【2021年バスケ界を総括】新たな歴史を刻んだ、バスケット日本代表の快挙
2021年の東京五輪で、日本バスケットボール界は歴史的な瞬間を迎えた。女子日本代表が銀メダルを獲得したのだ。五輪のメダル獲得は、男女を通じて初めてだった。
日本は16年のリオデジャネイロ五輪でベスト8入りしており、17年に就任したトム・ホーバスHC(ヘッドコーチ)のもとで「金メダル」を目標に掲げていた。ところが、コロナ禍による五輪の延期で、リオ五輪主将の吉田亜紗美と大崎佑圭が引退する。さらに、193センチのエース渡嘉敷来夢をケガで欠くことになった。
東京五輪には12か国が参加し、4か国ずつ3つのグループで総当たりのリーグ戦を行なう。上位2か国と成績上位の3位2か国が、準々決勝へ進出する。
不安材料もあるなかで迎えたグループリーグ初戦で、日本はリオ五輪ベスト4で世界ランク5位のフランスに74対70で競り勝った。第2戦は五輪6連覇中のアメリカに敗れるが、第3戦でナイジェリアを100点ゲームで撃破する。予選リーグをアメリカに次ぐ2位で通過した日本は、準々決勝に進出した。
ベルギーとの準々決勝では、残り16秒まで83対85でリードされていた。ここで林咲希が3ポイントシュートを決める。逆転勝利をつかんだ日本は、史上初のベスト4に進出した。
フランスとの再戦となった準決勝は、第1クォーターこそリードを許すが、第2クォーターで先行する。チームが強みとする3ポイントシュートを11本決め、87対71で試合終了の笛を聞く。世界ランク10位の日本は、ついに決勝の舞台に立つこととなった。
五輪で54連勝中の絶対王者アメリカとのファイナルは、つねに追いかける展開となる。第2クォーターは25対27とほぼ互角の攻防を繰り広げたが、最終的には75対90で敗れた。それでも、17点差をつけられたグループリーグより点差を詰めた。
ホーバスHCは「厳しい練習を頑張って、うまくなり、こういう結果が出た。本当にうれしい。バスケットの女子はこれがスタンダードになる。もっとレベルアップしていくと思う。このチームにはスーパースターはいないが、スーパーチームです」と、選手たちのプレーを讃えた。スピードとハードワークを磨くことで高さ不足を補い、3ポイントシュートを得点源としたスタイルは、銀メダルにふさわしいものだった。
キャプテンの高田真希は、「本当に楽しかった。金メダルを目ざしていたので悔しいですが、銀メダルを誇らしく思います」と笑顔を浮かべた。準決勝で五輪記録となる18アシストを記録し、オールスターチームに選出された町田瑠唯は、「この12人しかできないバスケットができました。全員で戦うことができて、最高の舞台になりました」と、白い歯をこぼした。
決勝で4本の3ポイントシュートを決めた本橋菜子は、ケガからの復活でつかんだ夢舞台だった。20年11月に右ひざに大ケガを負ったが、懸命のリハビリで五輪に間に合わせたのだった。
「ケガをしてからここまで来るのが本当に長くて、思い出しただけでも涙が出るぐらいですが、たくさんの人に支えてもらって、一緒に乗り越えることができました。平坦な道ではなかったけれど、あきらめずにここまで来られて良かったです」
笑顔で大会を駆け抜けた12人が、日本バスケットボール界に新たな歴史を刻んだのだった。
大会後の9月には、ホーバスHCが退任し、恩塚亨アシスタントコーチがHCに昇格した。9月下旬開幕のアジアカップには若手中心の編成で臨み、5大会連続6回目の優勝を成し遂げた。赤穂ひまわりが大会MVPに選ばれ、宮崎早織がアシスト王に輝いた。ふたりはオールスター5にも選出された。
24年パリ五輪へ向けて、女子は順調なスタートを切っている。
一方の男子は、東京五輪で厳しい現実を突きつけられた。
大会前の期待値は高かった。1976年以来の出場となるチームには、NBAでプレーする八村塁と渡邊雄太、オーストラリアのメルボルン所属の馬場雄大が加わっていた。メディアは“史上最強”とも“最強布陣”とも呼んだ。
グループリーグ初戦は、世界ランク2位のスペインと対戦した。第1クォーターを14対18で終え、第2クォーター中盤に26対26と追いつくが、タイムアウト後にギアを上げた相手を止められず、28対48と突き放されてしまう。第3クォーターは28対21、第4クォーターは21対19と点差を詰めていったものの、77対88で黒星発進となった。日本は八村が20得点、渡邉が19得点を記録した。主将の渡邉は「第2クォーター終わりに大きく離されてしまったが、最後まで諦めることなく戦い続けたのはよかったと思う」と前を向いた。
2日後のスロベニア戦では、八村が獅子奮迅の活躍を見せた。チームハイの34得点を記録したが、相手エースのルカ・ドンチッチらを止めることができず、81対116で敗れた。
アルゼンチンとの第3戦は、連敗同士の激突となった。世界ランク4位の相手は19年W杯準優勝の実績も持つが、日本は第2クォーターまで38対46で折り返す。第3クォーター開始早々には4点差まで詰め寄るが、ここからが遠かった。第4クォーターではこの試合最多の24得点を稼いだが、アルゼンチンにも32得点を喫し、77対97で力尽きたのだった。
世界ランク45位の日本にとって、グループリーグはすべて格上との対戦だった。結果は出なかったが、渡邉は「まだまだ成長しなければいけない部分があるが、全員が力を出し切った」と振り返った。八村も「負けてしまったが、僕らはまだまだ若いチーム。こういう経験を積むことが次につながっていく」と、今後を見据えた。
フリオ・ラマスHCは東京五輪を最後に退任し、女子のHCだったホーバス氏がチームの先頭に立つこととなった。
新監督の初陣は、11月下旬の23年ワールドカップアジア1次予選だった。八村らの海外組が不在のなかで世界ランク28位の中国を仙台に迎え、2連敗を喫した。
ホーバスHCは「サイズアップよりペースアップ」と語り、高さ重視ではなくスピード感のあるバスケットの構築に着手した。新戦力の発掘にも積極的だ。新たな指揮官は素早い攻守の切り替えとハードワークを徹底し、23年のW杯と24年のパリ五輪出場を目ざす。
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