マラソン代表内定選手が集結!!「パリ五輪」への思いを語った
いざ、世界の舞台へ──。
パリ2024五輪のマラソン日本代表に内定した選手が、3月25日に記者会見に臨んだ。男子の大迫傑(Nike)を除く5選手が、現在の心境などを語った。
最初に女子の代表3選手がマイクを握った。
昨年10月のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)で優勝した鈴木優花(第一生命グループ)は、初の五輪出場となる。「徐々に実感が沸いてきています」と話す24歳は、昨年11月に五輪のコースを試走した。
「パリの街並みを頭のなかで想像すると、いま一番感じるのはワクワク感です。ただやっぱり、日本代表として挑むのなら、ここ一番というところでしっかり勝負したいですし、パリという素敵な街を走れることもなかなかないので、楽しむ気持ちと何としても自分に勝ってその先にいくんだ、という強い気持ちを持って、全力で挑みたいと思います」
現地を試走した鈴木選手は「ワクワク感がある」と話した
MGC2位の一山麻緒(資生堂)は、2大会連続の出場となる。前回は8位入賞を果たした。
「実業団に入ってから、東京五輪に出たいという目標を持ってスタートしたのですが、まさか2大会連続で五輪出場選手になれるとは想像できませんでした。内定が決まった瞬間は、ホントにびっくりした気持ちと、嬉しい気持ちがありました」
一山選手は8位入賞の前回大会に続いての出場となる
3人目の代表内定者は、前田穂南(天満屋)だ。MGCで7位に終わった彼女は、MGCファイナルチャレンジと呼ばれるレースで日本陸上競技連盟が設定した2時間21分41秒を上回る必要があった。そして、今年1月の大阪国際女子マラソンを2時間18分59秒で走りきり、一山と同じく2大会連続で代表の座を勝ち取った。
「2大会連続でまた走れることに誇りを持って、自分の走りがしっかりできるように準備していきたいと思います」
前田選手は19年ぶりの日本記録更新で代表内定
大阪国際女子マラソンで記録したタイムは、実に19年ぶりとなる日本新記録である。前田は「記録という面でなかなか結果が出ないことが多かったので、日本記録を更新できたことがすごく自信になりました」と語り、「パリではしっかり勝負していきたい」と決意を明かした。
パリ2024五輪のマラソンコースは、多くの歴史的建造物を通過する美しいコースだ。一方で、起伏に富んだ難コースでもある。試走済みの鈴木は「非常にタフなコースで、中間の激しいアップダウンにいかに対応するかが問われる」と、具体的なポイントをあげた。
これから試走するという一山も、「すごく起伏の激しいコースだと聞いているので、実際に走ってみたときにそれまでの練習のほうがきつかったと思えるように、しっかり走り込みをして自信を持ってスタートラインに立ちたいです」と話した。同じく試走を控える前田も、練習の重要性に触れる。
「コースはすごくタフだと聞いています。しっかり足作りをして、しっかり走り込んでいきたいです」
また、この日はJMC(ジャパンマラソンチャンピオンシップシリーズ、詳細は文末の注釈を参照)シリーズ3の表彰式が行なわれ、女子のマラソン代表補欠となった細田あい(エディオン)が出席した。表彰式後に取材に応じ、「同じ代表としての気持ちを忘れず、(五輪へ向けて)戦えるように準備してきたい」と、しっかりとした口調で話した。
会見では3人揃って笑みをこぼす場面も
続いて、男子の小山直城(Honda)と赤﨑暁(九電工)がステージに立った。昨年のMGCで小山が優勝を飾り、赤崎が2位となった。3人目はMGCファイナルチャレンジで設定記録を破る選手が表われなかったため、MGC3位の大迫が内定を得た。男子の補欠はMGC4位の川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)だ。
小山は会場に良く通る声で話す。
「五輪は自分にとって長く目標にしてきた夢の舞台ですし、今回この代表のユニフォームを着ることができて、とても嬉しく思っています。五輪では8位入賞、ひとつでもいい順位を目標として、準備、対策をしっかりして、良い状態でスタートラインに立てるように頑張っていきたいと思います」
赤﨑も落ち着いた様子で、マイクを引き寄せた。
「代表としての自覚が、少しずつ出てきました。一日一日を大事にして、いま自分がすべきことをしっかりとやっていこう、自分の目標へ向かって頑張っていこう、という気持ちです」
小山選手は「五輪は夢の舞台」と声を弾ませた
早期の代表決定には、メリットとデメリットがある。小山は「試合に出るたびに注目されるのは、やはり難しいところがありました」と素直な思いを明かした。そのうえで、「五輪に向けては、それもいい経験になっています」とプラスにとらえている。
赤﨑はMGC出場後に、10000メートルと30キロで自己新をマークした。しかし、チームで出場した2度の駅伝では、本来の走りを見せられなかった。
「駅伝は日本代表として不甲斐ない結果で、知らず知らずのうちにプレッシャーに負けていたところがありました。そこはしっかりと改善していかなきゃいけない、というのはあります。日本代表ではありますけど、まずは自分が満足できる結果を出すための気持ちの持っていきかたができたなかで、2月(の青梅マラソン30キロ)はいいレースができました。走りだけでなくメンタル面も鍛えていく必要性が、これからはあるのかなと」
ふたりはともに、昨年11月に五輪のコースを試走している。小山はヨーロッパへ行くのが初めてだったと言い、「まずは15時間の移動時間と7時間の時差が、大変かなと感じました」と語った。そのうえで、本番へ向けたイメージを膨らませている。
「パリのコースは高低差が150メートルありまして、国内のレースではなかなかない。国内のどのレースに似ているとかは思いつかないぐらい、アップダウンが厳しいコースでした。路面の石畳がありましたが、前半と後半の少しなので、そこはあまり気にならなかったです」
赤﨑選手は「代表の自覚が出てきています」と気持ちの高まりを言葉にした
赤﨑もアップダウンに触れた。攻略のイメージを構築している。
「途中で約10キロ近くアップダウンがあったので、そこの対策をしっかりやらないと最後まで先頭争いはできないのかな、と感じました。2月に走った青梅の30キロは、前半登りの後半下りでパリのコースに少し似ていましたので、いまの自分の力を知ることができました。五輪までの残り少ない時間で足りないところをしっかりと克服して、戦える状態に持っていけたらと思っています」
記者会見では、日本陸連の瀬古利彦ロードランニングコミッションリーダーからも質問があった。「パリのコースは自分たちにプラスか、マイナスか」と聞かれたふたりは、「プラスだと思います」と口を揃えた。
その理由について、小山はこう話した。
「力勝負では海外選手に負けてしまうかもしれませんが、アップダウンと暑さがあれば、日本人でも十分に可能性があるかなと思っています」
赤﨑は所属先の総監督から、「坂は苦手ではない」と言われているそうだ。「総監督がそう言うのなら自分でも強いと思いますので、しっかり戦えます」と言葉に力を込めた。
積み上げてきたもののすべてを力に変えて、タフに、しなやかに、しぶとく、世界の舞台に挑む。厳しい競争をくぐり抜けた6人のランナーは、日本マラソン界の思いを背負ってスタートラインに立つ(文中敬称略)。
※日本陸上競技連盟が指定するマラソン大会のシリーズ。2021年に創設が発表され、国内外のレースをグレード分けし、一定期間内の獲得ポイントで総合成績を決定する。
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