことが、野球界でなされているだろうか。

ちょっと気になるのは、そのことなのだ。

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