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football2018.10.03

岡部将和(ドリブルデザイナー)、諸江剣語(フウガドールすみだ)スペシャル対談【後編】

[前編は こちら ]

今やサッカー日本代表クラスの選手がサポートを乞うほど、確立した理論を持つドリブルデザイナー岡部将和。そして、その岡部将和が最強ディフェンダーとして認めるフットサル元日本代表の諸江剣語。前編では、それぞれの長所に触れながら、互いの存在意義を確かめ合っているようだった。後編では、それぞれが持つドリブル理論やディフェンス理論についての議論が進み、それぞれが持つ今後の夢・目標を語ってもらった。

諸江:マーさんに質問なんですけど、対戦して嫌なのはどんなタイプの選手ですか?

岡部:自分の理論は、間合いさえしっかり確保できれば、ディフェンダーにボールを奪われることなく、99%抜くことができるっていう理論です。

しっかりと間合いを取り、かつ自分が思った行動をとることができる状態さえ作れれば、ディフェンスに対しての怖さは無いんです。

だけど、逆に、思った行動を取れないくらい間合いを縮められるとすごく嫌かな。剣語はドリブルが得意な相手に対しては何を意識するの?

諸江:マーさんが言った通りなんですけど、ドリブルが得意な選手に間合いを作られて、ボールを前に運ばれちゃうと、こっちが厳しくなっちゃうので、その間合いを消して、まずは相手を止めるっていうことを意識してますね。

でも、間合いを縮めた時に一発でかわされてしまうこともあるし、その間合いの縮め方が難しいんですけどね。
 


岡部:そこが絶妙だからな、剣語は。

諸江:いやいや。マーさんは戦ってみて、具体的に嫌だった選手っていますか?

岡部:試合の中では、個人というより、チームの約束事を持っているチームは嫌だよね。

“どんなに中に行くぞ行くぞってみせられても、絶対縦を切りなさい”とか、“ここのラインよりは絶対下がっちゃダメ”とかいった守備の約束事を持っている組織だと、こっちが相手を動かそうと思っても、なかなか動いてくれないから、やりづらさはある。

それでも自分は打開できるようになりたいので、今も研究中なんだよね。

諸江:それはどういうことですか?

岡部:例えば、決まりごとよりも高い次元で、本能的に動いちゃうことってあるじゃん。

どんなに組織として“ここから前には奪いにいっちゃダメだよ”っていう約束事があったとしても、いっちゃうとか、“ここより後ろに下がっちゃダメだよ”っていう約束事があっても、下がっちゃうみたいな。
 


諸江:究極ですね。組織の約束事を、個人の本能に訴えかけて打ち破るっていう。

岡部:あとは剣語(笑)。

諸江:いやいや、そういうのは要らないっす(笑)。

岡部:逆ジュース(笑)。

諸江:もう少し聞いていいですか。日本人って、ドリブラーが少ないし、そもそも育ちにくかったりすると思うんですけど、ドリブラーになるために必要なこと、大切なことって何ですか?

岡部:実際に日本全国を回っていて思ったのは、ドリブラーになる技術を持っている子はたくさんいる。世界的にも日本人の技術は高いと思うんだけど、結局それを表現できる人が少ないんだよね。

その理由は色々あって、例えば、ミスを許さない社会だったり、個よりも組織の方が大事だっていう先入観だったりね。

一番大事なのは、どんな環境であっても、自分がやるって決めたら、何としてもやろうとする気持ちを持っているか持っていないか。

この選手がドリブルしたら凄いだろうな、っていう子はたくさんいると感じているからこそ、挑戦する気持ちの大切さを伝えたいよね。試合で表現する勇気とかね。
 

向かい合ってパスをする岡部と諸江


諸江:そういった表現力って、幼い頃からの環境ってすごく大事ですよね。指導者の声のかけ方とか。

岡部:そうだよね。その点、フウガドールすみだってすごいと思う。どんどん若い選手が出てきて、のびのびとプレーして結果出してるじゃん。それって技術だけじゃなくて、メンタル面が大きいでしょ。

選手たちへの声がけとかサポートの仕方も、フウガって一流だよね。そして、そのチームの顔で、キャプテンとしてチームを引っ張る剣語。

諸江:やめてください(笑)。

−岡部さんは日本全国を回ってチャレンジすることの重要性を訴えかけています。諸江選手は2020年ワールドカップを目指しています。それぞれの現状を踏まえて、改めて今後の夢・目標を教えてくだい。

諸江:そうですね。個人としては日本代表に入ってワールドカップに出たいという夢を持っています。目標としては、チームでタイトルを取るっていうことですね。

まだ僕たちがFリーグに上がってから、一つもタイトルを取れていないので、何とか頑張りたいです。
 

強くボールをける諸江


−夢や目標を語ることってすごく重要ですよね。

諸江:そうですよね。こうして夢や目標を言うことによって、自分も頑張らなきゃならなくなりますし、言ったことに対する責任も自覚も生まれますしね。

中には“いや、無理だろう”って思う人もいるかもしれないんですけど、それでも言うのは自由ですし、頑張るのも自分ですからね。

岡部:素晴らしい。動画撮っておけばよかった(笑)。

−岡部さんは如何ですか?

岡部:自分はドリブルデザイナーとして、ドリブルを通して勇気を持って挑戦することの大切さやその素晴らしさを伝えたい。

今出来ないことは、チャレンジしなかったら一生出来ないままなので、まずやってみようということを発信し続けたい。

そのための夢として2つあって、一つ目は、メッシやネイマールのようなバロンドールを取る選手をサポートすること。

もう一つは、世界196カ国をドリブルクリニックで回りたい。今、日本は全国を回ったんですが、海外はまだ4カ国くらいかな。今はその夢に向かって準備を進めているところです。

−2人とも大きな夢・目標を持って行動されていますね。読者にとってもすごく刺激になると思います。それぞれの夢・目標に向かってこれからも頑張ってください。応援しています。

岡部:はい、次のチャレンジに向けて頑張ります。どうもありがとうございました。

諸江:マーさんに負けないように僕も頑張ります。ありがとうございました。


実はこの対談、企画段階では、最強ドリブラーと最強ディフェンダーの対比構造を作り出したいと思っていた。しかし、筆者の目論見は脆くも崩れ去った。なぜなら、2人にはあまりにも共通点が多すぎたからだ。
周囲への気使い・配慮ができ、誰からも愛される人柄。その人となりからは想像もつかないようなサッカー・フットサルへの飽くなき向上心。夢・目標を自ら語り、そこに辿り着こうとする強い意志と行動力。

これらの共通点があったからこそ、2人はそれぞれ違う道を歩みながらも、こうして時々交わるのではないか。これからまだまだ続く彼らのチャレンジを最後まで見届けたい。心からそう思える取材だった。
 

腕を組む諸江と岡部

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