アルペンアウトドアーズ(Alpen Outdoors)大石店長に聞く、キャンプのイロハ 第1回「最近のキャンプ事情編」
ここ数年グンと伸びてきたアウトドア人気。「最近始めました」「これから始めたいんだけれど、実際のところどうなの?」なんて関心を持っている人も多いのではないでしょうか?
そこで今回から全6回に分けて、アウトドアの中でも特に注目度の高い「キャンプ」についてのイロハを学んでいきます。
インタビューするのは、160ブランド5万点以上、日本最大級の品揃えを誇る、アルペンアウトドアーズ春日井店の大石店長です。
第1回は「最近のキャンプ事情」。お客様に情報や商品を提供する、いわばキャンプの最前線で活躍しているプロフェッショナルから、お話を伺います。
――日本のキャンプスタイルの特徴は?
日本はこれまで、海外のキャンプスタイルのように成熟したスタイルが確立されているというわけではありませんでした。しかし、ここ1〜2年で「日本らしい・日本っぽい」スタイルが出来てきたのかな、と感じています。
感覚的ではありますが、日本人というのはアレンジしたりデコレーションしたりするのが上手だと思います。アニメもだし、ファッションもそうですよね。キャンプも同様で、SNSを見れば一目瞭然なように、自分なりのスタイルを作って表現している、というのは海外にはないスタイル。キャンプというジャンルのなかで、テントを中心にアレンジしながら「らしさ」を創り上げて表現していくのは、日本独特なのではないでしょうか。
例えばそれを「家」という大きな単位でやろうと思うと、結構お金がかかる。それよりも「自分がこういう部屋に住みたいな」という憧れを、キャンプという限られた空間と時間のなかで再現するという楽しさが、今の日本のキャンプスタイルの特徴になっているのかな、と思いますね。
――昔は「キャンプ」というと男性がメイン、というイメージが強かったですね。
そうですね。以前はキャンプというと、「お風呂は?」「外で寝るんでしょ」「虫がぁ!」など、どちらかというと女性があまり好まない要素の多いレジャーと思われていました。しかし今は女性がどんどんキャンプをされるので、そこに男性がついていくという、昔とは逆の現象が起こっています。女性が積極的に参加するようになったというのが、今のブームを牽引している要因のひとつではないかと思います。
――女性が積極的に参加するようになったことで、昔とは違う形でブームが来ていますか?
今キャンプが再注目されブームに至ったのには、流れがあったんです。何年か前に「山ガール」や「フェス」ブームが到来したことで、それまで興味を持っていなかった人でもアウトドアに興味を持つようになりました。
そこにスキレットやダッチオーブンを使った料理ブームが重なり始めアウトドア料理へと派生していって…、今度はそれを屋内だけではなく屋外でも振る舞いたい、楽しみたい、という流れで表に出てきたわけです。それが、現在につながっているのだと思います。
そのブームが一瞬だけではなく、ここ何年かずっと進化し続けているが今の状態ですね。
――これからキャンプを始めたいと思っている人の購入傾向は?
ひと昔前であれば「コスパ重視」とか言われていましたが、今は自分のやってみたいスタイルというのをSNSや雑誌等でイメージしやすいこともあり、最初からしっかりと予算を組んで来店されるお客様が多いです。
お客様との会話のなかで「一式揃えると30万円くらいですよね」と普通におっしゃるので、そこは昔とは大きく変わったところだと言えます。その予算を想定しているので、実際のところ、10万円以上するテントがよく売れています。
――とはいえ10万円以上する買い物になるから、ショップで確かめたい、と。
今のご時世だと、正直ネットで買い物をした方が安く買えてしまうんです。しかし、なぜ当店で高額なテントを買ってくださるかというと、パソコンなどの画面上だけでは分からないことを自分の目でたくさん知ることができるから。
当店では「試し張りサービス」を行っていて、在庫があるテントは全て試し張りができるよう専用スペースも設置しています。お子さんが小さいから、お父さんが一人で立てられるのか。二人でなら短時間で立てられるか。テントのなかにコット(簡易ベッド)を入れてもゆとりはあるのか…。すべて確認できるというのは、大きな安心感になっていると思います。
――ネットショッピング全盛と言われている時代に一見逆行しているように見える販売方法が、むしろニーズにマッチしている?
モノだけでなく、購入後も情報などをプラスして得ることができますからね。使ってみてどうかとか、キャンプ場を紹介してもらえませんかとか、次はこういうものを揃えていきたいんだけれど、次はどうしたらいいかなど、必要な情報をお話しするなかで提供できるというのが、いちばん大きいのではないでしょうか。
――モノよりもコト、を重視する時代になっていると?
例えば小さいお子様連れのファミリーというのは、頭のなかで「年に5〜6回やる」とか購入前に想定されています。お子様が大きくなるまでの間、2〜3年くらい一緒にキャンプをするとなると、仮に年5回のキャンプを3年間やると計15回。15万円のテントで15回となると、1回のレジャーにつき1万円なんですね。
家族旅行をするよりもコストが安いうえに、しっかりと家族の思い出ができることを考えると、決して高い投資ではないのです。
――家族の時間を大切にしたい、という人が増えていますか?
ゆとり世代、といいますか、当店によく来ていただいているお客様層がそういう世代が多いです。贅沢してどこかに行くのではなく、贅沢しなくても家族や仲間、友達同士の時間を大切にしている人が多い気がします。
そういった背景も、キャンプが流行している理由のひとつなのかもしれません。
第2回 につづく
■プロフィール
アルペンアウトドアーズ春日井店 店長
大石 真史
学生時代は自転車で野宿をしながら旅をしたり、スキューバやパラグライダーのライセンス取得などアウトドア好きが高じて株式会社アルペンに入社。全国屈指のキャンプ専門店の店長をつとめる傍ら、自らも年間40〜50日キャンプを楽しみ、そこで得た経験や情報をお客様に提供している。
■取材場所
160ブランド5万点以上、日本最大級の品揃えである体験型アウトドアショップ。メジャーブランドはもちろん、ガレージブランドの商品が豊富なのも特徴のひとつ。休日イベントだけでなく、平日にご来店される小さなお子様連れのお客様向けのワークショップやマルシェ等も企画中。