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other2024.12.27

【2024年の日本バスケットボール界を総括】パリ五輪“疑惑のジャッジ”から日本各地でさらに高まるバスケットボール熱まで

パリ五輪が行われた2024年。48年ぶりの自力出場を勝ち獲った男子バスケットボール日本代表は、世界を驚かす結果は残せなかったが、着実な成長を披露。年末にかけて八村塁の協会に対する強いコメントが話題になったのも、国内バスケットボ―ル熱が過去最高レベルに高まった証明と言えるかもしれない。そんな、今年の日本バスケットボール界を総括する。


■男子日本代表のパリ五輪出場と、フランス戦での“疑惑”のジャッジ

パリ五輪男子バスケットボール、1976年のモントリオール五輪以来の自力出場を果たした日本は、1次リーグ第2戦で地元フランスと対戦。残り約10秒まで84対80と4点リードを奪い、大金星目前の状況だった。しかし、フランス代表マシュー・ストラゼルが3ポイントを放つとこれが成功。さらにディフェンスに入った河村勇輝がファウルを取られ、フリースローを決められて4点プレーが成立。その後、延長の末、日本は敗れた。

リプレイで見ると河村は相手選手にほぼ触れていなかったため、“誤審”などと世界的にも議論が拡散。ただ、河村の左手位置や距離を詰めた守り方など含め、微妙な要素は多く、本人も試合後「自分の責任」と発言。日本は自分たちのプレーにフォーカスしたが、結果的にドイツ(77-97)、フランス(90-94)、ブラジル(84-102)に敗れ、3連敗で11位に終わった。

東京五輪で女子日本代表を銀メダルに導いたトム・ホーバスヘッドコーチ(HC)の下、“史上最強”メンバーを揃えたが、サプライズは起こせず。ただ、強豪相手でも同等に戦えることを証明した、日本の成長を示す大会となった。


■八村塁の協会への強い姿勢について

8月のパリ五輪での死闘から、約3か月後の11月。NBAロサンゼルス・レイカーズ所属の八村塁が試合後の会見で、日本代表に関して言及。協会の姿勢を、「お金の目的があるような気がする」、さらに続投が決まったトム・ホーバスHCに関して、明言はしないまでも「男子のことが分かり、プロとしてもコーチをやったことがある人になって欲しかった。残念だ」と、強いコメントを口にした。

元々は昨年夏の五輪後、ホーバスHCが会見で八村のチーム参加に関し「代表に参加したいなら、彼から声をかけてくるべき」「彼が代表に参加しなくても、今のチームで五輪を勝つ自信がある」と話したこと、協会が日本代表戦で八村欠場を直前まで発表しなかったことなどが主な原因とされる。この発言をめぐり、各関係者が声明を発表。日本協会の渡辺信治事務総長が「発言を重く受け止めている」とコミュニケーション不足を謝罪するなど、議論が活性化した。

各方面から様々な見方があるが、一流のプロ選手となれば指導方法や自身の環境に関して主張するのは珍しくないこと。これも日本のバスケットボール文化が成熟した証と言えるかもしれない。


群馬、佐賀、長崎など次々と「バスケ向け大型アリーナ」が日本各地に誕生!

日本に目を移せば、9シーズン目を迎えたBリーグ人気がさらに活性化。ファンの熱気もより高まる中、最近は特に環境面の進化が目につく。

ここ数年、琉球ゴールデンキングスの本拠地『沖縄アリーナ』を皮切りに、群馬には23-24 Bリーグ平均入場者数ランキング3位(5244人)の群馬クレインサンダーズの『オープンハウスアリーナ太田』が誕生。2023年5月に開業し、半年間で来場者数約26万人を記録した佐賀バルーナーズの「SAGAアリーナ」など、大型アリーナが次々生まれている。

2024年10月19日には、ジャパネットが手掛けた複合施設「長崎スタジアムシティ」に、約6000席を備えたアリーナ「HAPPINESS ARENA(ハピネスアリーナ)」がこけら落とし。新設アリーナのビジネス活用は、ここ数年、バスケ界でも大きな話題となりそうだ。


■NBAプレーヤー渡邊雄太、千葉ジェッツ移籍で富樫との約束果たす

今季の日本バスケットボール界にとって、一番の話題と言えば、渡邊雄太の日本復帰だろう。

NBAで6シーズンプレーした206cmの渡邊は、昨シーズン終盤に不調から欠場などが続き、日本帰国を決断。B1のほとんどのチームが獲得に乗り出し、数億円のオファーをしたというが、最終的に千葉ジェッツ加入を表明した。

その背景には、同じく千葉ジェッツに所属する富樫勇樹との約束、「ずっと『日本に帰ってきたら一緒にやろう』と話していたストーリーがある。ただ、本人はそれだけではなく、1万人以上を収容するアリーナ「LaLa arena TOKYO-BAY」の魅力など含め、チームを選んだと発言。「このチームでプレーできることはすごく光栄」と、会見で話した。


■河村勇輝のNBA挑戦

帰国する人あれば、行く人あり、日本代表の注目の若手、河村勇輝がNBA挑戦をスタート。2020年に特別指定選手として入団した、横浜ビー・コルセアーズで4シーズンをプレー。BリーグでもレギュラーシーズンMVPに選ばれるなど存在感を発揮したが、パリ五輪後にメンフィス・グリズリーズとの「エグジビット10契約」合意を発表。NBA挑戦のため海を渡った。

河村はチームでも積極的にコミュニケーションを図り、得点やノールックパスなど魅せるプレーで観客を魅了。グリズリーズの中でも徐々に存在感を増しつつある。一方の“和製カリー” (3ポイントを遠い距離から沈めるNBAのスター選手ステフィン・カリーに由来)と異名をとる富永啓生も、NBA下部Gリーグのインディアナ・マッドアンツに所属し、苦戦しながらもキャリアを積み重ねている。今後も日本注目の若手の海外挑戦は、日々ニュースとして聞こえてくるだろう。


■渡嘉敷来夢が新天地アイシンへ移籍、“常勝ENEOS”時代が終焉

女子では、ENEOSサンフラワーズに14年在籍した、193cmの大エース渡嘉敷来夢がアイシウィングスに移籍した。桜花学園高等学校・クラブ・日本代表と全チーム全年代でエースを務めた彼女の移籍は、女子バスケットボール界の勢力図の大きな転換を意味する。

今年4月に行われたWリーグプレーオフで、渡嘉敷所属するENEOSサンフラワーズ はセミファイナル敗退。皇后杯に続いてリーグタイトルも逃し、チームは前身となるJOMO/JX時代を含めた2007~08年シーズン以来、16年ぶりの無冠が決定した。それから2か月、自由契約リストに公示されていた渡嘉敷は、アイシンウィングス加入を発表。「チームを勝利に導けるように日々全力で過ごしたい」と発表した。

なお、Wリーグは町田瑠唯率いる富士通レッドウェーブが16年ぶり2回目のリーグ優勝を達成。馬瓜エブリン、高田真希擁するデンソーアイリスの躍進などあり、“常勝ENEOS”時代は完全に終結。これからは群雄割拠の時代となりそうだ。

年々着実に高まっている、日本国内のバスケットボール熱。これから数年はさらに変革期を迎えるだろうことが予想され、選手もファンも報道も、より成熟したアクションが求められることになりそうだ。

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