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football2021.09.29

パリ・サンジェルマンは果たしてヨーロッパチャンピオンに輝くことができるのか

ご存知の通り、バルセロナの至宝と呼ばれてきたアルゼンチン代表のメッシ選手が退団・隣国フランスの パリ・サンジェルマン(以下、PSG)への移籍。突如駆け巡ったその報道は思わずフェイクニュースかと思うほどのインパクトがあったかと思います。

今回原因となったと言われているのが、欧州リーグで唯一リーガのみが採用している「サラリーキャップ制度」と言われている。これは現会長テバス氏が2013年にリーガ会長就任後に最初のタスクとして与えられたクラブの債務削減を目的とした大改革を遂げるための一つの施策だった。まさかこの様な形でリーガの抱えるスーパースターを失うきっかけにもなりえるとは思ってもいなかったことでしょう。

同時にスペイン代表のキャプテンを務めたセルヒオ・ラモスをもリーガから失う事態も起きており、リーガの衰退が囁かれつつある中、新たなスーパースターの出現を待ち望む、その様な状況であると思います。

スペインリーグが取り入れたサラリーキャップ制度は各チームが保有する選手個々の契約額、および全選手の契約年俸の総額を毎年一定の上限を設けて規定する制度である。これを設定することで法外的な金額での選手の契約を避ける意図があります。つまり、出費を抑えるルールを定めることで慢性的な赤字体質を改善しようという狙いがある、そのような解釈になると思います。スペイン政府スポーツ上級委員会(CSD)とスペインプロリーグ機構(LFP)が、各クラブが選手に支払う給与合計が総収入の70%以下でなければならないと取り決めをして導入されました。



その他にも退団に至った要因と言われることはありました。人件費の計上の問題です。スペインではカンテラ育ちの選手は人件費計上がなされなく資産として計上してよいというルールがあります。つまり、カンテラ上がりの選手をトップ契約し、契約を継続することでその選手の給与は人件費とは別のところでカウントされることになります。これは上記にて述べた70%以内に抑えるという対象とは外れてくるところであり、特にバルセロナはカンテラ上がりの選手が多かったことから、上手くサラリーキャップのルールを回避していたことになります。

レアル・マドリードの大学院の授業で一番驚いたのがこのルールを知ったときでした。チーム運営の会計の部分で一番肝になる題材として取り上げられたのです。見方を変えるとカンテラから選手を上げることで、更にその選手達がトップチームで活動し続ける限り、その給与はサラリーキャップの対象からは外れ、その余剰でより大きな投資をすることができるわけです。

更に契約更新のタイミングは、意図的に仕組まれたかのようなタイミングで奇しくも1年遅れで行われたコパ・アメリカの真っ只中。当然選手は代表チームで活動中にあり、そこにコロナウイルスが重なり、スタッフの動きが制限されてしまうという不運もありました。

一方で、よくよく情報をたどってみるとバルセロナの公式HP上では今年の6月上旬の段階でこのサラリーキャップ制度にひっかかっていることに触れており、新獲得選手の登録が簡単ではない可能性があるとしていることからすると、早期段階でこの問題に気がついていたのは確かであったと思われます。昨年の夏の時点でも、メンフィス・デパイは移籍に個人合意はしておりましたがサラリーキャップの問題があり契約に至らなかったということがありました。

ふり返ってみると早期からこの問題に気がついておきながら最終的に対応しきれず退団という形になったわけですが、タイミング良く選手を獲得したのが隣国の雄、PSGでした。スポンサーはカタールの国そのものとも言える状況のPSGではありますが、コロナ禍において今まで敷かれていた厳しいルールが一時的に緩和された一瞬だったようです。

フランスリーグのクラブに敷かれているファイナンス面のルールはフランス財務監査機関である経営監視委員会(DNCG)が厳しく取り締まっており、現地の報道によれば、「DNCGが関心を持っているのは、クラブが破産しないことだけであり、この1、2シーズンの出来事はPSGのクラブそのものにとっては全く問題にはならないのではないか」とありました。よくよく考えてみると、この夏に無理して選手を獲得してもシーズン途中の冬の移籍市場で手を打つことができれば、何ら問題にはならないということも言えます。

この夏に獲得したセルヒオ・ラモスを筆頭にアクラフ・ハキミ、ジャンルイジ・ドンナルンマと大ベテラン選手だけでなく若きスター候補選手をも多額の金額で獲得したのですが、この冬の移籍マーケットで既存の選手含めて「調整」することで最終的に財政面を調整することができます。更にコロナ禍ということで、多方面において多めに見られることは十分に考えられるわけで、こういった背景からもPSGの手のひらの上で転がされている感は否めません。むしろ一番うまく対応したクラブと言っても過言ではないのかもしれません。

リーグによって厳格に管理されている経済的な側面を理由にメッシを手放さざるを得なかったバルセロナとは対照的に、PSGはスーパーリーグ構想を当初より否定するなど、ファイナンシャル・ルールの見直しを検討しているUEFA側に対して常に寄り添う姿勢を見せてきました。

会長のUEFA評議委員という立場を利用し、これとない良いタイミングでクラブに有利に働くように画策したとも報道されており、まさに世渡り上手という対応で敵を作らず味方を増やした政治巧者とも言える動きをすることでこのコロナ禍を乗り切ろうとしているように見えるわけですが、果たして悲願とも言えるチャンピオンズリーグを手に収めることはできるのでしょうか。「フットボールはお金で買うことはできない」という言葉ありますが、この言葉通りになってしまうのか、このPSGの動向こそが今シーズンのヨーロッパフットボール界の目玉になることは間違いありません。

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