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football2020.03.18

『南野拓実はマラドーナやメッシではないが、フォルランやスアレスには手が届くかもしれない。』

最近、聞かれる機会が増えた。

「南野ってどうなんですか?」

正直、答えに詰まる。サッカーの世界において、個人の未来を予測するのは簡単なことではない。少なくとも、チームの未来を予測するよりはよっぽど難しい。いいフロント、いい監督、いい選手、いいファンがいるチームはまず間違いなく結果を残すが、素晴らしい才能を持ちながら消えていった選手は数えきれないぐらいいる。

一方で、若いころはあまり期待されていなかったにも関わらず、プロに入って化ける選手もいる。中村俊輔、本田圭佑が所属していたJクラブでユースにあがれなかったのはよく知られているし、スペイン2部でゴールを量産中の岡崎慎司は、高校時代の恩師からプロになること自体を反対されていた。

才能豊かな選手が一つの敗戦や一度のケガで人生を棒に振ることもあれば、凡庸な選手が重要な出会いや劇的な勝利で人生を一変させることもある。だから、サッカー選手の未来を占うのは難しい。

……と、たっぷりと言い訳をさせていただいた上で、わたしなりの答をだ。

まず確実に言えることから。

南野はマラドーナやメッシではない。どれほど化けても、歴史に名を残す世界的なスーパースターになれる器ではない。

日本が生んだ最高の才能、というわけでもない。相当上のランクにあるのは事実としても、彼よりも才能を感じさせてくれた選手は何人かいた。

……とこう書くと、南野をディスっているかのように受け止められる方がいるかもしれないが、そんなつもりはさらさらない。南野はマラドーナやメッシではないが、フォルランやスアレスのクラスには手が届くかもしれない。日本が生んだ最高の才能というわけではないが、本田圭佑や中村俊輔と比べれば天賦の才では若干上かな、と思うし、レバークーゼン時代のソン・フンミンよりはだいぶいいのでは、という気もする。
ちなみに、我が師匠セルジオ越後に言わせれば、「日本サッカーが生んだ天才はひとりだけ。小野伸二だけ」だそうだが、生意気な弟子は「いや、礒貝洋光もでしょ」と突っ込んだりしている。

ただ、小野にせよ礒貝にせよ、それから菊原志郎にせよ伊東輝悦にせよ、幼いころから天才の名を欲しいままにしていた選手たちは、その期待値を越えることなく現役生活を終えた(小野はまだ現役だが)。セレッソが生んだ最高の才能と言われた柿谷曜一郎も、ヨーロッパでは結果を残せなかった。

だから、持って生まれた才能のコンテストは、この際、ほとんど意味がない。歴代ナンバーワンではないものの、南野には間違いなく才能はあるし、それはリバプールやクロップ監督に「欲しい!」と思わせるだけのレベルにはある。あと何年かして、彼が日本の生んだ、いやアジアが生んだ最高の選手と称賛されている可能性もある。

まだ10代だったころの南野にインタビューをしたことがあるが、正直、びっくりしたことを覚えている。
(え、こんなにまともな子なんだ……)。

非常に残念なことに、日本では才能に恵まれた選手の多くが、その才能ゆえにもてはやされ、結果的にコミュニケーション能力を育まないままオトナになってしまったケースが珍しくなかった。自分から行動を起こさなくても、相手がすり寄ってきてくれるから、である。

日本でプレーしているうちはそれでもいい。けれども、海外にいけば、自分からアクションを起こさなければ向こうは見向きもしてくれない。日本が生んだ才能の多くは、そこで挫折してしまったともいえる。

南野は違った。十分な才能を持ちながら、彼はしっかりと会話を成立させ、かつ、聞き手に不快感を与えないようにとの気遣いまでしてくれていた。彼よりも才能のある選手は何人かいたが、彼ほど礼儀正しく、自分の気持ちをきちんと言葉にした10代の才能はほとんど記憶にない。

察するにいま、南野は新しい環境にアジャストすべく、必死にもがいているところだろう。惜しむらくは、リーグでのデビュー戦で、サラーがお膳立てしてくれた決定機を外し、移籍後初ゴールをフイにしてしまったこと。あれを決めていれば、状況はまた違っていたかもしれない。

同じ時期にザルツブルクから移籍していったハーランドは、すでにドルトムントで怪物と評価されつつある。目下のところ、彼と南野の差を作り出しているのは、デビュー戦での結果である。近い将来、ハーランドも間違いなく壁にぶち当たるはずで、そこで南野が立場を逆転させることは十分に可能だと思う。

というわけで、わたし個人としては南野には非常に期待をしている。ただ、節操のなさを指摘されるのを承知で白状すると、久保建英にはもっと期待してしまっている。リーガで決めた3点のうち、2点が右足によるものって……お前、化けモンやな。

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