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football2019.04.09

どのようにして世界のサッカートップクラブに入団するか

今年に入り、海外移籍に関して日本サッカー界を驚かすようなニュースがいくつか飛び込んできております。川崎フロンターレ所属の板倉選手がマンチェスターシティへ(その後ローンでオランダリーグへ)、柏レイソルユースの小久保 玲央 ブライアン選手がポルトガル・ベンフィカへ。
 
久保選手がバルセロナへの入団間近だったという事実や、レアル・マドリードの下部組織にもピピ中井選手が所属していたり、そしてPSGの下部組織にも日本人選手が加入したりと本当に今まででは考えられなかったような大きなクラブへの入団が相次いでおり、そしてその選手年齢も近年徐々に低下しているような傾向にある気がします。
 
この裏には一体どんな動きがあるのか、そしてこの動きを手にするためにはどのようなアクションが必要なのかという「夢を手にする」事を整理してみたいと思います。
 
歴史を振り返ってみると「欧州のクラブに移籍」という言葉で連想されるのは、本当に多くの選手がいるのですが、奥寺―ドイツに始まり、風間―ドイツであったり、キング・カズこと三浦カズ―イタリア、大きく切り開いたのは中田―イタリア、香川―ドイツ・イングランド、本田―イタリアあたりではないかと感じています。
 
世界的な選手が集まり、日本人選手の活躍は難しいのではないかと言われていたイングランドでも岡崎選手が活躍してチームを優勝に導くなど、本当にJリーグが始まった当初では想像することですら難しいことが成し遂げられました。しかし、これらはみな完成された選手が成し遂げているという点が共通にあります。
 
昨今の驚くようなニュースは、まだまだ日本国内でも選手としての実績もこれから積み上げていくような、まして高校生年代は本当にどのようになるのか、将来は全く見えていない状況での動きとなっており、この点が大きく異なります。単純にこう言ったニュースを目にして思うことは、「どのようにしてその道をつかんだのか」ということだと思いますので、これを細かくみていきたいと思います。

まず一番わかりやすいのはヨーロッパのビッグクラブの下部組織に入団して結果を残し続ける事になります。結果を出し続ければメッシのように自動的に上がっていくことができます。これは日本のJリーグの下部組織と同じシステムであるとみてよいでしょう。幼少の頃からそのクラブのメソッドを叩き込まれる形になります。
 
しかしこれには一つだけ超えなければならないハードルがあります。近年、国際サッカー連盟(FIFA)が未成年選手の国際的なサッカー移籍を問題視していることもあり、知っておかなければならないことがあります。それは原則として18歳未満の子供の国際移籍を禁止し、例外的に認める場合として下記の3つのケースを規定しているという点です。
 
(1)両親がサッカーとは関係ない理由で移住する場合
(2)隣国同士で、選手の自宅、クラブの所在地がとも国境から50キロ以内にあること
(3)選手が16歳~18歳の場合は、移籍先と移籍元のクラブがともに欧州連合(EU)か欧州経済領域(EEA)に属しており、教育やトレーニングを十分に与えることができる状況にあること
 
メッシのケースは(1)に当たるように見えますが、移住した本来の目的がサッカーの為だととらえられた場合、極めてNGに近いということがわかると思います。当然このFIFAの動きはアフリカを中心とした半ば人身売買といっても良いような案件が増加したことを受けての動きであり、その見せしめではありませんが、大きなクラブの有名な選手であってもその対象になるという意味が大きいと感じる部分もありますが、当然クラブ側は反論しますよね。レアル・マドリードでもフランスの英雄ジダンの家族が目をつけられており、ジダンの場合、息子は幼少の頃からスペインで育ち、むしろフランスでの生活が本当に短いことを考えると、これがFIFAのいう項目にあてはまるかと言われれば、それは違うと声を大きくしたくなるのも当然であるかのように感じます。実際のところ、ジダンの息子は(スペインで育ったので)「フランス代表になる意味がわからない時もある」と発言したとかとか、していないとか…。

まずここまでで明確になっていることは、「16歳を超えているかどうか」という部分になります。16歳以上であれば、条件が付きますが国際移籍は可能で、18歳を超えていれば基本的にはビザの問題があるだけで、行きたいチームに認められれば良いだけとなります。
そして認められるには、テストを受けに行くなど何らかの形で見てもらい、“この選手がほしい”と思わせることができれば十分に欧州ビッグクラブへの移籍・加入は可能になります。
 
私が知っている限り、ヨーロッパの舞台である程度結果を残すことができればその道は比較的視界良好であると言えます。言い方を変えれば、Jリーグ所属の選手もどれだけヨーロッパクラブチームに売り込むことができるのかということになります。もう少し掘り下げると、そのカギとなるのが仲介人なのかどうかという話でもあります。
 
一方で未成年の場合も現所属チームの問題はありますが、とにかくヨーロッパのチームへの売り込みがカギとなるように感じます。“すべては所属チーム次第である“と言ってしまえばそれまでになってしまうので、それをどのようにこじ開けるのかを考えてみましょう。基本的には”如何にしてヨーロッパビッグクラブに自身の存在を知らしめるか”ということになりますから、ヨーロッパのクラブと練習試合をするなどという機会は、まさに絶好のチャンスであると言えます。そうなると、そういったシチュエーションに出会う必要があります。
 
これを手にするにはやはりJクラブもしくは同等レベルのクラブでそれなりの活動を行っているクラブへ所属して試合に出場することが求められます。まさにヨーロッパで行われる合宿参加や代表・選抜チームでの遠征などで結果を出すことが近道となります。
 
またヨーロッパビッククラブが運営しているキャンプやスクールなどに参加するのも一つの方法ではあるとは思いますが、チームの名前を使用しているだけのものや、中にはイベント主催者のビジネスになっているだけのものなども存在していることは十分に把握しておく必要があります(未成年選手の青田買いを禁止しているので表立ってのスカウティング活動は実質できないことにはなっています)。
 
こういったことは日本のみならず世界中で起きていると聞いています。この様に文章を書いていて改めて感じるのは、結局はその選手が秀でているかどうか、というところに言及される気もします。どんな環境であれ結果を出せば多くの人の目につくわけで、そのレベルの高さが評価されれば必然的に多くの関係者の目に留まることになります。
 
そのチャンスがないと感じれば自分自身でその機会を作りだす必要があるということなので、一番手っ取り早いのはヨーロッパの行きたいクラブのある国で活躍することではないでしょうか。さらに言うと単純にそれをやればいいじゃないかということになります。18歳でそのチャンスを手にするために16歳ぐらいからヨーロッパに行くなどして言葉を覚えて、サッカーをして、ということになりますよね。

これを留学という形で行うのか、個人の力でこじ開けるのかということにもなるかもしれません。言葉は、当然ですが使えないよりかは使えたほうが有利に決まっていますし、環境変化への順応に慣れていればそのほうが遥かに良いに決まっています。日本の現状はヨーロッパからすれば地球の反対側の小さな小島です。言葉は通じないけれども経済は強い国というイメージが強いと思います。
 
これを打破するだけの力が選手もしくは仲介する人間に持ち合わせているか、ここが大きな鍵になると考えています。幼少のころからヨーロッパのビッグクラブに目をつけもらい、国際移籍が認められたタイミングで海を渡る、これが一番の近道だとすれば、今日本に生まれ育ったヨーロッパのビッグクラブでプレーをしたいという夢を持つ若い選手がやらなければならないことは、自身の売り込みと言葉の習得なのかも知れません。
 
自身の売り込みという点では、現在は簡単に自分の情報を発信・共有することのできるデバイス(PCやスマートフォンなど)を世界中の誰もが保持しています。そのデバイスから自分を世界に向けて発信する、そのように考えると、この先の若年層の海外移籍はもっと増えてもおかしくはありません。また少子化で子供の数が少なくなってきていることを考えると、チャンスは徐々に増えてきているのかもしれません。日本人選手が世界中で活躍するその日こそ、ワールドカップでの栄冠を手にすることができる日なのかもしれません。


【プロフィール】
酒井浩之(さかい ひろゆき)
1979年愛知県生まれ神奈川県育ち
日本大学法学部卒業後、主に広告マネジメントやスポーツ領域における商品開発などを担当。
2015年3月にレアル・マドリード・スポーツマネジメントMBAコースに日本人として初めて合格し渡西。
2016年5月にインターンとしてレアル・マドリードに入団。その後日本人マーケッターとして初めてレアル・マドリードと正式に契約。日本に向けたデジタル・マーケティングを中心に担当するなど日本市場に向けたマーケティング活動に従事。
2017年7月に退団し、その後帰国。現在は株式会社Hiro Sakaiを立ち上げ、スポーツを活用したビジネス・コンサルティングを中心に多岐にわたるスポーツビジネスを構築中。

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