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football2022.07.29

メッシ、ネイマール、エムバペ率いる、パリ・サンジェルマンが魅せてくれたサッカーが持つ楽しさ

超人たちが、日本のサッカーファンを魅了した。

サッカーフランス1部リーグの強豪パリ・サンジェルマンFCが、7月17日から25日までジャパンツアーを行なった。チーム名の頭文字をとって「PSG」の愛称で親しまれるチームには、アルゼンチン代表のリオネル・メッシ、ブラジル代表のネイマール、フランス代表のキリアン・エムバペが所属している。

世界的なアタッカーが、3人同時に所属しているだけでも驚きだ。

さらに、スペイン代表DFセルヒオ・ラモス、ブラジル代表DFマルキーニョス、イタリア代表MFマルコ・ヴェラッティらを擁する。GKはイタリア代表ジャンルイジ・ダンマルンマ、コスタリカ代表ケイロル・ナバスが定位置を争う。所属選手のほぼ全員が各国代表の経験者なのだ。


日本滞在中のプログラムは、7月17日の来日会見からスタートした。当初は16時半開始だったが16時45分に変更され、出席予定のクリストフ・ガルティエ新監督、メッシ、ネイマール、エムバペが定刻になっても現われない。関係者はヤキモキしたに違いないが、こういった会見は遅れがちなものだ。

司会者が到着を告げると、トレーニングウェアに身を包んだ4人が登場する。カメラのフラッシュとシャッター音が、記者会見場を満たしていく。


最初にマイクを握ったガルティエ監督は、「ここに来ることができて、とてもハッピーです。今回のツアーでは、いいレベルの3チームと対戦することができる」と話した。PSGは7月31日にシーズン最初の公式戦『トロフェ・デ・シャンピオン』を控えており、川崎フロンターレ、浦和レッズ、ガンバ大阪との連戦は「テルアビブで行なわれるその試合に向けての大事な調整」(ガルティエ監督)との位置づけだ。


選手たちはリラックスした表情をのぞかせた。エムバペは「空港に降りた瞬間から、ものすごい出迎えを受けたよ。ホテルに着いたときもね」と声を弾ませた。


2015年以来の来日となるメッシは、「僕自身は前回の来日からかなり間が空いたけれど、日本のサッカー熱が素晴らしいことは分かっている。(シーズン開幕へ向けた)良い調整になることもね」と、落ち着いた口調のなかに静かな興奮をのぞかせた。


ネイマールは6月に来日している。ブラジル代表の一員として、日本代表とテストマッチを戦った。「僕は先月来たばかりで、日本にはサッカーファンが多く、誰もが温かくて優しく、サッカーへの愛もある。PSGの選手として来られたことに、とてもワクワクしているよ。来たる新シーズンへの最高の準備になると期待している」と、にこやかな笑顔を浮かべた。


翌18日は午前中にキッズ向けのサッカークリニックが開催され、選手たちが日本の子どもたちと触れ合った。同日夜は公式練習に臨み、会場の秩父宮ラグビー場には1万3770人が詰めかけた。

19日にはレセプションパーティーが開催され、日本のファンとの交流を楽しみつつ、金魚すくいなどの日本文化にも触れた。


選手たちが素顔をのぞかせたのは、『キャプテン翼』の高橋陽一先生によるライブドローイングショーだろう。同作品のテレビアニメは世界各国で放映されており、主人公の大空翼はその国ごとに名前を変えて子どもたちに親しまれてきた。お馴染みのキャラクターが書き下ろされていく過程に、ネイマールやエムバペが熱い視線を注いだ。

20日は川崎フロンターレとのゲームだ。


試合前のキックオフセレモニーには、今ツアーのアンバサダーを務めるキング・カズこと三浦知良選手が登場した。主審へ優しくパスをするのがお決まりのパターンだが、そこはエンターテイナーのカズ選手だ。

PSGの右端に立つネイマールにパスを出し、そのリターンパスを主審へパスしたのだ。PSGの来日を「楽しみでしかない。ワクワクしています」と話していたカズ選手の粋な演出に、スタジアムがキックオフ前から沸き上がった。

もっとも、試合は真剣モードである。ガルティエ監督はGKにドンナルンマを起用し、主将のマルキーニョス、S・ラモス、プレスネス・キンペンベが新たなシステムの3バックを形成する。前線にはメッシ、ネイマール、エムバペが並んだ。


新装後最多となる6万4922人の観衆で埋め尽くされた国立競技場は、キックオフ直後から何度もどよめきに包まれる。エムバペの爆発的なスピードが、メッシのスラローマーのようなステップが、興奮の世界へ誘う。ややスロー調整な印象のネイマールも、ゴール前の閃きでDFを困惑させる。

PSGは32分に先制点を奪った。左サイドからエムバペがクロスを入れると、逆サイドのアクラフ・ハキミがマイナスに落とす。メッシが右足を振り抜くと、DFに当たった一撃がゴールネットに吸い込まれた。


後半に入った57分には、メッシが鮮やかなチャンスクリエイトをする。左サイドのファン・ベルナトをサポートしてワンツーで突破させ、アルノー・カリムエンドのゴールを導いたのだった。

2対1でゲームを終えた試合後、ガルティエ監督は「今日がプレシーズンの2試合目。チームの方向性が見えた」と納得の表情を浮かべた。指揮官が語る方向性とは3バックの導入だ。

「色々な状況に合わせて他のシステムも考えないといけないが、我々の方向性はつねに攻撃的にプレーし、どんなチームに対しても手ごわい存在であり続けることだ」とも語り、3バックをベースに攻撃的なスタイルを構築していくとした。

その後もPSGはピッチ内で精力的にトレーニングしつつ、オフの時間にアクティビティを消化していく。ネイマールらが寺社仏閣を訪れたり、エムバペが柔道を体験したりした。さらにはテレビ番組の収録や記者会見など、選手それぞれが多忙な日々を過ごす。

川崎F戦から3日後の23日には、浦和レッズと対戦した。

ガルティエ監督は初戦から10選手を入れ替え、メッシとネイマールはベンチスタートとなった。それでも戦力的な物足りなさを感じさせないのがPSGだ。この日はMFヴェラッティや元アルゼンチン代表のFWマルロ・イカルディらが先発する。スペイン代表MFパブロ・サラビアとエムバペが前半にゴールし、76分にはカリムエンドが2試合連続弾を突き刺した。

メッシ、ネイマール、メムバペの『MNM』に注目が集まりがちだが、この日の影の主役はGKナバスだっただろう。11月開幕のカタールW杯で日本と対戦するコスタリカの守護神は、浦和の際どいシュートをことごとく弾き出し、クリーンシートを達成したのだった。

翌日は東京駅から新幹線に乗車した。空路での移動が一般的なだけに、偶然にも居合わせた一般客は驚きと戸惑いの表情を浮かべ、すぐにスマートフォンを取り出して写真や動画を撮る。選手たちは表情を歪めたりせずに、気軽に応じる。世界的スーパースターならではの余裕が感じられた。

到着後はパナソニックスタジアム大阪での公開練習だ。19時スタートのセッションには、1万7916人の観客が集まった。練習後にはS・ラモスがトレーニングウェアをスタンドへ投げ入れるなど、選手たちはこの日も気さくな一面を披露した。


ガンバ大阪と対峙した翌25日は、6対2でツアー最終戦を締めくくった。サラビア、ネイマール、ヌーノ・メンデス、メッシが前半のうちに得点を記録し、後半もネイマールとエムバペがネットを揺らす。パナソニックスタジアム史上最多動員となった3万8251人の観衆を熱狂させた。

試合後のガルティエ監督は、「練習をたくさんし、暑さと湿度もあるなかで、短い間隔で試合をこなしていった。今回の3試合については全体的に満足している」とツアーを総括した。ネイマールは「ガンバ大阪はダイナミックなチーム。楽しい試合だった」と笑みを浮かべた。


『MNM』コンビでもっともプレータイムが長かったのは、3人のなかで最年長のメッシだ。17日の来日会見で「一番大切なのはサッカーを楽しむことだ」と話していた35歳は、過密スケジュールに不満を漏らすこともなく、ひたむきにボールを追いかけた。


メッシだけではない。PSGの選手たちは、誰もがサッカーに真摯に取り組んでいる。サッカーという競技が持つ楽しさを、世界のスーパースター集団は教えてくれたのだった。

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