伝統と革新が融合したCOPA ICON 2(コパ アイコン 2)―『履けばわかるフィット感』で若きプレーヤーを支えるアディダスの新たな挑戦
アディダス ジャパン が新たに発表した「コパ アイコン 2」。伝統的なデザインを守りながら、現代のサッカープレーヤー、特に部活動に励む若い選手たちのニーズに応えるべく開発されたこのモデルは、まさに「伝統と革新の融合」を体現するスパイクだ。その開発に携わったアディダス ジャパンのフットボール事業部でカテゴリーマネージャーを務める金子勝太氏 に、背景にあるコンセプトや改良点、そして市場へのアプローチについて話を聞いた。
――今回の新しいモデル「コパ アイコン 2」は、どのようなコンセプトで開発されたのでしょうか?
コパ アイコン 2の開発にあたっては、アディダスが得意とする先進的な技術革新を活かしつつ、同時に「伝統」を大切にすることを意識しました。アディダスが過去から続けてきた価値を守りながら、現代のサッカープレーヤー、特に部活動に励む若い選手や次世代を担う選手たちにとって、どんなスパイクが理想的かを考えました。要するに、「伝統を重視しつつ、現代の選手たちのニーズに応えるスパイク」を目指して開発したのがコパ アイコン 2です。
――前作との違いについて、大きなポイントはどこですか?
コパ アイコン 2は、前作と比べて大きく変化しています。特に以下の点が挙げられます。
1. デザインの進化
前作よりもつま先部分(バンプ)の長さを短く調整。これにより、全体のバランスが改良されています。
2. ライニング(素材)の薄型化
シューズの内側に使用されているウレタンフォーム(パッド)を薄くしました。この変更により、ボールタッチの感覚が向上し、シューズとの一体感がさらに強まりました。
3. シューホール(靴紐を通す穴)の数と形状の変更
前作ではシューホールの数が6つでしたが、今回は8つに増加しています。
シューホール周りの形状もジグザグ状(波打つ形)に変更。このデザインにより、圧迫感が足の動きに応じて逃げやすくなり、 より快適なフィット感を実現しました。
4. フィッティング感の調整
シューズの調整が各選手の足に合わせて簡単にできるよう改良されています。これにより、よりパーソナライズされたフィッティングが可能になりました。
■天然皮革の新しい可能性―部活生にも優しい馴染みやすさを追求
――さっき試し履き会で履いていた人たちからも「履き心地がすごくいい」というコメントがありましたね。
そのように感じていただけるのは本当に嬉しいです。履き心地にこだわって作ってきたので、そのような声をいただけるのは感無量です。特にレザーシューズは履き心地が命だと思っています。履いた時の一体感や、ボールに触れた時に足と連動している感覚が得られるかどうかがとても大切です。実際に履いてくださった皆さんがそう感じてくれたのは、開発者として非常に励みになります。
――つま先の長さを変えたことで履き心地にも影響があったのでしょうか?
そうですね、かなり影響しています。靴においてフィッティングは非常に重要な要素です。特に足の指の付け根部分のフィッティングは大切で、今回のデザインではシューレースの始まりがその位置に来るように設計しています。これにより、しっかり足をホールドできるようになり、履き心地が大きく向上しました。
また、キックする際の正確なタッチにも影響しています。つま先の長さを調整したことで、見た目の変化だけでなく、機能面でも大きな改良が実現しました。
――かかとの部分にも変更が加えられましたか?
かかとの形状についても大きく見直しを行いました。これは特に日本向けの土や人工芝用に企画されたモデルで、ラスト(足型)も日本人の足に合うように設計しています。かかとのカーブを調整することでフィッティング感が大幅に向上し、足をしっかりとホールドできるようになりました。この改良により、履き心地がさらに向上しています。
――素材にもどのような変化が?
革の素材に関しては、前作と同じくカウレザーを使用しています。ただし、今回採用したのは「プレミアムカウレザー」で、柔らかさや足馴染みがさらに向上しています。初めて履いた瞬間から足に馴染みやすい素材なので、新品の状態でも快適にプレーしていただけると思います。これは、部活生や試合前に新しいシューズを必要とする選手たちにとっても大きなアドバンテージになるでしょう。
特に天然革のシューズは通常、履き馴染むまでに時間がかかるものですが、コパ アイコン 2ではその馴染みやすさを追求しました。特に部活生にとって、試合前に新しいシューズを履くのは不安要素になりがちですが、このモデルならその心配はありません。すぐに足にフィットすることで、自信を持って試合に臨める点は、大きな強みだと思います。
■「素足感覚」を追求―ボールタッチと一体感を実現する理由とは
――今回採用された「ジャパンマイクロフィットラスト」や「素足感覚」を重視された理由や背景を教えてください。
まず「ジャパンマイクロフィットラスト」についてですが、今回新たに日本向けのラストを見直しました。この見直しは約10年以上ぶりとなります。以前に作ったラストと現在の部活動で活躍する選手たちの足の形には、大きな変化があると考えています。そのため、現代の部活動における選手の足に適応するよう、しっかりとアップデートを施しました。これが今回のラスト開発において非常に重要なポイントです。
また、「素足感覚」についてですが、日本は特にレザーシューズの需要が高く、選手たちにとってレザーシューズが重要であることを強く感じています。選手たちがシューズに求めるものとして、素足のようなフィット感やボールタッチの一体感が挙げられます。私たちは選手たちの声を直接ヒアリングする中で、これらが非常に重要な要素であると確信しました。
そのため、「フィット感」「素足感覚」「ボールタッチ時の一体感」を徹底的に追求し、それを製品に反映させたことが今回の開発の大きなポイントです。選手が履いた瞬間から満足していただけるシューズを目指しました。
――今回、日本のプレーヤー向けの靴を作るにあたって、一番苦労した点は何でしたか?
一番の課題は「グローバルブランドとしての特性」でした。日本のローカルマーケットには特有のニーズがありますが、アディダスはグローバルブランドであり、その中で日本市場の要望を伝え、製品化するには高いハードルがありました。
たとえば、日本では土や短い人工芝が主流ですが、ヨーロッパやアメリカでは天然芝や長い人工芝が主流です。このようなフィールドの違いを踏まえて日本のニーズを理解してもらい、製品に反映させるのは非常に大変でした。また、部活生の声を聞き、それをどこまで靴に落とし込むかの選定も苦労した点です。全ての声を反映したいという気持ちはありつつも、1つの靴で全てをカバーするのは難しいので、その取捨選択が非常に難しいポイントでした。
――実際に学生さんに試してもらった際、「もっとこうしてほしい」といった意見もありましたか?
たとえば、「かかとの部分をもっと締め付けてほしい」という声や、「中足部をもっと硬くしてほしい」という意見もありました。これらは個々の好みによる部分が大きいですが、こうしたフィードバックは非常に貴重です。
現在のかかと部分については高評価をいただいているものの、「もっとフィット感が欲しい」との要望もありました。そういった声を聞くことで、今後さらに改良すべきポイントを見出せると考えています。一方で、「今の状態でちょうど良い」という声も多くいただいており、そのバランスを取ることが今後の課題になると思います。
こうした多様なフィードバックを真摯に受け止め、次の開発につなげる良い機会にしたいと考えています。選手の声を反映した製品を作り続けることが、私たちの使命だと思っています。
■「フィット感」「タッチ感」「高品質」―アディダスが目指す三位一体の価値
――今回、コパ アイコン 2において特に伝統的な部分を残したところはどこですか?
見た目のデザイン、特にストライプス(アディダスの象徴的な三本線)の部分だと思います。この部分に新しいTPU素材を採用する一方で、従来のクラシックなイメージを維持しています。
また、素材の選択にも新しい挑戦を加えています。たとえば、異なる2色の素材を組み合わせることで、見た目に新鮮さを加えながらもクラシックな印象を損なわないよう工夫しました。伝統的なデザインを重視しながら、革新を取り入れた融合の象徴と言える部分です。
――コパ アイコン 2を他社製品と比較したとき、特に強調したいポイントは何ですか?
一番の売りは「フィッティング」です。特にレザーシューズとしてのフィッティングの良さには自信があります。他社製品も優れたフィッティングを提供していますが、コパ アイコン 2は以下の点で差別化されています。日本の部活生を念頭に置き、国内のニーズを反映させたラストを開発しました。これにより、日本のプレーヤーの足にしっかりとフィットするシューズを実現しています。
アディダスはグローバルブランドとしての技術力を持ちながら、日本国内のマーケットに特化した製品を作りました。このような取り組みは他社にはない大きなポイントだと思います。履いた瞬間から足に馴染むレザーの質感や、快適な履き心地を重視しています。この特徴は、実際に手に取って履いてもらうことで実感していただけると思います。
これらの要素が、コパ アイコン 2を他社製品とは一線を画すものにしていると自信を持っています。
――「履けばわかるフィット感」というフレーズが生まれた背景について教えてください。
「履けばわかるフィット感」というフレーズは、このシューズの特性を的確に表しています。見た目や手に取っただけでは、フィット感や履き心地を完全に伝えることはできません。このフレーズには、「実際に履いてこそ、このシューズの真価がわかる」という思いが込められているのです。
――日本市場向けにはどのようなマーケティング戦略を考えていますか?
このシューズの魅力は、実際に履いてこそ実感できるフィット感とタッチ感にあります。そのため、店頭で手に取り、履いてみる機会を増やすことを目指しています。フィット感の良さを直接体験してもらうことで、製品の魅力をダイレクトに伝えることが可能です。
また、アディダスはインターナショナルブランドでありながら、日本市場向けにラスト(靴型)の企画・製造を行い、日本の部活生をしっかりと考えた製品を提供しています。これは非常に珍しい試みであり、ブランドとしての差別化ポイントとなっています。
さらに、「フィット感」「タッチ感」「レザーシューズの高品質」をキーワードに、ブランドの訴求力を高める施策を推進中です。これらの特徴は、広告やプロモーション活動を通じてしっかりと伝えていく計画です。
――今回の開発経験を通じて、今後どのような挑戦をしていきたいと考えていますか?
アディダスは、サッカーブランドとしてより多くのプレーヤーにシューズを提供し、サッカーを楽しめる環境を作ることを目指しています。サッカーが好きな方はもちろん、これから始める方や幅広い年代の方々に、サッカーを楽しむきっかけを提供したいと考えています。そのため、部活生向けだけでなく、キッズや一般プレーヤー向けの製品開発にも力を注いでいます。
私たちは他社ブランドとの競争を前向きに捉えています。他社製品の良い点を学びつつ、アディダスならではの強みを磨くことで、市場全体の活性化に貢献したいと考えています。選手たちの選択肢が増え、結果としてサッカー市場がより豊かになることを期待しています。
製品を通じてサッカーの楽しさを広め、小さな子どもから大人まで、世代を超えてサッカーを愛する人を増やしていきたい。そして、ボールを蹴る喜びを日常生活で感じてもらえるような商品作りをこれからも続けていきます。