フリーワード検索

running2020.11.02

ニューノーマルな世界を走るひとたちへ|Run to feel better|芦野さやか「走ることは、どんな状況でも自分を誇れること」

新型コロナウイルス感染症影響下における、ランニングに関する意識調査「#RunToFeel」を世界規模で実施したASICS。その結果、ランニングを始め身体を動かすことよって心身にもたらされるポジティブな影響が浮き彫りになりました。新しい生活様式の中で、変化に柔軟にしなやかに走るひとりのランナーの姿を通じて紐解く「ランニングの意義」について。


ASICSがおこなった「#RunToFeel」調査結果
 


■忘れられない、初ランニング記念日。鮮明に記憶しているほど楽しくて、いまもずっと走り続けている



 

――ランニングを始めたきかっけは?

東京マラソンにチャレンジしようと同じ会社のランナーに誘われ、直感で楽しそうだと感じて走ることを決めました。初めて走ったのが2015年の6月17日で、わたしのランニング記念日。皇居を1周しただけでしたが、絶対に忘れない思い出の日です。その時は5kmという距離感さえわからず、友人とひたむきに走って、高架下でおいしい焼き鳥を食べながらお酒を飲んで、すごく楽しかったんですね。結局東京マラソンのエントリーをし忘れてしまってレースには出なかったのですが、楽しいからそのまま走ることを続けていました。

そして、自分の好きな場所で走りたいと思って選んだ初ハーフマラソンは宮古島。ランニングで出会った友人と一緒に素晴らしい景色を満喫したのを覚えています。そもそもスポーツ経験が皆無だったので、大会というものに出たことがなければ、何かを長く継続した経験さえなかったんですね。そんなわたしがマラソンのレースに出て、みんなが同じ気持ちで一生懸命ゴールに向かい、知らないひとがたくさん応援してくれる。大会という特殊な状況が、もうとにかく衝撃でした。

こんなに一度に、楽しさも感動も頑張る気持ちも味わえるものがあるんだって。大会会場はパワースポットで、出場するひとたちのエネルギーがひしめき合っていて、ゴールした後はそれぞれの達成感が渦巻いている感じで。「頑張ったね!」と言い合いながらレースを振り返りつつ食べる食事も格別。

走れる距離が長くなっていくことや、走れるペースが速くなること、たくさんのひととの出会いによって、わたしの世界は変わりました。知らない道も知らない景色も、全てがトキメキなんです。いま走り始めて丸5年経ちましたが、こんなにわたしを楽しい気持ちにさせてくれるランニングを、心から好きと言えますね。


■世界中が直面した未曾有のコロナ禍。ポジティブでいられたのは、すでに走ることが生活から切り離せないものになっていたから。



――緊急事態宣言が発令され、自粛を要されていた時期はどのように過ごしていましたか?

コロナ禍によってあらゆる大会が中止になり、大会で結果を出すために頑張っていたランナーの皆さんはターゲットとしていた目標がなくなってしまった悲しさはありましたよね。わたし自身も、大会の応援にいくことが好きだったけどそれができなくなり、ランニング仲間に会えないことが寂しかった。中には走ることへのモチベーションが保てないひともいたと思います。

わたしの場合は、自粛期間に入る直前にターゲットにしていた大会に出られて、ベストタイムで走れたのでタイミングが良かった。とはいえ、その後も大会にいくつかエントリーしていて、さらにタイムの上塗りをしたいと考えていたので残念ではありました。ただ、基本的には目標に対するモチベーションというよりは楽しいから走るという意識が強く、走りたくなかったら走らなくていいし、何かを追い求めて努力し続けるのは個人の選択だと思っています。

緊急事態宣言が出た自粛期間中に一番に考えたことは、感染しないこと。世の中が大変な最中、自分にできる最低限のことなので、外出しないことに決めました。テンションが下がっていたわけではないので、走れないものの身体は動かしたかったんです。それで、ベランダのスペースを八の字で小回りに走ったり、これまでやってこなかった家トレを取り入れました。走らなくても、走ることに直結する様々な方法を知ることができて、それがきっかけで今となってはクロスバイクやヨガ、水泳も取り入れるようになりましたね。

ポジティブに自粛期間を楽しめたのは、他に楽しめることを試そうと視野を広げてみたことが良かったのかなって。与えられた環境の中で、身の丈に合った欲を満たすための工夫によって、いろんな新発見がたくさんありました。役立つことや楽しいと思えることが増えたのは、自分にとって幸せなことですね。



不安な状況下において目の前のことに集中できるランニングがもたらしたポジティブな影響が、回答から見て取れた。


■当たり前の未来なんてない。今できることを全力で。



――コロナ禍を経て、新しく掲げた目標はありますか?

自分自身としては、サブ3(フルマラソン3時間切り)を新しく目標に掲げて、公言するようになりました。それまでは周囲からも目指した方がいいと言われながらも、少しずつ努力していつか叶えばいいなと思っていたんです。それがコロナ禍によって大会が軒並み中止になり、今できることが未来もできるとは限らないと痛感したことで、後悔しない生き方をしたいと思ったんですね。いつかはいつかでしかない。それなら今この瞬間から明確な目標にして取り組む以外にないんだって。

あとは、もっとランニングの楽しさを周囲に伝えたいという気持ちが強くなりました。なぜかというと、ランナーが増えたという報道をTVで観たり、過去に会社の社内報でわたしのランニング活動を取り上げてくださっていたことで、自粛期間中に走り始めた社内のひとたちが「ランニングってしんどいけど、いいね!」という言葉をかけてくれるようになったんです。走り始めたばかりのひとたちがどんな風に走っているのか全てを知ることはできないからこそ、教育としての体育の辛くて苦しいイメージではなく、楽しいランニングってどんなものなのかを広めたいという気持ちになりました。

大会に出ることだけがランニングの目的ではないし、わたし自身も3時間30分を切るまではスピード練習をしたこともなかった。走っていろんなパン屋さんを巡るのがいまでも大好きだし、パン屋さんを巡っていたらいつの間にか距離が積めていたりする。そのひとらしい楽しみ方を見つけてもらうために、わたしもわたしらしく楽しく走ることを発信しています。



両親への恩返しというのも、わたしが走ることの大きな意義です。前述したとおり、これまで何かを継続してやってこなかったので、わたしが努力していたり思いっきり楽しんでいる姿を両親に見せてこられなかったんですね。いまこの歳だけど、こうして走ることに夢中になって毎日笑って元気に過ごしているという姿を見てもらえていることが心からうれしくて。家族は北海道に住んでいるので、大会に出たら必ず記録とメダルの写真を送っていますし、祖父にメダルをかけにいったこともあります。遠く離れた家族との絆を、走ることが繋いでくれている。

思えば大人になって始めたからこそ、こんなに楽しめているのかもしれませんね。「わたしはランナーである」というひとつのタイトルを自分自身で持てたことで、自信がつきました。家族やランニング仲間とのコミュニケーションがもたらしてくれる豊かさも、かけがえのないもの。まさに、遅くれてきた青春を大満喫中です!



ランニングは人それぞれ違う。しかし、これまで走ることからポジティブな影響を受けてきた人に共通しているのは、世の中の変化を踏まえ、自分にとってのランニングの意義をよりしっかりと固めていく姿であるように思います。#RunToFeelにて「新型コロナウイルス感染症の収束後も、現在と同じように走り続けたい」と回答した人の割合が73%(日本国内では75%)に及び、多くのランナーが自分らしさを保つことの手段として、生活の重要な一要素としてランニング再認識した。その走り出す先に、ニューノーマルな景色が見えてきます。
 


■Profile



芦野 さやか(Sayaka Ashino)

外資アパレル勤務。ランニング歴5年。部活などの運動経験はなし。楽しみながら強くなれる、人生が豊かになるランニングの素晴らしさをたくさんの人に知ってもらいたい。自分越えを目指して今の目標は、サブ3。


フルマラソンPB:3:09:58

100km PB:10:23:55

Instagram: @sayaxx_x

BUY NOW

SEARCH フリーワード検索