髙田真希選手(デンソーアイリス・女子バスケットボール日本代表)が語る「シューズに込めたバスケ普及への想い」
2021年夏に行われた東京五輪では、女子バスケットボール日本代表のキャプテンとして、日本バスケット界初の銀メダル獲得に貢献した髙田真希選手。今シーズンも、女子バスケットボール・Wリーグのデンソーアイリスの主力選手としてチームを牽引している。
現在はバスケットボール選手としてプレーする傍ら、オールスターゲームの企画や、株式会社TRUE HOPEの社長としてスポーツイベント事業も行うなど、マルチな活躍を見せる髙田選手に、これまでキャリアやご自身が目指すバスケットボールの未来についてのお話を伺いました。
――まずは、2021年を振り返ってみていかがでしょうか?
2021年は、年明けから東京五輪に照準を合わせていた一年でした。(銀メダルという結果は)金メダルを目指していたので悔しい部分もありますが、自分たちが「日本バスケットボール界初のメダルを獲得できた」ことに対して、多くの反響があって…。色々なところに呼んでいただきましたね。「五輪に始まり、五輪に終わる一年」だったなと思います。
――印象的な仕事や、出会いはありましたか?
元々テレビが大好きで、バラエティ番組もよく見ていたんですけど、自分が「一番会いたい」と思っていた、(明石家)さんまさんと共演できたこと。実際にお会いして、私たちの試合も見てくださっていたことをお聞きした時は、本当に嬉しかったですね。
――実際に明石家さんまさんとお会いしてみて、どんな印象を持たれましたか?
番組中はもちろん、カメラが回っていない時にも、私たちに話しかけてくださったりとか…。テレビで見る姿とまったく印象が変わらない方でしたね。
――明石家さんまさんのどのようなところに影響を受けてきたのでしょう?
単純な面白さはもちろんですけど、その根底にあるさまざまな人々を笑顔にしたり、楽しませられるところですかね。さまざまな番組でMCをされていらっしゃいますが、色々な人の面白さを引き出し、その魅力を視聴者に伝えるという点ではズバ抜けている。
自分も来場していただいたお客様に「どうすればバスケットを笑顔で楽しく見てもらえるか」を考えながらプレーしているので、参考にさせていただいた部分もありました。
――Wリーグオールスター 2021-2022 in代々木(※5月以降に開催延期)では、演出も務められていますね?
思い浮かんださまざまなアイデアを、協会の方と提案し、相談しながら形にしていっています。残念ながら延期が決まってしまいましたが、皆さんに「来てよかった」と思っていただけるように、エンターテイメント性の溢れた試合にしたいですね。オールスター戦では、普段のリーグ戦よりも選手の個性が出せるタイミングでもあります。例えば、チームメート一緒に過ごしている時の姿とか、選手達の意外な個性をファンの皆さんに知っていただきたいですし、「新たな発見」をしてもらいつつ、皆さんに楽しんでいただける機会にしていきたいと思っています。
――髙田さんにとって、「個性的だったな」という選手はいらっしゃいますか?
誰か一人というわけではなく、本当にたくさんいると思います。五輪を通しても、「女子バスケ選手は、個性があって面白い」と言われることが多かったですし。画面越しの試合をしている姿しか知らない方も多いと思いますが、「普段はこんな感じなんだ」というギャップを見ていただけたら嬉しいです。私たちも隠している訳ではないのですが、なかなか知っていただける場面も少ないですからね。
――これまで行った企画は、どのようなものがありましたか?
昨年は、試合前に両チームの選手が一緒にダンスを踊ったり。タイムアウトの1分間で、「カップ焼きそばをどのくらい食べられるか」を競ったりとか、普段の試合では出来ないような企画をやって楽しんでいただいています。オールスターゲームはしばらく行われていなかったのですが、少し前(2015-2016年シーズン)に復活しまして、そこからは毎年やりたいことをやらせてもらっている感じですね。
――「楽しませることが好き」というのは、明石家さんまさんに通じる部分がありますね?
本当に楽しませることも好きですし、足を運んでいただいた皆さんに「来てよかった」と感じていただけることが、バスケットの活性化にもつながる。リーグ戦では、真剣勝負や激しいプレー。そしてオールスターでは、それに加えて、個性も見てもらう競技を発展させるためには、ファンの方々の力が必要不可欠なので、みなさんと一緒に楽しみながら、バスケットの魅力を発信出来たら良いなと思います。
――これまでもご自身での会社を立ち上げるなど、予てからバスケットボールの普及活動をされてきた髙田選手ですが、東京五輪での好結果がもたらした変化はありましたか?
五輪以降は、色々なところ出させていただき、たくさんの方に私たちのことを知っていただけた。最近は、街で声をかけていただける機会も増えましたし、少しづつですが発信が届いているという実感や、「目指せているところ近づけているかな?」という手応えを感じるようになりました。
――プレーを通じて届けたいメッセージはありますか?
五輪で銀メダルを獲得した後、「楽しそうにプレーしている」、「笑顔が素敵」、「勇気をもらった」という声が多かったんです。
男子は、ダンクなどの華やかなプレーで魅了できますが、女子選手にとってはハードルが高い部分もある。でも、皆さんに挙げていただいたような「楽しくプレーする」という部分が、女子バスケならではの持ち味であり、女子スポーツの良さなのかなと思います。
勝負事なので勝ち負けももちろん大事ですけど、まずは楽しくプレーすること。楽しくバスケをするためには、練習や準備が必要ですし、それがゆくゆくは競技としての価値につながっていくところなのかなと感じさせられました。
――これから髙田さんのような選手を目指していく子供たちへのメッセージをお願いします。
バスケットボールに限らず、「やりたい!」思ったさまざまなことへの挑戦を続けていってほしいですね。私もバスケ以外にも会社を作ったりして、やりたいことをやっている。なので、まずは全力で、やりたいことに挑戦するのが大切なのかなと思います。
まず、興味持ったことに対して調べてみる。その好きなことを続けていけば、ゆくゆくは仕事につながるかもしれない。すごいやりがいを感じると思うし、大変なことがあったことも乗り越えられて、それがまた楽しさに変わっていくと思うんです。なので、将来のいろいろな選択肢を広げていくためにも、まずは知識を得ておくことが重要かなと思う。頭の片隅に入れておいていただけると嬉しいです。
――髙田さんの「キャプテン論」についてお伺いしたいのですが…。理想の「キャプテン像」などはありますか?
自分では「キャプテン」という感覚はあまりないんですけど、あえて言うならば、いい時も悪い時も「思ったことを言葉に出す」ことを心がけているくらいですかね。
試合や練習で気づいたことがあったら、「こうすればいいよ」とか、自分の意見を言うようにしています。自分は、目指すものに対して遠慮してしまう部分があったりすると、後悔が残ると思っているんです。
キャプテンは、周囲から認められて就任している場合が多いと思うので、もしチームのために厳しい意見を口にしたとしても、周囲の人もわかってくれるんじゃないかな。そんな風に感じています。
――チームには、なかなか試合に出られない状況の選手もいらっしゃいますよね?
苦しい状況にいる選手に対しても「今のプレー良かったよ」とか、時も練習中になるべく声をかけたりしています。相手から「見られているんだよ」と、気付かせてあげるようにすることがキャプテンとしては大切かなと思っていますし、気をつけていますね。
――キャプテンの立場でチームを見渡して、若手選手の躍動や急成長を遂げる瞬間は、どんな状況が多いと思いますか?
キャプテンとしては、「試合に出ている人が伸び伸びプレーするチーム」になるように心がけています。例えば、東京五輪にチーム最年少の20歳(当時)で選ばれた東藤なな子(トヨタ紡績)選手とかですかね。もちろん能力があるので代表メンバーに選ばれているわけですけど、試合に出た時の緊張や、遠慮してしまう場面はどうしても出てきてしまうと思う。私自身も、若手だった時には同じような状況がありましたからね。でも、試合に出ている選手が生き生きとプレーしていると、緊張も和らぐと思うんですよ。なので、「伸び伸びプレーしていいんだ」と思わせてあげる環境づくりを一番大切にしていましたね。
続けて髙田選手は、バスケットボール選手としては欠かせないシューズに対するこだわりや、ファンと共に取り組んでいるユニークな取り組みについて語って下さった。
――髙田選手は、ナイキのバスケットシューズを愛用されていますが、シューズ選びのこだわりなどがあれば教えて下さい。
最初に履き始めたのは高校生の時なので、もう10年以上もナイキのシューズを履き続けていますね。これまで色々なシューズ履いてきましたが、種類もたくさんあり、デザイン性や機能も先端を進んでいる。「履きたいな」と思わせるシューズが揃っていると思います。
――SNSなどを拝見すると、「レブロンシリーズ」を愛用されているようですね?
「レブロンシリーズ」は、足幅の広い私に合っているなと感じています。
最近は、軽量化が進んでいますし、耐久性もある。私のプレーするセンターは、足を強く踏む場面があるので、靴の作りがしっかりとしていることはとても重要です。「しっかりしていて、軽くなりつつある」というのが、このシューズを選んでいる理由ですね。
――髙田さんが考える「バスケットシューズ選びのポイント」を教えてください。
見た目よりも、機能性や自分の足にフィットしているかどうかが一番大切です。さまざまなメーカーから、色々なバスケットシューズが出ているので、ショップなどで試し履きをして、自分に合うものを見つけてほしいです。やはり身体は資本。バスケットボールは、さまざまな動きが求められるので、足が大切。自分にシューズを履いてほしいなと思います。
――思い出のシューズはありますか?
正直、個人としてはあまりないんですけど…(苦笑)。「お世話になった方に寄贈できたらいいかな」と思って、五輪で履いたシューズは手元に大切に保管してありますよ。多くの人にプレゼントするために、毎試合違うシューズを履いていました。
――最近は、オンラインサロンでもシューズに関わる企画を始められていますね?
シューズのパーツやカラーをカスタムできる『NIKE BY YOU』というサービスを使って、オンラインサロンの会員の皆さんに作っていただいたデザインのシューズを履くようにしているんです。
「コロナ禍」で、なかなか声を出して応援できない時期が長引いたこともあり、「皆さんの想いを履いて戦おう」と考えついた企画なんですけど。大人になるにつれて、日々のワクワクやドキドキは少なくなってくると思うんですよ。なので、「日常の密やかな楽しみがあるといいかな」と思ってはじめました。
「私のデザインしたシューズを、(髙田選手が)いつ試合で履いてくれるんだろう」というドキドキ感は、充実感のある日々にも繋がっていくと思うので…。毎試合シューズを変えながら、試合に臨んでいます。ゆくゆくは、履き潰したシューズをサイン入りでプレゼントしたりとか。もっと色々な人を巻き込んでいきたいですね。
髙田真希選手 プロフィール
名門・桜花学園高校に進学し、高校時代は多くの全国タイトルを獲得。
2018年からバスケットボール女子日本代表のキャプテンを務め、2021年に開催された東京五輪では、五輪史上初となる銀メダル獲得に大きく貢献。
また、2020年4月には、「スポーツを通して日本を明るく元気に」を理念とした、
「株式会社TRUE HOPE」を設立。現役アスリートとして、経営者として、その活動は多岐に渡る。今後は2024年に迎えるパリオリンピックへの出場を目指し、現役選手としても引き続き邁進するとともに、女子バスケットボールの普及についても精力的に活動している。
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