イチロー率いる『KOBE CHIBEN』、女子高校野球選抜と東京ドームで熱戦!草野球からの野球愛と未来へのメッセージ
9月23日に「高校野球女子選抜」とイチローさん率いる野球チーム「KOBE CHIBEN」とのエキシビションマッチが東京ドームで開催された。昨年、松坂大輔さんが加わったイチロー選抜には、今年、松井秀喜さんが名を連ね、より注目度は高まった。昨年の入場者数は9,399人。ひとつのイベントとして、成立しうるスケールに育ちつつあることを実感させたが、今年はスタンドに29,800人を超えるファンが集まった。
試合は、10月に51歳を迎えるイチローさんが、最速137キロの球を投げ、141球で9回を完投。松井さんは、試合の初回に中堅守備中に右太もも裏を肉離れするも、8回の最終打席で右翼へ3点本塁打を放ち、観客に感動を与えた。44歳の松坂さんも、左翼での守備で軽快な動きを見せ、打撃でもそのセンスを発揮。イチロー率いる「KOBE CHIBEN」が17-3で見事な勝利を収めた。
実はわたしも初めて知ったのだが、イチロー選抜と対戦する高校野球女子選抜には、いわゆる年代別の代表チームとは少し違った選考基準が設けられている。卒業後も野球を続ける高校3年生であれば、どれほど戦力的に劣るチームに所属していようが、挑戦が可能なのだ。言い方を変えれば、どれほど傑出した才能をもっていたとしても、下級生はメンバーに加わることができないことになる。
純粋にチーム力のことのみを考えるならば、学年の縛りなど設けず、実力第一で選んだ方がいいに決まっている。ただ、そうした当たり前のやり方をとった場合、選ばれるのはいわゆる名門校からばかりになってしまうだろう。
だが、チームの実績に関係なく、3年生ならば誰でも挑戦することができるスタイルならば、戦力的に劣るチームに所属していても、東京ドームのフィールドに立つ道、大観衆の見守る中でプレーする道、なにより、日本球界のレジェンドたちと戦う道が用意されたことになる。
残念ながら、いまの日本で女子が野球を続けていくのは簡単なことではない。真剣に野球をやりたいと願っても、野球部がなかったり、せいぜい同好会レベルのチームしかないといったことも、多々あるだろう。だが、イチロー選抜との試合が存在することで、どこかに存在する孤独なベースボール・ラバーに目標を与えることができる。
日本という国自体の人口が縮小傾向にある中、スポーツをする高校生の数も着実に減り続けている。サッカーも、野球も、大幅に減った。ラグビーに至っては、地方予選の開催すら危ぶまれる時代に突入しようとしている。そんな中、女子野球は平成7年に62だったチーム数が119に、1,519人だった登録人数が2,937人へと、ほぼ倍増に近い数字を残している。もともとの規模が極めて小さかったとはいえ、いまの時代を考えると、なかなかあることではない。
イチロー選抜対高校野球女子選抜の対決が始まったのは、3年前のこと。このイベントが女子野球の競技人口増加に一役買っている、と断定するのはいささか乱暴すぎるかもしれない。それでも、今年の戦いに参加する高校3年生にとっては、入学する以前からこのイベントは存在していた。彼女たちにとって、大きな張り合い、目標になっていたことは間違いない。
試合を振り返ったイチローさんは、女子チームの実力に驚きを隠せなかった。「合宿を重ねて準備しているとは聞いていたけど、あんなに打ち込まれるとは思ってなかった。途中で試合が終わらないんじゃないかって、不安に襲われて、正直怖かった。今まで上手いなとは思ったことあったけど、怖いって感じたのは初めて。驚いたよ」と目を丸くして話した。
また、女子高生たちの野球への姿勢にも感銘を受けた。「相手への敬意が感じられる、素晴らしい試合だった。こんなに相手をリスペクトした野球は見たことがない。これからも、自分の体が動く限り、女子野球を応援したいと思ったよ」と語り、相手の良いプレーに対して拍手を送る姿勢にも心を打たれたという。
イチロー選抜と女子選抜の試合は、これで4年目になる。「あの試合に出るために、小学生が一生懸命頑張ってる。そうなると、俺もいつまで続けないといけないんだって話になるけどね(笑)。でも、そんな小さなきっかけを作りたいと思ってるんだ」と意気込みを語った。
試合後、女子高校野球選抜の選手たちとの対面でも、「今日は本当に楽しかったね。でも、ただ楽しいことだけやってきたわけじゃないでしょう? ここに来るまでには、いろいろな厳しさに耐えてきたからこそ、今があるんじゃないかな」と選手たちに話しかけた。さらに、「よく『練習は裏切らない』とか『努力は報われる』って言われるけど、もう一歩先を見て欲しい。見返りを求めたら返ってこない、そんな感じじゃないか?」と続けた。
「努力っていうのは、自分で決めるものじゃない。他人から見たら努力だと思われるけど、本人にとっては普通のこと、そんな状態を目指してほしい。それができたら、すごくいい状態だ」とアドバイス。選手たちは真剣な表情で、その言葉に耳を傾けていた。
最後にイチローさんは、「もしどこかで僕を見かけたら、ぜひ声をかけてほしい。野球をやっている限り、またどこかで会いましょう」とメッセージを残し、選手たちにエールを送った。
この試合は確実に女子野球のレベルアップに貢献しており、女子野球の未来を明るく照らしている。
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