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other2021.06.04

ダンス上達の近道は「突き抜けた仲間同士の技術シェア」FISHBOY(CyberAgent Legit監督)がダンスに魅了され続ける理由

日本では、2012年に中学校で必修になったことなどを受け、ストリートダンス人口がおよそ600万人にまで拡大し、今もなお年々増加傾向にあるという。そのような社会状況のなか、2021年1月には初のプロダンスリーグの「D.LEAGUE」が開幕。その勢いに更なる拍車をかけている。

その「D.LEAGUE」に参入した「CyberAgent Legit(サイバーエージェント レジット)」で、監督を務めるのは、ダンサーのFISHBOY氏だ。

ダンサーとしては、世界大会の優勝を経験。その一方で、実兄の中田敦彦氏(オリエンタルラジオ)と結成した「RADIO FISH」のメンバーとして、『PERFECT HUMAN』を大ヒットさせるなど、プロデューサーや振付師としても幅広く活躍するFISHBOY氏に、ダンスとの出会いや、これまでのキャリア、そしてダンスが上達する方法についてお伺いした。


――まずは、ダンスとの出会ったきっかけを教えてください。

小学生の時、父が「宴会芸で使っていた」というムーンウォークを教えてくれたことが、最初のダンスとの出会いでした。子供の頃は、父の仕事の影響もあって転校を繰り返していたのですが、転校先の学校で自己紹介をするときにムーンウォークを見せると、注目を集めることができて、いじめられずに済んだ。いわば「処世術」として使っていました。

その後、小学校6年生の時に東京に引っ越し、本格的にダンスの世界に足を踏み入れたのは中学生の時ですね。当時の僕はバンド活動をしていたのですが、ある時、吉祥寺駅のガード下で回りながら踊っているストリートダンサーの姿を見て、「ダンスの方が向いてそうだな」と思ったんですよ。周囲にダンスをしている人がいなかったことも、その決断を後押ししましたね。



――当時は、どのようなダンスを踊っていましたか?

当時はブレイクダンス(ブレイキン)を踊っていました。今でこそダンスはメジャーになりましたが、当時は「ダンス」といえばジャニーズのイメージが強くて…。

「ジャニーズでも入りたいのか?」と言われるのが嫌で、しばらくは両親にさえも、ダンスの練習をしていることを隠していました。


――ダンスレッスンにも通われていらっしゃったのでしょうか?独学で習得されたのですか?

近所にある日焼けサロンで、ダンスレッスンを受けられる場所があったので、貯めた小遣いで通っていました。お金がない時は、家の近くの公園でも練習をしていましたね。


――本格的にダンスに取り組むにあたり、「ターニングポイント」はありましたか?

最初の転機は、中学3年(2000年)の夏でした。友人に財布を見られて、中に入っていた日焼けサロンの会員カードが見つかってしまったんです。

その時、「そんなに肌が白いのに、日焼けサロンに通っているの?」と聞かれまして…。ダンスのレッスンに通っていることを素直に伝えたんです。

するとその友人が、俳優として活動していたこともあって、「ダンスに興味があるから、一緒にレッスンに行こう!」と言ってくれて…。最終的にもう一人も加わって、三人で通うことになりました。

その後の数ヶ月は3人で同じレッスンを受けてみたのですが、僕は友人よりも明らかに吸収が早くて、僕が「ダンスに向いている」ということに気づかされた瞬間でしたね。



――その後、さまざまな大会には、どのような流れで出場されたのでしょうか?

その後もずっとダンスの練習を続けていたのですが、ある時、同い年のダンサーにダンスバトルを仕掛けられたことがあったんです。バトルを通じて交流を深めているうちに、「ダンスコンテストに出よう」と声をかけてもらって…。その方が後に僕が組むことになるチームのリーダーだったんですよ。チームでコンテスト出て、大会で優勝するようになったという経緯ですね。


――2009年にパリの世界大会で優勝を勝ち取られましたが、どのような道のりでしたか?

当時は、沖縄に月1回ほど通って、カフェやドミトリーを経営しながら、ダンスに励んでいました。沖縄にいると身体の調子が良くて、ダンスのキレも明らかに違う。そんなコンディションの状態が良いなかで先輩に誘われまして…。パリで行われた一番大きな世界大会に出場し、優勝を勝ち取ることができました。


――優勝後に、ご状況や心境の変化はありましたか?

パリの世界大会で優勝した後は、「オリエンタルラジオのあっちゃん(中田敦彦)の弟」などと注目していただいて…。もともと、「稼げないだろうな」と思ってダンスを続けていたのですが、「もしかしたら、自分にも何か貢献できることがあるかもしれない」と感じたことが、その想いが、今の活動にもつながっていると思いますね。


――ダンスを通じて得た、掛けがえのない体験や財産となったことは?

言葉で通じない部分のコミュニケーションですかね。僕自身は、ダンスをやっているおかげで、海外の友達がとても増えました。海外の人々との交流の中で、特に印象に残っているのは、2011年にチェコで行われた「ストリートダンスキャンプ」という大会です。キャンプ日本から講師として呼んでいただいて、山の奥で1週間くらい過ごす。言葉は通じないのですが、踊りを通して喜びをシェアする。ダンスを通じて味わった、さまざまな壁が無くなっていく感覚が印象に残っています。



――FISHBOYさんは、現在はCyberAgent Legitの監督に就任されています。「D.LEAGUE」に携わられた理由やきっかけを教えてください。

実際には、もっと前から動いている方もいらっしゃったとは思いますが…。僕が構想を聞いたのは、昨年の初めのことでした。僕自身も、「プロのリーグを作りたい」と思っていた時にお声がけをいただいて、大きなプロジェクトにエネルギー注いでいきたいなと思うようになりました。


――FISHBOYさんの考えるD.LEAGUEの見どころや魅力は何ですか?

「直接争わないところ」だと思います。「どれだけ良い作品を作れるか」が争いの焦点ですし、あえて言うなら「敵は自分自身」ということになります。自分たちが良い作品を作れば結果が出る世界なので、選手たちはみんな仲が良くて、他のスポーツで目にすることがある「ギスギスした感じ」もありません。

魅力的な作品を作るために、時に苦しみながらもベストを尽くし合う仲間として、切磋琢磨する。
そのようなスタンスが、ダンスの魅力だなと思います。


――監督の仕事で、苦労されている点はありますか?


もう大変です(苦笑)。現在の「D.LEAGUE」では、一言に「監督」といっても、さまざまなスタイルが許容されているのですが、僕は振り付けなどには口を出さないような方針を貫いています。

そのなかでも一番苦労したのが、選手とのコミュニケーションです。

15歳くらい年齢が離れている選手たちは、どうしてもさまざまな価値観の違いがある。「どうやって心を開いてもらうか」ということについては本当に考えましたし、苦労もありました。共感する努力で、徐々にコミュニケーションが取れるようになってきてはいると思いますが、「もっとできるのではないか」という課題意識も持っています。

現在、チームは8位(2021年6月4日現在)なのですが、勝てない時期は本当に辛い。僕はもちろん、選手たちも辛いストレスを抱えていると思います。でも、究極のことを言うと、負けた時の状況も知れましたし、結果を出せた時には、どこよりもドラマティックな展開になると思う。そういう未来を期待して、職務に取り組んでいます。



――ダンスが義務教育に組み込まれてから、9年が経過しました。ダンス界を取り巻く変化はありましたか?

いいことづくしでしたね。「教育」になると、まずは大人が目を向けてくれますし、動画SNSの発展によって、ダンスを踊った動画をアップロードすることも、日常的になりました。「踊る」ことへの抵抗感や恥ずかしさがなくなってきているのは、良い風潮だと思いますね。

でも、教育に組み込まれたことで、部活でダンスをする傾向が強くなってきましたが、一方ではストリートカルチャーを知らない人も増えてきた。その辺りの理解を深めてもらうことが、あえていうなら課題になると思います。


――以前からCMやドラマ他、振付を仕事にされる場面も多く持たれていましたが、振付のアイディアを出すためのアドバイスを教えて下さい。


例えば、歯を磨いたり、コケそうになって立て直した時の動きとか、日常の中にもヒントがある。それらの動きをリズムに合わせるだけで、斬新に見えることもある。まずは、あまり凝り固まらないことが大切かなと思います。


――ダンスを上達させるためには、さまざまなジャンルに手を出した方が良いのでしょうか?

まずは、ある程度のジャンルを嗜んだあと、何か突出したものを作ることが大事かなと思います。

その中で何か突出するものがあると、多くの人に認めてもらえますし、別の突出したものを持っている
トップの人たちと、技術をシェアできるようになっていくんです。なので、結果的にはダンスの上達を早めることができる。突出するものがある方が、自分のダンサーとしての可能性を広げる近道になると思います。


――今後、ダンスはどのように発展していくと思いますか?


これからの時代は、ダンス一本だけではなく、他の分野への理解や、いくつかのクリエイティブを組み合わせた発信が求められるようになっていくと思います。

「CyberAgent Legit」は、Adobeさんにスポンサーをしていただいていることもあり、映像やデザインへの感度を高め、その中でダンスを用いたコンテンツを作り上げていくクリエイター集団にしていきたい。

ダンスだけをやっているとある意味で「不自由さ」もある。その感覚を知っておくと、クリエイターとしての芽もどんどん伸びていくと思っています。


――現在、ダンスに取り組まれている方々への応援メッセージをお願いします。

「まずはダンスを選んだことは、大正解だ」とお伝えしたいですね。今後、必ずダンスの世界にはヒーローが生まれ、盛り上がりを見せるようになると思います。ダンスには、簡単なものから難しいものまでさまざまな種類があります。上達を目指すのももちろん大切ですが、まずはいろいろな方とのダンスを通じたコミュニケーションに喜びを見出してほしいなと思っています。



――最後にFISHBOYさんの今後の目標を教えてください。

「日本人全員を踊らせること」が目標ですかね。それを成し遂げるためには、若者には“夢”や“ヒーロー”、子供達には“環境”、“親への説明”が必要になると思いますが、ダンスの魅力を感じていただけるような形作りにも取り組んでいきたいなと思います。
 


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