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baseball2019.06.11

オカモト"MOBY"タクヤ(SCOOBIE DO)│野球で、文化とファッションを楽しむということ【後編】

[ 前編はこちら ]

バンド「SCOOBIE DO」のドラマーとして活躍する、オカモト"MOBY"タクヤさん。MLB通としても有名でメジャーリーグ中継で解説を務めた経験も持つ彼に、野球との出会いや、音楽との関わりについて聞いた本インタビュー。後編では、大人になったからこそ感じる「野球をすること」の面白さや、ミュージシャンならではの視点で野球の魅力を話してもらった。


■自分の身体と向き合いながら野球をすることが、面白い

 
──高校卒業後も野球を続けたのですか?
 
はい。大学は、早稲田大学第二文学部に入って。「野球(経験者のみ)」っていう体育の授業があったんですよ。その授業で出会ったのが、SCOOBIE DOのボーカル、コヤマシュウでした。初回の授業は教室でガイダンスのはずが、ボクたち2人だけやる気まんまん過ぎて、間違えてグラウンドに行ってしまって(笑)。そこで「ぜんぜん人来ませんね~」なんて話していたら、お互いにメジャーリーグと音楽が好きだっていうことで盛り上がったんです。その後、「メジャーリーガーのコスプレをしている草野球チームがあるらしい」ということを知って、コヤマと一緒に入りました。アメリカからカタログを取り寄せて、通販でいろいろグッズを買うんですよ。それを着て野球をするのがすごく楽しかったです。
大学を卒業してからは仕事をしながらバンドをやって、2002年、26歳になる年にバンド活動で給料がもらえる、いわゆるプロになりまして。野球はやりたかったけれど、バンドのほうでいっぱいいっぱいで、なかなかできる感じじゃなかったんです。しばらくして、少しずつ時間に余裕ができた2005年ごろに、ミュージシャン中心で集まっていた草野球チームに助っ人で参加するようになり、そのまま加入しました。今でもそのチームでプレーしています。
 
──草野球の楽しみはどんなところだと思いますか?
 
学生時代ずっと野球をやってきて自信を持っているような人でも、草野球を始めるとみんな必ず壁にぶつかるんですよね。たとえば、硬式でやってた人が打球を飛ばせなくなったり、バウンドが合わなくて守備に苦労したり。反対に、ボクのように軟式出身で実績のない人間も、元プロ選手からヒットを打てることもある。草野球では、歳を重ねれば重ねるほど学んでいくことが多いんです。それまで常識だったと思っていたことが、どんどん邪魔になってくるというか。
 
──いい意味で、自分の中で凝り固まっていたものが壊されるのですね。
 
そうなんですよ。身体の動きも変わってくるから、試行錯誤が必要になるんですよね。だから、ボクも事ある度にバッティングフォームを変えたりしていて。自信を持ってようやく掴んだフォームが、しばらくするとスイングスピードがちょっとずつ遅くなっていって、タイミングが合わなくなったりするんです。こんなふうに、身体と相談しながら野球をするっていうのがすごく面白いですね。自分なりに時間が許す限り練習したり、体力づくりをしたり。40歳を過ぎた今だからこそ、お金もビジネスもいっさい関係なく燃えられることがあるっていうのが、本当に自分の人生にとってかけがえのないことなんだなと感じています。


■地域に根づくカルチャーとして

 
──ミュージシャンであり、MLBファンのMOBYさんだからこそ感じる野球の魅力はどんなところだと思いますか?
 
メジャーリーグは、アメリカ合衆国にとって大事な歴史や文化のひとつであって、単なるスポーツではないんですよね。アメリカの国民的娯楽と呼ばれていて、合衆国憲法の次に古い決まりごとが野球のルール、とも言われているんですよ。それくらいアメリカの歴史と密接につながっている。ポップソングでも野球をネタにしている曲が沢山あったり、歌詞に選手やチームの名前が出てきたり。反対に、野球と照らし合わせることで見えてくる音楽の歴史背景もあるし。ボクは2017年にDAZNで1年間メジャーリーグ解説をやらせてもらう機会を頂いたんですが、選んで頂いた理由のひとつとして、MLBを語るうえでは野球の技術面や試合展開だけでなく、音楽やカルチャーも同時に話すことを求められたからでした。野球の試合中にスタジアムで流れる曲には、地域の歴史が現れていることが多くあります。だからこそ、MLBを総合的に楽しんでもらえるよう、ミュージシャンのボクが解説をやらせてもらえたんです。それくらい、アメリカにとっての“ベースボール”は、文化なんですよね。
 
──今後の日本の野球に対して持たれている期待などはあるのでしょうか?
 
ボクは決して「日本もアメリカみたいになってほしい」と思っているわけではなく、それぞれに良さがあると思っています。そのうえで、日本の野球も、これからもっと文化として根付いていったらいいな、という思いはあります。たとえば、球団の歴史や地域との関わりをさらに大切にしていけば、よりいっそう深く愛着を持つファンが増えるはずです。地元のチームを愛しているミュージシャンとコラボしたりするのもいいですね。「チーム」と「地域」と「ファン」が、心からお互いを“大好き”と思えるような文化になっていけばいいなと思います。



#プロフィール

オカモト"MOBY"タクヤ
4人組バンド「SCOOBIE DO」のドラマーで、マネジメントも担当。MLBファンとしても有名で、動画配信サービス「DAZN」でのMLB解説経験も持つ。MLB雑誌『Slugger』を始め野球関連コラムの執筆や、野球と音楽がテーマのラジオ番組「NO BASEBALL, NO LIFE.」(FMおだわら)でのMCも務めている。

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