「ダンスにすべてを賭けて」― NATSUKIが語る、夢・挫折・そしてその先へ

「絶対に安室奈美恵さんと仕事をする。」
そう誓ったのは、中学生の頃。
ダンサー・NATSUKIさんの原点にあるのは、憧れたステージへの強い執念。
だが、その道のりは決して平坦ではなかった。
「アドバイスできるレベルになってから来て」 と突き放された高校時代。
何度もオーディションに落ち、ダンスを嫌いになりかけたスランプ期。
そんな時、ロサンゼルスでのレッスンでかけられた 「君が一番楽しそうに踊っていた」 の一言が、彼女の価値観を変えた。
そして、24歳。
念願の夢が叶い、安室奈美恵のMV・CMに出演。
ひたむきに、ストイックに、そして情熱的に。
ダンスにすべてを捧げたNATSUKIが、その歩みと未来への挑戦を語る——。
■「ダンスを仕事にしたい」― 安室奈美恵との共演を夢見た瞬間
――最初にNATSUKIさんがダンスに目覚めたきっかけをお聞かせください。
私の家族はもともと舞台が身近な環境で、親戚に宝塚の方がいたり、親がミュージカルや劇団四季をよく見せてくれたんです。子どもの頃からたくさんのステージを観てきましたし、「舞台に立つ」ということ自体は特別なものではなく、自然と身近に感じていました。
でも、「ダンスを仕事にしたい」と本気で思ったのは、安室奈美恵さんと一緒にお仕事をしたいと思ったのがきっかけです。
――安室奈美恵さんに憧れたのは、いつ頃からですか?
中学生の頃からライブに行っていて、最初はただのファンとして見ていました。でも、ステージを観るうちに、安室さんご本人だけじゃなくて、バックダンサーさんたちの姿にも惹かれるようになったんです。
「ダンスって趣味じゃなくて、仕事になるんだ」って気づいたのもその頃でした。
■「全然上手くなかった」― 先生に突きつけられた厳しい現実
――ダンスを始めた当初、どうやって学びましたか?やっぱり安室さんのDVDを見て勉強したんですか? それともスクールにも通っていましたか?
そうですね、最初はDVDを繰り返し見ながら、「この振りを踊ってみたい!」と思って、何度も真似していました。そこから「もっとちゃんとダンスを学びたい」と思うようになって、ダンススタジオに通い出しました。
その後、高校を卒業してダンス専門学校に進学し、2年間ダンス学科でしっかり学びました。
――その頃はどんなジャンルのダンスをやっていましたか?
最初はジャズダンスをメインにやっていたんですけど、ヒップホップやガールズヒップホップにも挑戦していました。
特にガールズヒップホップは、女性らしい動きが入ってくるので、安室さんのようなスタイルを目指すうえでとても大事な要素でしたね。
――スクールに通っていた頃はクラスの中でも目立つ存在だったんですか?
いえ、実は全然ダンスが上手くなかったんです。
最初は本当に下手で、先生にアドバイスを求めに行ったことがあったんですけど、「アドバイスできるレベルになってから来て」と言われたんですよ。つまり、アドバイス以前の問題だったんです(笑)。
その言葉がすごく悔しくて、「絶対に成長して、ちゃんとアドバイスをもらえるようになろう」と思って、めちゃくちゃ練習しました。
もともとスポーツはずっとやっていて、体を動かすのは得意だったんですが、ダンスに関しては最初からセンスがあったわけではなくて、とにかく練習して上達したタイプですね。
――アドバイスをもらえるようになった後、どんなことを教えてもらいましたか?
技術的な部分では、動きの緩急のつけ方、止めの意識、首や腕の角度の使い方などを細かく教えてもらいました。
特にダンスは「魅せ方」が大事なので、単に振りを覚えるだけじゃなくて、どうすればカッコよく見えるのかを意識するようになりました。
高校卒業後、上京して専門学校で2年間ダンス漬けの日々を送りながら、どうやったらチャンスを掴めるのか、常に模索していました。
■「ロサンゼルスで変わった価値観」― 自由に踊る楽しさを再発見
――10代後半から20歳くらいの時期って、夢を追う上で一番悩む時期でもありますよね。「この時期までに結果が出なかったら諦めよう」みたいに考えたことは?
それはなかったですね。
「この時期までにダメだったらやめる」という考えはなく、「絶対に安室さんと仕事をする」と強く決めていたので、常に前だけを向いていました。
――じゃあ、夢に向かって最短ルートを逆算して考えていた?
はい、完全にそうですね。
「安室さんと一緒に仕事をするためには、まずどこに行けばいいのか?」を考えて、バックダンサーとして出演していた人たちのレッスンを受けに行くことにしました。
そこから、今では私の師匠とも言える先生に出会い、ずっと指導を受けるようになりました。その先生のおかげで安室さんの現場に行けたので、本当に大きな転機でしたね。
常に「この目標に到達するには、今何を強化すべきか?」を考えていて、弱点を補うためのレッスンを受けたり、自分のダンスを磨き続けました。
――夢を持つのは簡単だけど、それを持続するのはすごく大変ですよね。モチベーションを維持できた秘訣はありますか?
それが、一度スランプに陥ったことがあって、ダンスを続けるのが辛くなった時期があったんです。
オーディションに何度も落ちて、踊ること自体が嫌いになりそうになったこともありました。でも、その時に「このままじゃダメだ」と思って、ロサンゼルスにダンス留学を決めたんです。
――ロサンゼルスでの経験が転機になった?
はい、めちゃくちゃ大きかったです。
実は、専門学校時代にも一度ロサンゼルスに行ったことがあって、その時は「アメリカのダンスシーンってこんな感じなんだ!」と楽しく学んで終わったんですが、2回目に行った時は全然違いました。
その時はスランプの真っ最中で、日本のダンス業界に少し行き詰まりを感じていたんです。日本のダンススタジオって、「上手くないと前に出てはいけない」みたいな空気があるんですよね。
でも、ロサンゼルスでは下手でも堂々と前に出るし、誰もが自信を持って踊っている。
「ダンスって、こんなに自由で楽しいものだったんだ」って改めて気づかされました。
――そこで何か特別な出来事があったんですか?
そうなんです。アメリカのダンスレッスンでは、大人数で受けるクラスの最後に「ピックアップ」という時間があるんですが、その時になぜか私が選ばれたんですよ。
私はスランプの時期だったので、上手くなろうとかアピールしようとか考えずに、ただ「楽しく踊りたい」と思って一番後ろで踊っていました。
そしたら、先生が私を指名して前に出してくれて、「なんで私?」と思ったんです。でも、終わった後に先生に理由を聞いたら、
「君が一番楽しそうに踊っていたからだよ」
って言われたんです。その言葉が本当に衝撃で…。
「ダンスって、上手い下手だけじゃなくて、楽しんで踊ることが一番大事なんだ」って、心から思えた瞬間でした。
――その経験が、今の自分につながる大きな転機になったんですね。
そうですね。もしあのままスランプに陥ったままだったら、ダンスを続けるのが辛くなっていたかもしれません。でも、ロサンゼルスで「ダンスは楽しむものだ」と再確認できたことで、また自信を持って踊れるようになりました。
だからこそ、今もこうしてダンサーとして活動を続けられているんだと思います。
■「夢は待つものじゃなく、掴みに行くもの」― 安室奈美恵の現場で学んだこと
――念願の安室奈美恵さんとのお仕事が決まったのは、ロサンゼルスの日々から何年後くらいでしたか?
初めて安室さんのお仕事に関われたのが24〜25歳の頃でした。ずっと準備を続けていたので、本当に長い時間をかけて叶った夢でしたね。
■「K-POPが影響?」― ダンスファッションの最新トレンド
――ダンサーのウェアやシューズって、どういうブランドを使っている人が多いのですか?
やっぱりナイキやアディダスのようなスポーツブランドが多いですね。特にシューズは、動きやすさや耐久性が大事なので、その辺のブランドを選ぶことが多いです。
ウェアに関しては、海外のインポートブランドを取り入れたりもしますし、レッスンの時でもおしゃれを楽しめるように、自分なりのスタイルを取り入れる人が増えてきています。
――そういうダンスファッションのトレンドって、アメリカから入ってくるんですか?
必ずしもそうではなくて、最近はK-POPの影響がすごく大きいですね。
例えば、K-POPアーティストのリハーサル動画やミュージックビデオを見て、「あのスタイルを取り入れたい!」って思う人も多いです。
女の子なら、MVで着ている衣装を参考にして「今日はこういう感じでレッスンに行こう!」みたいな感じでファッションを楽しんでいますね。
――以前と比べて、ダンサーのスタイルも多様化してきているんですね?
そうですね。今は昔みたいに「ダンサーの服はこうでなきゃ!」という決まりがなくなって、みんながそれぞれの個性を大事にする時代になってきました。
レッスン中でも、自分が好きな服を着て、鏡に映る自分を「いい感じ!」って思える瞬間があると、それだけで気分が上がるんですよね。
■「バックダンサーからミュージカルへ」― 表現の幅を広げる新たな挑戦
――NATSUKIさんは、ダンスを通じてどんなことを伝えたいですか? みんながプロになれるわけではないですが、ダンスを通じて得られるものってたくさんあると思うんですが。
そうですね。ダンサーの仕事は、自己プロデュースと自己表現の場でもあるので、まずは「自分を信じること」がすごく大切だなと感じます。
自分を信じて、常にアップデートし続けていかなければならない。常にベストな自分を作り続ける仕事なので、その過程で得られる自己成長はすごく大きいと思います。
それに、ステージに立つ緊張感や、パフォーマンスを通じて得られる刺激や快感は、ダンスをしていなかったら味わえなかったものですね。
――最後になりますが、今後の抱負や展望をお聞かせください。
バックダンサーとしての活動は続けつつ、ミュージカルのような表現の幅を広げることにも挑戦していきたいと思っています。去年初めてミュージカルに挑戦させていただいたんですが、それもすごく特別な経験でした。
ミュージカルでは、バックダンサーではなく、一人のキャストとして役をいただいて出演しました。歌とダンス、そしてセリフを通じて、自分自身を表現するというのは、バックダンサーの現場とはまた違う感覚で、とても刺激的でしたね。
また、インストラクターとして、プロのダンサーを目指す子たちに教えることも大切にしていきたいですね。今も指導をしていますが、これまで自分が経験してきたことを、次の世代の子たちに伝えていくことで、少しでも彼らの成長の糧になれたらいいなと思っています。
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