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other2019.07.01

オールブラックス(ラグビー・ニュージーランド代表)『ラグビー世界最強国、栄光の黒衣ジャージーと歩んだ強さの歴史』

オールブラックスのジャージ―、そのジャージーには憧れが染み込んでいる。

「オールブラックス」の愛称で知られるラグビー・ニュージーランド代表は、問答無用のラグビー世界最強国だ。

2015年に史上初のラグビーW杯連覇を達成し、世界ランキングでは2009年から約10年間、なんと1度たりとも首位を譲っていない。
※追記:2019年8月19日に最新ランキングが発表。2009年11月から約10年間(509週連続)頂点に君臨していたニュージーランドはその座から落ちた。
※日本代表は11位(2019年6月現在)

今年9月に開幕するラグビーW杯日本大会では、前人未踏の3連覇を目指している。

ニュージーランドでは「ラグビーは宗教」といわれるほど社会、文化にラグビーが浸透している。Hポールが立ったラグビーグラウンドのない町、学校を探すことは困難であり、多くの男女が幼少期から楕円球を追う。

ニュージーランドに生まれた男子は、一度オールブラックスになった自分を夢想し、ラグビー小僧を育てた親は、一度はオールブラックスになった息子を夢見る。

だから両親に初めてのオールブラックス選出を伝える電話は、涙がつきものだ。現在リコーでプレーするエリオット・ディクソン(ニュージーランド代表3cap)も“涙の電話”を経験した一人である。

そうして黒衣をまとってピッチに立ち、大観衆に囲まれてニュージーランド国歌『God Defend New Zealand』を歌う。黒衣に憧れていた少年時代がよぎる。昨年25歳で黒衣デビューしたカール・トゥイヌクアフェは国歌斉唱中、頬を伝う涙を隠さなかった。

そのジャージーには伝統が染み込んでいる。

オールブラックスの圧倒的な存在感は、100年以上前から延々と続いている。

国代表の初結成は1884年。この時、ジャージーに初めて先住民マオリと縁の深い「シダの葉」があしらわれ、デザインを変えながら現代に受け継がれている。ちなみに当時のジャージーは濃紺であり、黒に変わったのは1893年だった。

そして1905年、ニュージーランド代表は歴史的な大成功を収める。

初の英国遠征をおこない、「32戦31勝1敗」という驚異的な戦績を残したのだ。

唯一の黒星は遠征最後のウェールズ戦(0-3)だったが、この試合ではレフリーがトライを認めない大誤審があったと云われており、トライを決めたはずのボブ・ディーンズは死の直前、「あれはトライだった」と言い残したという。

当時のニュージーランドは英国の植民地(1947年独立)だ。南方の小国であるニュージーランドが、“本国”の英国で勝って勝って勝ちまくる――。この時の人びとの歓喜は計り知れない。『オリジナルズ』と名付けられた遠征メンバーは尊崇を集め、そしてラグビーを国第一の誇りとする歩みが始まるのだった。

そのジャージーにはプライドが染み込んでいる。

オリジナルズから1世紀が過ぎ、代表の平均身長は175センチから187センチになったが、その間もオールブラックスの黒衣は威光を放ってきた。

※撮影 多羅正崇

1924年から始まった19年ぶり2度目の英国遠征は、なんと28戦全勝。スペインの無敵艦隊になぞらえて『インヴィンシブルズ』と呼ばれ、世界最強の地位はますます堅固となった。

1987年に始まったラグビー世界一決定戦「ラグビーW杯」では、下馬評通りに優勝。母国開催となった2011年大会では、2度目の載冠を果たしている。

栄光の黒衣ジャージーは、1991年大会までは左胸にシダの葉が入るのみだったが、1995年大会から右胸にW杯ロゴが、1999年大会からはメーカーロゴも入った。

現在は機能性とデザイン性がさらに追求され、ラグビーW杯日本大会では最新モデルで臨む(最新の市販モデルでは、マオリ文化からインスピレーションを得て、「Y-3」がオールブラックスの今大会向けシャツをベースにデザイン)。

オールブラックスはラグビー世界NO.1であると同時に、世界的な人気も兼備する。

2014年、オールブラックスはアメリカ・シカゴで34年ぶりの試合(VS.アメリカ代表)を行ったが、その観客数が実に6万2000人。舞台はアメフトやバスケの人気が先行するアメリカ、である。

日本での人気も根強い。昨年10月に神奈川・日産スタジアムで行われたニュージーランド代表×オーストラリア代表(ブレディスローカップ2018)には、日本ラグビーの最高記録となる4万6168人が集った。

つまり日本ラグビーの国内最多観客動員は日本代表戦ではない。試合前に伝統の戦いの舞い『ハカ』が披露される、オールブラックスの試合なのである。

今年9月20日に開幕するワールドカップ日本大会。ニュージーランド代表“オールブラックス”は大本命だ。

上昇ムードのウェールズ、南アフリカ。実力国のイングランド、アイルランド。強敵がひしめくが、11月2日のW杯決勝の場にオールブラックスがいなければ、それは番狂わせには違いない。

そのジャージーには人びとの畏怖が染み込んでいる。日本・アジア初開催となるW杯日本大会では、オールブラックスの黒衣が持つ力を大いに体感することができるだろう。


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