200メートル平泳ぎ五輪記録保持者の渡辺一平が語る『世界記録をもう一度出すために選んだ水着』
2017年1月に男子200メートル平泳ぎで2分6秒67の世界新記録を樹立した渡辺一平選手。北島康介氏に後継者として指名されるなど、2020年の東京オリンピックでの活躍が期待されているアスリートの一人だ。恵まれた身体と世界トップの技術を誇る渡辺一平選手に、これまでの水泳人生の歩み、自らを高めたミズノ水着のこだわり、今年に控えた東京オリンピックなど、現在の想いを赤裸々に語っていただいた。
――水泳との出会いを教えてください。
姉や親戚の影響を受けて、小学校2年生で水泳を始めました。当時は全然結果を残せる選手ではなくて。県大会で活躍するぐらいの平凡な選手でした。
――そこから、今や日本代表選手になりましたが、一番効果的だった練習・トレーニングは?
高校1年生の冬に自己ベストを大幅に更新したんですけど。当時はショートサイクルっていう短いインターバルを挟んでずっと泳ぐ練習を頑張っていました。
――それによって、タイムはどう変わりましたか?
高校1年生の1月に2分12秒7っていう短水路の自己ベストを記録しました。結果優勝はしたんですが、もっと早くなりたいと思い始めて、そのショートサイクルの練習を始めたんですね。その1ヶ月後にまた試合がありまして。その時にミズノさんが無料貸し出しをしていたので、試合でそれを履かせていただいて。泳いだ結果が2分8秒1だったんです。4秒弱自己ベストを更新できまして。その時からずっとミズノさんの商品を履いています。
――自己ベストを更新した後は、どのような歩みをしたのですか?
2分12秒が全国トップ10に入るか入らないくらいで。ミズノさんが貸し出してくれたのは新品で、それを履いた自己ベストが自分の同世代ではぶっちぎりの記録だったんです。そこから、春のジュニア・オリンピックカップっていう自分が目標にしていた大会で2分6秒というタイムを出したことで、さらに上を目指したいと思うようになりました。
――そこからオリンピックへの道がひらけてくると思うのですが。
オリンピックを意識したのは、高校3年生の時に中国の南京で行われたユース・オリンピックに出場させて頂いて、優勝しました。その大会が2013年に東京オリンピック開催決定の後に行われたんです。そうすると優勝者として「東京オリンピックでの目標は?」って聞かれるんですよね。その時に自分が「東京オリンピックで」という言葉を口に出すことによってオリンピックを意識し始めました。とにかく、そのユースオリンピックあたりから世界を意識するようになりました。
――初参加となったリオ五輪で対峙した世界はどんなものでしたか?
僕はリオオリンピックが日本代表として初めての活動だったんです。世界選手権・パンパシフィックにもそれまでは出場歴がなくて。なので「オリンピックには魔物がいる」ってよく言われるじゃないですか。でも自分は世界選手権とオリンピックとの違いがわからないので、その「魔物」がなんなのかもわからずにオリンピックに出場しました。準決勝で自己ベストを1秒強更新したものの、決勝で6秒タイムを落としてしまったので、悔しい気持ちは強かったです。でもオリンピックに出場する前の自分と比べたら、タイムは2秒近く自己ベストを更新できたので、「よく頑張ったな」と思います。
――翌年の1月には2分6秒台で世界新記録を達成しました。その後のモチベーションはどう維持されましたか?
難しかったです。今思うと、当時(オリンピック後)は目標を失っていたと思います。今は、自分の世界記録が破られて、また1人のチャレンジャーという位置に戻った「世界記録をもう一度出す」という気持ちは、当時の気持ちとでは天と地ぐらいの差があると思います。今はそれだけ強い気持ちを持って取り組んでいますし。今思えば、当時の自分は「世界大会で勝ちたい」というモチベーションはありながらも、自分に甘えてしまう弱さがあったと思います。
――水着を選ぶ際に、どんなこだわりがありますか?
高校1年生の冬からずっとミズノさんの水着を履いていて。いろんな方がおっしゃるのは、「ミズノの水着は硬い」ってことなんですけど。それ以上に僕が評価している点は、ボディポジションを高く保てるっていうことで。平泳ぎはストリームラインを追求する種目なので。足を蹴った後に足が上がってくるイメージというか。力を入れなくても、ボディラインを保てるのが理想なので。その部分が優れているので、僕は迷わずミズノさんを履いています。
――国際水泳連盟(FINA)承認の競泳用水着「GX・SONIC V(ジーエックス ソニック ファイブ)」を試してどうでしたか。
「今回のGX・SONIC Vは泳いだ後に、水滴の流れを見ると、撥水が良くなったと感じました。ミズノの水着は、フラット姿勢を保持するために工夫されているところがポイントで、気に入っているところです。このフラット姿勢が保持できるということは飛込時に特に有効的で、泳ぎを確実にサポートしてくれます。今年、この水着と一緒に大きな目標を成し遂げたいと思います。」
――好きなデザインや水着の使い分けは、どのようにしていますか?
今回の新作はデザインが変わりましたよね?僕は凄い好きです。200mの時は力を入れなくてもより浮く感覚があるSTを履いていて100mは足が動かなくなりがちなので、より伸びやすいMRを履いています。自分の体にどんな水着があっているのかを練習で確かめながら。でも練習では達成しえない強度においては、試合の中で試行錯誤しながら水着を選んでいます。
――勝負の年を迎えるにあたり、日々考えていることは?
どうやったら2分5秒で泳げるのか、を考えています。毎日考えているわけではないですが、練習の2時間半はほとんど考えていますね。いかにして自分の弱さを強さに変えていくかを考えますし。今は2分5秒のタイムを出すために、水泳内外の両面で自分が何をしなくてはいけないのか。後から後悔だけはしたくないので。やらなきゃいけないと思ったことは片っ端から全てやるようにしています。
――最後に、今年の意気込みと、部活生へのエールをいただけたら。
今年自分は23歳を迎えます。競泳選手として良いタイミングで東京五輪を迎えられることはすごく運命的に感じています。「オリンピックの借りはオリンピックでしか返せない」という言葉があるように、自分は「リオ五輪の悔しい思いを東京で晴らす」という強い気持ちを持っているので、自分自身の五輪記録、ライバルの記録、そして金メダルを獲得できるように頑張っていきたいと思います。
自分が小学生の時にがむしゃらに水泳に取り組んでいたと思い返すことが沢山あるんですけど、小・中学生の時は努力の割に結果がついてこないという辛い思いを経験しました。でもその時の努力があってこそ今の自分がいると思っています。今の17年間の競泳人生の中でも当時が一番きつかったですね。「努力は必ず報われる」じゃないですけど、努力を強いるものにしか夢は巡ってこないと思っています。努力して結果が出なくても諦めるのではなくて、いずれその努力が自分に返ってくることを信じて夢に向かって頑張って欲しいと思います。絶対に神様は見てくれているので。