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running2021.02.01

ニューノーマルな世界を走るひとへ |「パフォーマンスをあげるための、僕たちの5 Hacks」前編

自らの人生を大いに楽しみ、進化し続ける手段としてランニングを選び、仕事と共にハイパフォーマンスを実践しているランナーたち。彼らは一体どのようにセルフマネジメントをしているのだろうか。そのハックを、サブ3ランナーのみが所属できるコミュニティ「健ちゃん練」のメンバーが紹介するシリーズ。今回は前編をお送りします。


Profile

中央:松永健士(まつなが けんし)

健ちゃん練主宰・double  survivor副部長・Numerals running team コーチ

ファッション関係企業に勤めながら、マラソンをはじめ、トライアスロンやトレイルランなどエンデュランス系スポーツを幅広く楽しむビジネスアスリート。キックボクシング全日本大学選手権で大会優秀選手賞受賞経歴あり。

Instagram: https://www.instagram.com/k_e_n__s.h.i/


左:牧野英明(まきの ひであき)

セレクトショップに勤務。ランニングアドバイザーの資格を持つ。自身もストイックに練習に励み、フル自己ベストは2時間49分01秒(2019年東京マラソン) 

「#いつでも10km走れるコーディネート」が話題を呼んでいる。

Instagram: https://www.instagram.com/makinohideaki/


右:村田諒(むらた りょう)

株式会社キャスター執行役員CMOとして全社マーケティングを担いながら、2019年Cameron Ultra Trail100kmで優勝するなどトレイルランナーとして国内外で活躍。Run boys! Run girls!ではオンラインランニングチームを設立し、コーチを務める。

Instagram: https://www.instagram.com/ryomurata28/


Theme: トレーニング内容の組み立て方

【Hack 1】身近な第一人者をアドバイザーにつける 



- 仕事とランニングを両立しながら、それぞれで高いパフォーマンスをあげるための5つのハックをお聞かせください。健ちゃん練はサブ3ランナーの集団で、毎週トレーニングメニューを考えているのは部長である松永さんだそうですが、どのように組み立てていますか?

松永さん:目標達成に向けた数ヶ月前間の準備をベース期、鍛錬期、調整期の三段階に分けて考えたときに、それぞれにやるべきことがあります。鍛錬期でいくと、30k走をレースペース想定より10秒くらい遅いペースで完遂する、40km走をレースまでに一度は入れる、10マイルやハーフマラソンをフルマラソンのレースペースより10秒速く走るなどの指標があって。その指標を達成するための、さらに細分化したトレーニングメニューを健ちゃん練のトレーニングメニューにしていますね。


- トレーニングメニューについて誰かにアドバイスをもらうことはありますか?

松永さん:健ちゃん練は、僕自身が走れるようになりたくて始めた集まりで、初期メンバーは普通の市民ランナー5人くらい。そこから、僕が通っているランニングサイエンスラボ(以下:RSL)の、元実業団や元箱根ランナーのスター選手だったコーチ陣たちが練習に来てくれるなど、素晴らしいひとたちが集まるようになったんです。2時間10分を切るような元実業団選手とか、箱根で優勝テープ切った選手とか。

そういったひとたちがそばにいるので、練習メニューについても教えてもらえる贅沢な環境ですね。短い距離で絶対的にスピードをあげたいときは、RSLの三津家くん、中距離は同じくRSLの新田くん、長距離トレーニングのアドバイスをくれるのは五ヶ谷くん、日本歴代4位でヤクルト所属の高久選手からは変化走のアドバイスなど、やりたい内容によって聞く相手を変えています。神野選手や、マラソン界のあのトップスター選手からもレース前の仕上げ方、過ごし方などを教示してもらえる環境にありますね。

全てを頼っているわけではなく、僕の中である程度のメニュー内容を決めたうえで、二択で迷っているときや、適切なタイム設定の確認をしてもらっているという感じ。そうすると彼らは「いまの松永さんなら、このほうが調子があがるのでは?」といった具合に、現状を理解したうえでアドバイスしてくれる。トレーニングの狙いをわかったうえでのアドバイスだから、信頼できるし的確。練習メニューの特性によって聞ける相手が、ありがたいことに僕たちのチームにはたくさんいる。速くなるためのノウハウは、その道のプロに教えてもらうのが一番なので、とてもありがたいです。


村田さん:健ちゃん練の練習がメンバーみんなにとって楽しいものだからっていうのもありますよね。走るだけじゃなくて、健ちゃん練の日は飯も風呂も一緒。長期休暇のタイミングでは合宿もあるし、過去に陸上で華々しい結果を残した方々も、このひとたちといると飽きないって思ってくれているんじゃないかな。


牧野さん:高いレベルで、しかもこの熱量でやっているっていうことがすべてにおいて合致しているのかも。僕たちは実力も目標も近しいから、提供されるメニューが必然的に自分自身に必要なものになってる。



松永さん:ここ一年くらいを切り取った僕たちの伸び率ってすごいよね。こなせるメニューのレベルが上がった。みんなのレベルが底上げされてる。いまは人数が増えてどうしても走力に少し差がでてしまって、AとBにチーム分けしてるんだけど、僕はできれば全員で走りたい。だからBチームが少しずつでも底上げしていけるように、みんなでサポートしてる。そういうのもいいよね。


Theme:トレーニング管理方法

【Hack 2】データ化することで楽しみが増える



- チームでの練習や自主練でトレーニング内容は、どのように管理して活用されていますか?

村田さん:誰でも走り始めたときって理論もわからなければ、論理的に考えられないですよね。僕も、簡単な練習日記をエクセルに入力していただけでしたが、本気で頑張りたいなと思った時にいまの管理方法だともったいないなと思ったんです。そこで、スプレッドシートに項目を細分化して作成して、毎日書き込んでいくという方法を用いました。でも管理する項目がどんどん増えていって、それを毎回手入力するのがストレスになってきちゃって。

自分の走りがどうだったとか、どのゾーンで刺激が入ったとか、可視化できるのは楽しみだったんだけど、僕はラン以外の種目でクロストレーニングもやるし、二部練もやる。そうすると項目をどう振り分けるのか複雑になってきちゃって。それを機に、アプリに移行しました。スプレッドシート管理と目的は大きく変わらないんだけど、ガーミンの記録データが自動的に同期されるから、手入力していた手間が一切なくなって楽になりました。

もうひとつ、僕の使用しているアプリは練習の負荷を点数化してくれるんですね。自分の身体にどれくらい負荷をかけたかとか、その負荷の種類(短時間高強度練習の負荷や、長時間低強度練習の負荷など)、それによってどれくらい自分のベースの体力があがっているか、さらには差し引きして自分の調子がどれくらい下がったのかもすべて数値で出てくる。それを継続してウォッチしていくと、自分の体感と数字っていうのが一致してくるので、数字と自分の感覚がマッチしてくるようになりました。コーチなど外部のひとに一部共有するのもスプレッドシートのほうが便利だし、スプレッドシートでは年間のスケジュール管理とか中長期的なこと、練習の振り返りはアプリ、という使い分けをしています。


松永さん:こういう管理は、健ちゃん練の中で村田が一番長けてるよね。僕も村田ほどじゃないけど、スプレッドシートにまとめてる。コーチとトレーニング共有するときに必要だし、可視化して振り返ることは大事。


村田さん:継続のメリットは、良い時も悪い時もその要因が振り返ると見えてくるんですよ。練習強度のバランスが崩れたとか、僕はパワーメーター(ランニングのパワーやフォームを数値化するアイテム)も使っているので、状態が良くない時は地面への接地時間が長くなっていて、自分の弱い部分に負担がかかっているっていうこととか。ちょっと怪しいなと思って見返すと、いろいろ見えてくるんです。

なので、強くなるための再現性がかなり高まりますね。HRVという自分の心拍の変動によってストレス度や疲労度などの体調がわかる指標があって、一時期は毎朝心拍ベルトをつけて、別のアプリで測定していました。ただ、毎朝心拍ベルトをつけるのが手間のため今は行っておらず、ガーミンで表示されるストレスレベルを参考程度にみています。運用のハードルが上がって続けられなかったり、数値取ることだけが目的になってしまうと意味がないので。



牧野さん:村田くんのスプレッドシート見てみたい!願わくば、さっき教えてくれたこと全部時計で完結できたら最高だよね。


村田さん:項目でいうと、HRVなどはスコアで入れていて、予定のメニューと実際におこなったトレーニング内容、その時に履いたシューズ、一回の走行距離、運動時間、ずっと走っていると負荷が同じところに集中してしまうのでダメージがなく有酸素運動ができるクロストレーニング時間、あとはトレイルランをやっているので獲得標高を入れています。さらに心拍ゾーンを1~5で分割して、それぞれの刺激時間で何分動いたかを入力し、一定期間で可視化。スプレッドシートだと面倒だけど、これをアプリ管理にすると一気にすっきりします。

自分のトレーニングのバランス比率やゾーンの強度やボリューム、体調、走力、疲労、体力、消費などがグラフで見れるんです。どうしても月間走行距離に目がいきがちだと思うんですが、僕はどの強度でどれくらい動いたかという、距離と時間の掛け合わせに注目するのがいいと思っていて。1週間で何時間動くと決めて、1〜2割は高強度、1割は中強度、7〜8割は中強度と各強度ごとの運動時間の目安を決めて、管理しています。

基本的には負荷=強度×時間っていうものだから、その掛け算で全体を高めていくためには時間って重要な要素なんですよね。走ることが好きになってきたら管理方法もブラッシュアップして、視野を広げて楽にたのしくやってみるのがいいかなって思います。



松永さん:日本のトップ選手は月間1000kmとか走るけど、俺たち市民ランナーはそんな時間はない。リカバリーも追いつかないし、仕事をしながら走れる距離って200~300kmくらい。だからこそ、内容重視で効率良くトレーニングすることが結果を出す大前提だよね。ガジェットとかこういう管理方法とか、形から入って走ることが楽しくなるひともたくさんいるんじゃないかな?


村田さん:数値化することの最大の魅力は、走ること以外で楽しめることが増えるということ。単純に速くなったという結果だけではなくて、どうして速くなれたのか、どうしたらもっと速くなれるのか、ヒントがたくさん見つけられる。データを分析するのも楽しいですね。


Theme:私生活とのバランスの取り方

【Hack 3】活動時間をできる限り一定にする


- 走ることが大好きな皆さんですが、私生活とのバランスの取り方はどうされていますか?

松永さん:週5は走るようにしていて、週1は健ちゃん練、レース前は週2で仲間と集まって走っているものの、夜は会食が多い。そうすると走る時間は必然的に朝なので、どんなに飲んで帰っても5時には起きて走る。ジョグしてスッキリした状態で出社するという生活を送っているけれど、いまはそれをしないと気持ち悪いくらい。週末は土日ともに子供たちの習い事があるから、午前中に中長距離を走ってあとはファミリータイム。家族の理解があるのは助かります。


牧野さん:僕はいま栃木に住んでいて通勤に二時間、さらに子供も2人いるので、家のことで時間を取られることが多い。休みの日は家族サービスがあるので、ウィークデーにすべて自分のやりたいことを詰め込みます。仕事で都内にいく日は、休み時間にジム、仕事が終わってから走る、走り終わったら食事という、やりたいことづくし。リモートワークよりは出社して仕事と走ること関連をまとめていますね。


村田さん:僕は山にすぐアクセスできる環境を求めて高尾に引っ越したうえ、仕事もコロナ禍前からリモートワーク。でもずっと高尾生活だと退屈になっちゃうから、週1の健ちゃん練があると、走りにいきつつ仲間と飲みに行ってコミュニケーションを取れるのが楽しくて、いまいいバランスです。


松永さん:練習メニューのところと紐づくけど、健ちゃん練でやっているような外してはいけないポイント練習と、いつでも1人でできる練習を明確に分けて、バッファを設けて調整可能にしておくことでバランスが取れる。本当は決めた日にやりたいけど、仕方ないって思えるくらいじゃないとストレスになるから、多少回り道をしても目的にたどり着ければいいという遊びがあるかんじ。仕事と家族が最優先で走るのは趣味だから、自由がきく朝を有効活用してる。


トレーニングの組み立て方や管理方法は、仕事と共通する側面が伺え、ビジネスアスリートとして高いパフォーマンスをあげるためのハックとしてナレッジ性が高いお話ばかりでした。後編は、ランナーとしてのキャラクター形成方法や、ギアに対する知識が満載な内容でお送りします。お楽しみに!

後編はこちら

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