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football2020.02.20

『Jリーグ開幕!2020の主役は誰だ。例年にまして見逃せない期待感。』

実を言うと、ここ数年、ヨーロッパのサッカーを見ようという欲求が急速に薄れてきている。

見なくなった、というわけではない。子供の頃から大ファンだったブンデスリーガのボルシア・メンヘングラッドバッハというチームの試合は、スケジュールが許す限り見る。チャンピオンズ・リーグも……まあ、見ている。ただ、かつてのように「見ずにはいられない」というわけではなくなった。スポーツライターを名乗っている以上、一応は見ておかなければ……といった、以前を思えば信じられないような消極的な自分がいる。一時期は最低でも週5~6試合は寝る間を惜しんでかぶりついたものだったのだが。

なぜヨーロッパのサッカーを見なくなったのか。理由ははっきりしている。というか、なぜ昔は海外のサッカーに熱狂していたかといえば、そこにしか熱狂できるサッカーがなかったから、だった。サッカーは、贔屓のチームがあればプレーのレベルになく興奮できるスポーツだが、贔屓のチームがない場合は、レベルが高くなくては興奮できない。そして、これといった贔屓のチームがないJリーグは、プレミアやブンデス、セリエといったリーグに比べると、明らかに物足りないリーグだった。

それが変わり始めたのは、川崎フロンターレが台頭し始めたころだったか。

自分たちが主導権を握って攻めることに徹底的にこだわった当時の風間監督に率いられたフロンターレのサッカーは、Jリーグの中にあってはもとより、世界のトップカテゴリーのチームと比較しても遜色がないぐらい魅力的だった。もちろん、ストライカーの決定力や、ちらちらと露呈する精度と意識の低いプレーなど、物足りない面はいくつもあったが、攻めて攻めて攻め倒してやろうという気概は、圧倒的に爽快だった。それこそ、以前は1シーズン全試合を見るほどのめり込んだ前世紀のバルセロナと比較してみようか、という気持ちになるほどに(もちろん、かなりの大差でかなわないのだけれど)。

さらに、2年前にはヴィッセル神戸にイニエスタが加わった。折も折、彼が所属していたバルサは急速にグァルディオラ時代の魅力を失い始めていたこともあって、バルサ観戦のために割かれていた時間の何割かが、ヴィッセルとJリーグの試合に向けられた。するとどうだろう。バルサ時代とはまた違ったイニエスタの魅力が味わえるではないか! まさか、あんなにも得点に対して貪欲なイニエスタが見られるなんて!

かつては深夜にチャンネルを合わせるか飛行機で飛んで行かなければ味わえなかったクラスの興奮が、いまや日本でも体験できるようになった。そんなわけで、40年以上続いてきたわたしの中のヨーロッパ熱は──いまのところ──ちょっと落ち着いているのである。

わたしの「楽しいサッカー見たい欲」を満たしてくれるようになったJリーグには、昨年、また新たな魅力が加わった。おそらくは近い将来ヨーロッパから引き抜かれるであろうポステコグルー監督に率いられた、横浜Fマリノスである。次から次へとアタッカーがわき出てくるそのサッカーは、ヨーロッパの強豪と比べてもほぼ遜色ないといえる。

しかも、強豪と弱小の格差が歴然としてしまったヨーロッパのリーグに比べ、Jではまだまだ番狂わせが多い。ゼロックス・スーパーカップを見る限り今年もマリノスは相当に強いが、ヴィッセルを初めとしたライバルの底上げも確実に進んでいる。手垢のついた表現で申し訳ないのだが、優勝争いの行方は、例年にもまして混沌としている。

2/21に開幕するJリーグ。当たらないのを前提で予想をするならば、強いマリノスと、強くなりつつあるヴィッセル、強かったフロンターレの3チームを中心に、安定のアントラーズ、駒の揃ってきたガンバあたりがいわゆる本命筋か。破壊的な攻撃力でJ2を制したレイソルも面白いし、世界的な注目を集めるキング・カズの横浜FCも注目を集めるだろう。シーズン序盤は、東京オリンピックの選考レースという側面も持つ。

というわけで、やれ佐々木だ奥川だと騒がれているプロ野球に比べると地味ではあるが、今年もJリーグはなかなかに面白い。いよいよ、ヨーロッパのサッカーを見たいという欲求が減ってしまいそうである。

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