「Alpen TOKYO×MIZUNO BASEBALL」にて、球界最年長・石川雅規投手(東京ヤクルトスワローズ)が野球への情熱とファンへの深い感謝を語る
東京・新宿で開催された「Alpen TOKYO×MIZUNO BASEBALL」イベントに、球界最年長の東京ヤクルトスワローズの石川雅規投手(43)が登場。約35人のファンと共に、約1時間にわたる熱い交流が行われた。
MCに紹介された石川投手は、注目を集めながらステージに登場し、お客様に向かって語りかけた。「皆さん、こんにちは。今シーズンは東京ヤクルトスワローズとして5位という結果に終わりました。2年連続セリーグ優勝し、今シーズンは3連覇を目指しましたが、うまくかみ合わなかった部分もありました」とシーズンを通しての感想を述べた。
44歳を目前に控えたベテラン左腕は、速球派が増える中で独自のスタイルを貫いていると言う。
「ピッチャーの最大の武器はストレートの速さですが、私は昔から速い球を追い求めてきたわけではありません。今、速い球全盛の中で、真逆を行ってやろうと思っています」と語り、会場からは拍手が沸き起こった。
今季の最速は137キロ。球界でも遅い部類になるが、通算185勝の実績が「速い=勝てる」ではないことを証明している。石川投手は技術、経験、間の全てを使いこなし、長きにわたってプロの世界を生き抜いてきた。
「球は遅いですが、真っすぐを投げるのは楽しいんです。130キロでも、バッターが差し込まれる瞬間が一番楽しいですね」と投球哲学を語ってくれた。
石川投手は、日頃のトレーニングについても言及した。ラダートレーニングとアジリティを増やし、横浜DeNAベイスターズの三浦監督のアドバイスを取り入れているようだ。
「僕も44歳になりますが、自分の体を実験台にして、色々試しています」
イベント中に、自身の投球フォームを披露。足を大きく上げる昔のフォームから、現在はコンパクトなフォームに変更。「ダーツを投げるイメージで、高めの速い球に磨きをかけています」と語る。
ストレート、シンカー、チェンジアップの握り方を披露し、その器用さを観客にも共有。
「三振は少ないですけど、三振を狙いにいくときはあります」と自信を覗かせる。
MCからも、「現役の時にこれだけ言語化できる選手ってなかなかいないですよ。若い選手からアドバイスを求められるからですか?」と質問が飛んだ。
「若い選手も聞いてくれますね。トレーニングも含めてですけれど。会話はよくするのでそういう意味では、言語化することをすごく意識して頑張って考えています」
身長167cmの左腕は、ファンの前で身長にまつわるエピソードも披露。「身長が168.9cmになったことがあるんですが、それはある日の朝実施された健康診断での身長測定で少し高くなっていたんです」と笑いを誘った。
トーク終盤では、22年前のドラフト体験を振り返ってくれた。当時、自由獲得枠が存在し、石川投手は巨人入団が確実視されていた。自身も「秋田県の野球中継は巨人戦がメインだった」と語り、その影響からか巨人への気持ちが傾いていたことを明かした。
しかし、シドニー五輪の予選で、東京ヤクルトスワローズのレジェンド 古田敦也氏が石川投手の球を受けたことが、進路を変えた。古田氏のリードに感激し、「初めて受けてもらった感じがしない」との言葉に心を動かされたと明かした。さらに、石川投手の自信作であるシンカーを、NPBで当時活躍していたハッカミーよりも優れていると古田氏に評価され、これが石川投手の東京ヤクルトスワローズ入りを決意させる大きな要因となったようだ。
プロ22年目の今シーズンは13試合に登板し、2勝5敗という成績だったが、次のシーズンに向けて、『歳を重ねるごとに先発の機会は少なくなっていますが、来シーズンはさらに力をつけて戻ってきたいです』と雪辱を誓っている。
続いて質問コーナーに突入。ある子供の質問では、「速い球を投げるにはどうしたらいいですか?」
石川投手は笑いながら質問に回答。「それは僕も知りたいですね(笑)。例えば、重いものを持つとき、手だけでは難しいですよね。足から力を入れると持ち上がる。それと同じで、投げるときには足の力を使うことが大切です。ステップを意識して投げることを試してみてください」
イベントの終盤では、10人の幸運な参加者にサインボールやTシャツが当たる抽選会が行われた。さらに、サイン入りTシャツやボールに当選しなかった参加者にも、石川投手のあたたかな心遣いでサイン色紙が手渡された。これにより、参加者全員にとって、今回のイベントは特別な体験となったであろう。
イベントの締めくくりとして、石川投手からの心温まるメッセージが贈られた。
「本日は、この短い時間を共に過ごしていただき、深く感謝申し上げます。Alpen TOKYOのスタッフの皆様、ミズノ様をはじめ、今日ここに集まってくださった皆様と、クリスマスを前に楽しいイベントに参加できたことを大変嬉しく思います」
「確かに今シーズンは、東京ヤクルトスワローズとして、また個人としても、思い描いていたような結果にはなりませんでした。しかし、後悔するだけでは何も始まりません。私たちにできることは、グラウンドでの成績をよりよいものにすることだけです。現在、チーム全体が一丸となって、来シーズンに向けてのトレーニングに力を注いでいます。監督をはじめ、スタッフ全員が一生懸命努力していますので、その成果が数字や成績として現れることを願っています。これからも引き続き応援をよろしくお願いします。今日、この素晴らしい時間を皆様と共に過ごせたことに心から感謝しています」
年末の暮れに開催されたAlpen TOKYOでのこのイベントでは、石川雅規投手の豊富な経験と知識がファンと共有され、心温まるトークショーとなった。
引き続きスペシャルトークイベント後に行われた、アルペングループマガジンによる石川雅規選手の独占インタビューをお届けします。
◆石川雅規インタビュー「大好きな大先輩・山本昌さんの219勝を超えていきたい」
――本日はお疲れ様でした。イベントに参加しての感想をお聞かせください。
通常、店内でイベントを行うことは少ないですが、私自身もオフシーズンでなければこのようなイベントに参加する機会がありません。ですから、球場以外の場所でファンの皆さんとお会いできたことは、非常に新鮮で楽しい経験でした。
――Alpen TOKYOの店舗や野球コーナーについてどう思われますか?
都心には大型店舗が少ない中、私は個人的に何度もAlpen TOKYOを訪れています。店内は非常に広く、各フロアには様々なスポーツの豊富な商品ラインナップがあります。訪れるといつも楽しい時間を過ごせるので、一日中とは言いませんが、足を運ぶ価値のある素晴らしいスポットだと思います。
――石川選手は学生時代にスポーツショップに特別な思い入れがありましたか?
私は特にグローブを見に行くのが好きでした。当時、学生だったのでグローブを購入する余裕はありませんでしたが、様々なグローブを手に取って楽しんだり、友達と意見を交わしたりしていました。秋田には多くの店舗はありませんでしたが、よく訪れていました。また、中学時代にはスキーもしていたので、スキーウェアやスキー板を父と一緒に買いに行った思い出があります。
――石川選手の野球用品へのこだわりや、ミズノ社の野球用品について教えてください。
子供の頃から、ミズノのグローブやスパイクに憧れを抱いていました。プロになってからも、ミズノと協力し、時代に合わせた細かな変更を加えています。子供の野球人口が減少する中、ミズノは使いやすく長持ちする商品を提供し、価格も手ごろで選択肢が広いところが強みだと思います。私自身、プロとしての要望にもすぐに対応してくれるので、大きな安心感があります。
――こちらのグローブについて、特別な思い出はありますか?
このグローブの形やサイズ感がとても気に入っています。僕は体が小さい方なんですが、プロの選手としてはグローブが大きくないと、ボールの握り方の癖がバレやすいんです。でも、このグローブは小さくても深く作られていて、そのサイズ感と感触が大好きです。長年使っていますが、形はほとんど変えていません。実は使い込むうちに少し小さくなってきたのですが、それでも非常に使いやすいですね。
――今日、着ているミズノ製のアパレルも似合っていますね。着心地についてはどうですか?
今日着用しているアパレルは動きやすさとおしゃれさが融合しているように感じます。今日、着ているような色は普段着ないですが、流行っていますよね。動きやすさが一番大切ですが、かっこよさも追求したいですね。最近のミズノは昔と比べておしゃれになっていると思います。選手からもそのような評価を頂く機会が増えましたように思います。子供たちも見た目を重視すると思うので、個人的にはミズノのアパレルをオススメしたいですね。
――アルペングループマガジンは多くの部活生も見るサイトです。石川選手が部活生時代に戻れるとしたら、どんなトレーニングに重点を置きますか?
現代は情報が豊富ですが、私が子供の頃はインターネットやYouTubeがなく、本で(投球フォームの)分解写真を見て投げ方を学んでいました。映像を見るのも良いですが、一流の選手の映像を見ても、すぐに真似できるわけではありません。一流選手になるまでの過程が重要で、その過程で練習量をこなす必要があると思います。もし部活生時代に戻れたとしても、一定量のトレーニングを行いたいです。
その中で多くの情報の中から、自分に合ったものを選択することが重要です。アンテナを張り、いろいろなトレーニングを試すことをおすすめします。一方で成長期に行うことが良い時期もあると思いますが過度なトレーニングは避け、怪我をしないことも重要です。技術や情報が進歩している現在でも、自分に合った継続可能なトレーニングを見つけ、それを続けることが大切です。
――今年はWBCの優勝により、日本全体が野球で盛り上がりました。今後、日本野球界がさらにレベルアップをするためには、どのような取り組みが必要だと感じますか?
本当にWBCでの活躍は僕ら野球選手にとっても刺激になりました。仲間が世界と戦う姿を見て、私たちもテレビで熱心に応援しました。これによりプロ野球や野球の人気が非常に高まったと思います。今後も、その熱を保ちつつ、さらにプロ野球、そして野球全体を盛り上げていく必要があると思います。少子化の影響で子供たちが野球をする機会が減っていますが、野球の楽しさを伝えていくことが重要だと思います。イベントを通じて、野球は単にプレーするだけでなく、楽しいものだということを伝える活動を行いたいです。
あと野球にはコストがかかる部分もありますが、まずは楽しいと思ってもらえることが最も重要です。最初はティーボールから始め、ボールを打つ楽しさや投げる楽しさを知ってもらう機会を増やすことで、勝ち負けにこだわらない、野球の楽しさを伝えることが大事だと感じています。見るのも良いですが、実際にプレーすることの楽しさも伝えたいですね。
――最後の質問です。今後の石川投手の野球における目標を教えてください。
私の個人的な目標は200勝を目指すことです。歳を重ねるにつれてトレーニングも厳しくなっていますが、200勝という目標があるからこそ、体も気持ちも動かされています。ただ200勝を目指していると、その途中、192勝くらいで引退する可能性があるので、あえて220勝ぐらいを目指さなければならないと思っています。山本昌さんが219勝を達成しているので、大好きな大先輩に近づけるように、できればこえられるように頑張りたいと思っています。