サッカー日本代表、AFC アジアカップの総括!ベスト8敗退を危惧する日本代表チームへの課題解決策とは。
カタールW杯でドイツは、スペインは日本に負けた。ドイツに至っては、その半年後にホームでも負けた。
では、ドイツは、スペインは、日本よりも弱いのだろうか。ドイツ人は、スペイン人は、日本にはもうかなわないと思っているだろうか。
わたしはドイツ人でもスペイン人でもないが、しかし、断言はできる。日本に負けたことで、彼らのプライドは傷ついた。大いに傷ついた。ただ、どれほど傷ついたところで、彼らの中にあるアジア軽視、日本軽視が殲滅されることはない。賭けてもいい。彼らは、次のW杯で日本とあたったとしても、絶対に負けるはずはないと信じている。
そんなドイツ人は、スペイン人は傲慢だろうか。彼らは痛い目にあうだろうか。彼らはアジア軽視、日本軽視を根本的に改め、自分たちの弱さを認めるべきなのだろうか。
アジアカップが終わった。優勝を目指した日本は準々決勝でイランに敗れた。
だから日本はイランより弱い。森保監督ではもう勝てない。W杯予選も危うい、といった声が聞こえてくる。
敗因の多くが森保監督にあったことに関しては、わたしも異論はない。イラン戦の内容は無残としか言いようがなかったし、不安定なGK鈴木を起用し続けたことで、守備陣全体の安定感を損なわせてしまった。
ただ、ドイツは、スペインは日本より弱いから負けた、とは思わないわたしは、日本がイランより弱いから負けた、とも思わない。
なぜドイツは、スペインはカタールで日本に敗れたのか。理由が一つでないのはもちろんとして、彼らが先制したことと、後半に入って日本がやり方をガラッと変えたことが関係しているのは間違いない。
警戒はしている、しかし自分より格下だと考えている相手に先制点を奪った時点で、格上のチームには油断が生じる。キックオフまではありとあらゆる手段を講じて排してきた感情が芽生えてしまう。そんなときに、相手がやり方を変えてきたらどうなるか。そこにちょっとした運やミスが介在し、同点ゴールが生まれてしまったらどうなるか。
ドイツは、スペインは、為す術なく押し切られた。日本がイランにやられたのも、同じことだった。ハンジ・フリックやルイス・エンリケがメディアやファンから酷評されたように、森保監督が手厳しい批判を浴びるのは当然としても、しかし、一度陥ると相当に脱出が困難な展開に、罠に、3人の監督は陥った。森保監督が無能だというのであれば、バルセロナを率いた経験のあるルイス・エンリケでさえ、無能だということになってしまう。
アジアカップ単体で見れば敗因としか言いようのないGK鈴木の起用にしても、見方を変えれば理解できるところもある。
三笘が成長し、久保はリーガでも注目の存在となりつつある。フィールドプレーヤーのレベルは、昔を思えば信じられないぐらいにあがってきた。だが、三笘が、久保がワールドクラスの選手かと言えば、それはまだまだ違う。アジアカップの前、監督ではソン・フンミンの父親が「息子はワールドクラスではない」とコメントして物議を醸していたが、わたしも、まったくその通りだと思う。ワールドクラスとは、メッシやクリスティアーノ・ロナウド、古くはマラドーナやクライフ、ペレを指す言葉であって、スーパースターと同義語、というわけではない。国を越え、時代を越えてなお全世界から愛され、称賛される選手。わたしの中でのソン・フンミンは、スアレスやグリーズマンに比肩する存在ではあっても、ワールドクラスでは決してない。
そして、プレミアで得点王を取り、史上最高のアジア人選手の呼び声高いソン・フンミンでさえワールドクラスではないという前提に立つならば、久保も三笘もまだまだの存在でしかない。
だが、そんなことは重々承知しているはずの森保監督は、W杯での優勝を目標に掲げている。ワールドクラスの選手を保有しない国が王者になるためには何が必要か。
その一つに、絶対的守護神の存在がある。
カタールでの権田は本当によく頑張ってくれた。では、彼はワールドクラスのGKだったか。そこまではいかなくとも、ソン・フンミンぐらいの、言ってみればインターナショナル・クラスのGKだったのか。
残念ながら、違う。
権田に限った話ではない。フランス大会の川口能活以降、日本代表の守護神でヨーロッパのビッグクラブから声がかかるような選手は一人もいなかった。皆、それぞれが素晴らしい働きをしてくれたため、弱点にこそならずに済んだが、このポジションが日本のストロング・ポイントになったことは一度もなかった。
森保監督は、鈴木にならばその可能性はあると見たのだろうし、同じような見立ては、彼に声をかけたマンチェスター・ユナイテッドもしていたということになる。古くはゲイリー・ベイリー、ピーター・シュマイケルやファビアン・バルテス、ファン・デル・サールやデ・ヘアといった世界の名だたる守護神を獲得してきたチームが、鈴木の才能を評価していたのである。
そして、ゴールキーパーというポジションは、才能や技術と同じぐらい、いや、それ以上に経験が重視されるポジションである。かつて、ベルギーのジャン=マリー・プファフというGKはブンデスリーガのデビュー戦で大失態を犯したが、変わらず起用され続けたことによって、バイエルンの絶対的守護神へと成長した。
純粋にアジアカップの優勝のみを狙うのであれば、ベトナム戦の2失点目は次の試合からGKを代えなければいけないレベルの失点だった。ただ、そうしてしまえば、代表における鈴木のキャリアは、ほぼ終わってしまうに等しい。ファンにも、そして鈴木自身にも、ミスが代表における最新にして最後の記憶となってしまうからだ。
なので、W杯におけるゴールマウスを鈴木に託すという信念があった場合に限り、わたしは鈴木を起用し続けた森保監督の決断を批判しようとは思わない。もし手のひらを返して批判することがあるとすれば、それは次の試合から鈴木がレギュラーから外された場合のみ、である。
わたしは、カタールW杯まで日本代表史上最高の勝率を記録し、23年にはわずか1敗しか喫しなかった森保監督の手腕を評価する人間の一人である。ただ、アジアカップでの戦いぶり、特にイラン戦でのあまりの無策ぶりに苛立つ人の気持ちもよく分かる。何より深刻なのは、本当に無能かどうかはともかくとして、森保監督の手腕を疑問視する声が、選手の中からも出てきてしまったということだろう。
ひとたび選手サイドから監督に対する批判の声が上がってしまうと、これを鎮めるのは簡単なことではない。ボルシア・メンヘングラッドバッハを世界的強豪に引き上げたヘネス・バイスバイラーはその手腕を買われてバルセロナに引き抜かれたが、クライフとソリが合わずに1年でチームを追われた。選手と監督が対立した際、ほとんどのメディア、ファンは選手の側に回る。
イラン戦のあと、守田は「もっとベンチからの指示がほしい」と監督批判とも取れる趣旨の発言をした。個人的には代表チームの監督にクラブ・レベルでの戦術的な指示を求めるのは無理なのでは、と思うのだが、守田としては、覚悟の上での発言でもあっただろう。
となると、この発言を放置した場合、つまりベンチがもっと指示のできるようにならない限り、守田はベンチに対する不信感を抱いたままプレーすることになる。そして、メンバーから外してしまうには彼の存在は大きすぎる。
では、どうするべきか。
監督を変えるべき、という意見には賛同できない。これまでの試合がイラン戦のような内容ばかりだったというのであればわかるが、素晴らしい試合もやってきた監督を、一度の失敗で更迭してしまうのはリスクが大きすぎる、とわたしは思う。というより、もし本当に更迭するようなことがあれば、中国サッカー協会あたりが放っておかないだろう。
わたしが協会の人間であれば、守田が、あるいは森保監督のやり方に不満を抱いている選手が心酔している人間をスタッフとしてベンチに加える。正直、代表チームではどれほど有能なコーチであっても、クラブチームのようにベンチから試合を動かすのは簡単なことではない。それでも、信頼している人間からの指示であれば、選手は納得して動く。
たとえば、中村憲剛。あるいは、風間八宏。
要は、フロンターレの中軸をになった選手、礎を築いた指導者からの言葉であれば、多くの選手たちはすんなりと受け入れる。少なくとも、弱点は修正されたはずだと選手たちは感じることができる。
このやり方ならば、問題の多くは解消される、と思うのだが。
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