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outdoor2024.03.01

【★短期連載★第2回】キャンプ芸人ヒロシが伝授 大人の遊び「焚き火」の嗜み

ここ数年、コロナ禍がきっかけで、キャンプを始めた・再開した人がいます。

一方、タイミングが合わずに始められなかった人、もしくは始めたものの、「最近は行けていないなぁ」という人も多いのではないでしょうか。

そこで、キャンプ芸人・ヒロシさんに、キャンプの始め方や、一歩先のキャンプの〝ツウ〟な楽しみ方をうかがうのが、この短期連載コラム。

第2回はキャンプに欠かせない「焚き火」がテーマ。シーズン前のキャンプ場が空いている今、自然の中で、焚き火を味わい尽くすコツとは?


【目次】

■焚き火が楽しくなる道具とは?

■焚き火は火をつける前に〝勝敗〟が決まっている

■着火剤があっても火がつけられない人へ

■〝ばえる〟着火アイテムを使ってみよう

■日の入り後の〝ブルーモーメント〟と焚き火

 

■焚き火が楽しくなる道具とは?

僕にとって、焚き火はキャンプのメインディッシュみたいなものです。焚き火をやりにキャンプ場に行っている、といっても過言ではありません。

ただ、焚き火は、慣れていないとなかなか難しい。そこで、まずは、僕が気をつけているポイントを話していければと思います。

そもそも、キャンプ場では「直火禁止」が多い。要は、薪を直接地面に置いて焚き火をすることを禁止しているんです。そのため、薪を載せる焚火台を買うことが不可欠です。僕が使っているのは、ピコグリルという焚火台。地面に薪を置いたような、「直火っぽさ」を味わえるのが気に入っています。前はピコグリル398という小型のものしか使っていなかったのですが、最近は大きいサイズのピコグリル760を使うこともあります。火力も大きくなるので、寒い時には便利なんです。


ヒロシ愛用のピコグリル398。こちらはソロキャンプに最適なサイズ。


それと、燃えている薪を少しいじったり、地面に落ちた薪を焚火台に戻す時に使う薪バサミも必要です。短い食用トングだと、火が近すぎて危険です。街で行っているクリーン作戦の際、使っているようなゴミバサミでもいいですね。


ヒロシ愛用のテオゴニアの炭ばさみ。しっかり掴めるうえに、見た目も渋い。


手を火傷から守るための革手袋も買っておいたほうがいいです。数百円で買えるので、気に入った色のものを買えばいいと思います。


ヒロシ愛用の革手袋。キャンプ用品店や、街中にある働く男のお店で買える。


あとは、実用というよりも、それがあると焚き火が楽しくなる火吹き棒。これは、口に咥えて、燃えている薪に息を吹き込む道具です。正直、なくても困らないんですけど、息を吹き込むと薪が真っ赤に燃え上がるのが面白い。キャンプ芸人の集い「焚火会」では西村くん(バイきんぐ)が最初に使い出して、僕も真似して使うようになりました。


「イベントで火吹き棒を持って登場し、お客さんに息を吹きかけるだけでひと笑いが取れる。便利なアイテムです」(ヒロシ)

 

■焚き火は火をつける前に〝勝敗〟が決まっている

では、道具を揃えたところで、いよいよ焚き火です。でも、実は火をつける前に、ほとんど〝勝敗〟が決まっているんです。

重要なのは、燃料となる薪を、細いものから太いものまで事前に用意すること。

焚き火の薪は、キャンプ場で1束数百円で売っていることもあれば、ホームセンターで箱買いする人もいます。もしくは、キャンプ場に落ちている枯れ枝を拾い集めて、使う人もいます。

しかし、どんな薪でも、焚き火を始める前に、細い薪から太い薪まで、用意しなければなりません。

売られている薪の太さは、だいたい均一。人間の手首くらいの太さですが、これにチャッカマンやマッチで火をつけようとしてもなかなか着きません。もっと細く割って、燃えやすい薪を用意する必要があるんです。

その際、ナイフを使ったバトニングという作業をすることになります。ナイフを薪にあてがって、そのナイフの上を、別の薪で上から「コンコン」と叩いていく。すると、ナイフが薪にめり込み、切れ目が入ります。そのままナイフを叩き続ければ、太い1つの薪が真ん中で二つに割れます。


『大人のソロキャンプ入門』(ヒロシ SB新書)より。写真では、ヒロシに勧められて、フルタングというブレードを含む金属がハンドルの端部まで一体になっているナイフを使って、バトニングを行っている。


このバトニングで、いろいろな太さの薪を、火をつける前に作る。この準備をするかどうかで、焚き火が成功するか失敗するかの9割が決まる。薪をすべて細くしちゃうのもダメです。火持ちする太い薪を残しておかなければなりません。


『大人のソロキャンプ入門』(ヒロシ SB新書)より。薪はこのように細いものから太いものへと、グラデーションで用意するのがポイント。

 

■着火剤があっても火がつけられない人へ

薪の準備が終わったら、今度は細い薪に火をつけていく。その際、着火剤を使うとラクです。有名なのは、富士屋の文化たきつけでしょうか。

ただ、着火剤があっても火をつけられない人もいる。そういう人は、火が怖いのか、焚火台に置いて、その上からチャッカマンを近づけている人が多いようです。

火は、上にあがっていくものですよね? それなのに、上から火を近づけても、下の着火剤に火が当たりません。そこで、僕の場合は、革手袋をした片方の手で着火剤を持ち、下から火を近づける。火がついたところで、着火剤に火が少し回るのを待ってから、焚火台にそっと戻します。

もちろん、液体燃料の場合は、手に持ったら危ないです。焚火台に載せた薪にかけて、チャッカマンを上から近づける方法で正解。ただ、その際も、「火は上に向かうもの」という意識を持つと、ラクに火をつけられると思います。

 

■〝ばえる〟着火アイテムを使ってみよう

着火剤を使わないやり方だと、火口といって、薪につける前段階の、火がつきやすいものを用意します。ここも準備が肝心。

いちばん使い勝手がいいのは、麻縄を解いたもの。麻縄はロープがわりにも使えますから、ザックに忍ばせておいて損はありません。

あとは自然のものだと、乾燥して傘が開いた松ぼっくり。これも、非常に燃えやすく、現地で拾えたら、これにライターで火をつけて、火付けに使うこともあります。

なお、チャッカマンやマッチではなく、ファイヤースターター、火打ち石を使って火をつけることを楽しめるのも、キャンプの焚き火の魅力です。

たとえば、ファイヤースターター。これなんかは「ばえる」着火アイテムですよ。マグネシウムなどできた「ロッド」という棒に、「ストライカー」という角が立った金属を素早く擦らせて、火花を散らし、麻縄に着火させる。僕の場合は、ストライカーは固定させて、ロッドのほうを素早く引っこ抜くようにして火花を散らします。


ヒロシ愛用のファイヤースターター。上がストライカーで下がロッド。「かんたんに火をつけられるし、格好もつけられる」(ヒロシ)


もっと原始的な着火方法だと、火打ち石です。これは、硬い石と火打ち鐘をぶつけて、そこから出た火花を使って、着火をします。ただ、この火花は、ファイヤースターターに比べて非常に小さい。火花が麻縄についても、燃えるまでには至りません。

そこで、火打ち石と一緒に使うのが、チャークロスという炭化した綿の布。炭化しているので、点のような火花でも、つきさえすれば、そこからゆっくりと燃え広がります。この小さな炎を、火口である麻縄や、枯れた杉の葉、細い枝などに延焼させるんです。


ヒロシ愛用の火打ち石と火打ち鐘。ヒロシは石の上にチャークロスを置く。「詳しいやり方は、ヒロシちゃんねるか、本を読んでね」(ヒロシ)

 

■日の入り後の〝ブルーモーメント〟と焚き火

着火がうまくいけば、あとは徐々に太い薪を足していく。事前に薪が用意できていれば、失敗することはないでしょう。近くの枯れ枝・枯れ草、テントに延焼しないよう注意して、焚き火を楽しむだけです。

余計なことを考えずに、火を眺めながら過ごす時間は、贅沢そのもの。僕は、これはヒトの遺伝子に組み込まれていると思っているんですけど、ヒトは火を見ていると、心が落ち着いていきます。蛍光灯では、決して得られない「癒し」が得られる。

日の入り後のわずかな時間、空が濃い青色に染まる時間帯があるんです。その青と焚き火の赤い炎のコントラストといったら、言葉で言い表すことができません。今の時期は、シーズンオフでやっていないキャンプ場も多いのですが、人があまりいない初春のキャンプ場は、 寒さ対策 さえすれば、独り占めできるメリットもあります。家から行ける距離で、シーズンオフにやっているキャンプ場を探してみてください。

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