パリ・サンジェルマン来日。スーパースターの妙技よりも、楽しみにしていること
ボルシア・メンヘングラッドバッハが日本にやってくる!
信じられなかった。たまにサッカーマガジンかイレブン、もっとたまにダイヤモンド・サッカーで見るしかなかった憧れのチームが、日本にやってくる! 確か、時期的にはアルゼンチンW杯が始まる直前だったが、クライフの出ないW杯より、シモンセンやハインケスを生で見られる方がよっぽど……というか、はるかに楽しみだった記憶がある。
それが78年、中学1年生のわたしだった。
なので、すごく興味がある。令和4年の中学1年生は、どんな気持ちでパリ・サンジェルマンの来日を待っているのだろう。
W杯と日韓定期戦以外、サッカーがテレビで中継されることがほとんどなかった時代と違い、いまはいつでも、どこでも世界のスーパースターたちのプレーを動画で楽しむことができる。
もちろん、画面の中で見るサッカーとスタジアムで見るサッカーは同じではない。最近では中継するカメラの台数も増え、ひょっとするとテレビで見た方が楽しめるのでは、と思える試合も増えたが、こと感動を味わえる度合いとなると、まだまだ現地観戦にはかなわない。自分の目でネイマールを、メッシを、ムバッペを見たいという層は、間違いなく一定数いるとは思う。
ただ、56歳の食指は動かない。
中学1年生のわたしは知らなかったが、いまのわたしは知っている。この時期、ヨーロッパのクラブが日本を始めとするアジア、あるいはアメリカに遠征するのはなぜか。
興行のため、である。
先月、ブラジル代表が日本と韓国にやってきたのも、たとえ興行のためではあっても、万が一日本や韓国に負ける、手こずるようなことがあれば彼らはこっぴどい批判を受ける。個人的に大失態を犯すようなことがあれば、二度と代表に呼ばれなくなってしまうことも十分にありうる。つまり、興行のためではあったとしても、譲れない一定線をもって戦っていたのが先月のブラジル代表だった。
ところが、これがクラブチームとなれば話はまた違ってくる。
もしパリ・サンジェルマンが今回の遠征でフロンターレに、レッズに、ガンバに苦杯を喫したとしよう。賭けてもいい。ほとんど何も、変わらない。監督のクビが飛ぶこともなければ、ネイマールやメッシがポジションを失うこともない。しゃかりきになってプレーするのは、レギュラー当落線上に位置する選手たちだけである。
3年前、韓国遠征したユベントスがクリスティアーノ・ロナウドを出場させなかったことで韓国では訴訟が起きるほどの大騒ぎになったが、正直、起きるべくして起きた騒動でもあった。
まして、今年はW杯が秋口に控えている。本大会出場が確実視される選手たちからすれば、この時期に故障をすることは是が非でも避けたいはずで、日本での3試合にフル出場することはまずありえない。
何しろ、彼らは6日間で3試合をこなさなければならないのだ。
というわけで、もしチケットを買って楽しむなら、スーパースターの妙技を期待するのではなく、まだ無名の、これからのし上がってきそうな選手に注目したいわたしである。
で、思うのだ。
ありがたいことに、亡くなったマラドーナにとって日本という国はずっと特別な存在であり続けたようだった。なぜそうなったかといえば、79年、日本で行なわれたワールドユースが彼にとって若き日の最良の思い出の一つだから、だった。
いまや、テレビでならば世界のスーパースターは好きなだけ見ることができる。ゆえにプロモーターは、彼らがシーズン前にコンディション全快でプレーするはずがないことなど百も承知で日本へ連れてこようとする。近年のヨーロッパ・サッカーを支えてきた金銭的な屋台骨の一つ、ロシアン・マネーがほぼ消滅し、チャイナ・マネーの勢いに陰りが出てきたこともあり、今後、もう一度日本に目を向けるヨーロッパのクラブが増えることは十分に考えられる。
ならばいっそのこと、U-23でも20でも18でもいいから、クラブチームのインターナショナル・トーナメントを日本で開催することはできないか。世界中の名門クラブの下部組織を集めたトーナメントを、毎年、定期的に行なうことはできないか。未来のスター候補生たちに投資するのも面白いのでは、とわたしは思う。
わたしの知る限り、クラブチームによる年代別の大会はあっても、そこに大きな賞金がかけられた大会というのは聞いたことがない。ならば日本で、世界最高額の賞金(とはいっても、トップカテゴリーの選手からすればかわいい額)を用意して、世界中の才能たちに争わせる。バルサが、レアルが、リバプールが、ボカが、日本で戦う。日本からは、高円宮杯を制したチームが参戦する。
若い才能にとっては嬉しい賞金と、それにともなう日本の記憶を持ち帰ってもらう方が、よっぽど有意義ではないかとわたしは思う。
育てていけば、世界的なコンテンツになりうる気もする。
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