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running2020.02.19

ヴェイパーフライ規制論争(いわゆるナイキ厚底シューズ論争)について総括【後編】。他のブランドシューズは淘汰されるのか?

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前編ではWorld Athleticsのレギュレーションについてと、ヴェイパーフライ規制論争の根拠について、中編ではヴェイパーフライネクスト%について語らせていただいた。後編ではそれを踏まえて上で、他のブランドシューズの今後についても筆者なりの視点で語っていきたい。


<では、他のブランドシューズは淘汰されるのか?>

すでに多くのブランドが“ヴェイパースタイル”の厚底シューズの発売を予定しているが、ヴェイパーフライに追いつくことは、アスリートを抱えるブランドのまさに義務となった。

しかも、もし東京五輪をはじめ、国際大会で4月30日以降アスリートに使ってもらうには、新基準が設立したことによって、それまでにリリースして、誰もが手に入れらる状態を作らなければならなくなった。

ほとんどのブランドで5~6月ぐらいにカーボンヴェイパースタイルのモデルがリリースラッシュの予定であったが、前倒しが必要となったというわけだ。

がっつりヴェイパーフライと四つに構える方法もあるにはある。しかし、これは、上述要素を含めても、かなりハードルが高いと言えよう。一番困るのは、これから発売される厚底レーシングは、すべてヴェイパーフライと比較され、評価されることになるであろう。

さらに、日本の場合、トップランナーでは、ヴェイパーフライのほぼ一択になっていくことも必然だと書いた。

でもトレーニングでは違う。

ちなみに、わたし(筆者)はレース以外ではヴェイパーフライを履かない。

単純に、あれだけのソフトシューズを多用することは、全体的なバランスを体でとり続けることにもなりかねない。それが体のコンディション不良に結びつき、怪我や不調に陥ることも考えられるからだ。

また耐久性の問題もある。一般的にはとても高価なレーシングシューズであるし、トレーニングではこれ、テンポアップではこれ、10K以下ではこれ、と言った履き分け、使い分けは、アスリート、市民ランナーであれ、“このシューズを履きたい”という要望を持つくらいのランナーなら、それはマストだ。

メーカーは、新基準に合わせて、なんとか帳尻合わせて発売にこぎつけることもひとつの選択肢だが、すでにリリースが予定されているものの付加価値を高めていくことも重要な作業。

例えば、年末に発売されたデサント ゲンテンのような薄底に特化したブランドは潔い。ちなみに、薄底は無くならない。結局、ヴェイパーフライはテンポアップシューズ、自分の足の接地感を高めるときには薄底も大事な選択肢だ。

デイリーでは安定感がある厚底ホカオネオネ ボンダイ だって履きたい。トレーニングでテンポアップするときにはアディダス アディゼロジャパン の耐久性も必用だ。

履き分け、使い分けを考えたときに、みんながみんなヴェイパーフライだけではないということだ。ナイキだってその用途によってバリエーションを出している、そこにも是非注目してほしい。


<市販品をアスリートが履く時代に日本も変化>

今回の新基準で“市販品を履く”という明確なルールが出来たことは、わたしはとてもポジティブな要素だと考えている。

公平という観点でももちろんそうだが、“選手が履いているシューズ“といううたい文句は、何しろ分かりやすい・インパクトのある最大のマーケティングだ。

そもそもメーカーが発売している市販品はアスリートが履けないのか、そうではない。所属アスリートが、カスタムにこだわり、メーカーがその要望を聞き続けることは、印象としてそのように感じられてしまう。

そもそも、ヴェイパーフライが与えた大きなインパクトの一つは、シューズが「市販品」であったこと。

あの箱根駅伝の参入5社は、もともとジャパンレーシングという国内規格シューズを用意していたブランド、しかも、5年間、その5社以外のシューズを履いた選手はいない(ミムラボはニューバランスに含める)。それが今年の大会は、市販品を8割強の選手が履くという現象が起きるなど、その参入の障壁が事実上崩壊したわけだ。

そもそも世界のアスリートでわざわざカスタムモデルを使用しているランナーはほんのごく僅か。学生も最高のパフォーマンスが引き出されるものであれば、履いてくれることが分かった。ワザワザ日本市場向けの商品を作る必要がないわけだ。

“日本人に合う”を追い求めるのはそろそろ潮時のようだ。

人種のるつぼであるアメリカでは、大きい小さいなど多種な足型のランナーに合わなければ、セールスが滞ってしまう。”日本人に合う”から”日本人にも合う”への変化、シューズのユニバーサル化に気づくべきだ。

例えばナイキ=細い、はナンセンス、ナイキにも色々な足型、ラストがあるのが実情だ。それは、市販品であるヴェイパーフライが広がった一つの事情なのだ。

むしろ、しっかり生産管理されて何万足も作成したものには、作りムラが少ない。カスタムシューズでは、どうしても、1足、1足にその作りムラはできる。わたしは、平均的な足型の選手であれば、カスタムは不要だ、と感じる。

“選手はオーダー品”“カスタムで特別扱い”といったある種の格上げ感だけで、市販品のクオリティーが低いわけでない。

繰り返すが、それがヴェイパーフライ現象で証明されたわけだ。

フォームや感覚に“シューズを合わせる時代”から、市販品とはいえ最高性能の“シューズをうまく選手が使う時代”に変わったと言うわけだ。最高のスポーツカーを乗りこなすのは、ドライバー。ドライバーとしての能力を発揮するためのシューズをうまく使いこなし、履きわけていくアイディアが、とても重要な時代になったのだ。

これを機に、選手だけが履いている日本伝統のカスタムスタイルは今後少しずつ少なくなっていくであろう。

新基準が決定したことで、これから各メーカーの、ヴェイパーフライに追いつけ、追い越せが加速する。そして、当面はヴェイパーフライを履く選手が増え続けるだろう。

そして、先日開催された別府大分毎日マラソンや丸亀ハーフマラソンでは、意外なといっては失礼だが、新たにヴェイパーフライに履きかえたランナーの活躍がみられた。

これは、薄底で体の機能を高め、絶大な練習量を誇る日本人が、シューズマジックという掛け算に気づいたとき、このような現象が起きても、体感的にもおかしくない。

低迷していた選手や、スター選手の影に隠れた存在のランナーであれば、それはひとつのキッカケになる。筆者は49歳、レースで使用した体感として、30代のときの自分の走りを思い出すことができた。つまり、エイジランナーであれば、シューズにアドバンテージをもらうことでパフォーマンスをキープできる。

トレーニングをハードにすることで、ランナーの実力を高めることがもっとも美徳であった日本人ランナーに、シューズのマジックを掛け合わせたとき、それはシューズの実力というより、うまく道具を使っているランナーの実力の勝利と言ってもいい。そのタイムで走ったのはまぎれもなく選手なのだから。

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