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outdoor2023.06.23

アルペンアウトドアーズからミドルサイズテント「AOD-4」がいよいよ誕生! 開発者から誕生秘話を聞いてきた【前編】

アルペングループのプライベートブランドとして、多くのキャンパーさんから支持を得ている「Alpen Outdoors」。なかでも圧倒的な涼しさと開放感が特徴的なテント「AOD」シリーズは、発売が告知されるたびに完売必至の大人気ギア!

今年はいよいよAODシリーズ初となる3人用ミドルサイズモデル「AOD-4」が発売されるということで、 アルペンアウトドアーズ開発担当の伊藤さんに、誕生秘話をお聞きしてきました!

AODシリーズの変遷から最新テントのこだわり部分、特徴に至るまで、アルペングループマガジンでしか聞けない情報もしっかり入手してきましたので、キャンプ好きな方はもちろん、これからテントの購入を検討している人も必見です!


――まずはじめに、AODシリーズが誕生したきっかけからお聞かせください。

2018年に体験型のアウトドアショップである「アルペンアウトドアーズ」が誕生してから、店舗の冠がついたブランドを立ち上げたいね、という話がずっとありまして。

さぁいよいよ立ち上げ、となったときにメンバーの心にあったのが、「唯一無二のモノを作りたい。世の中にないモノで、我々独自の商品を開発していこう!」という想いでした。

その第1号となったのが、AOD-1です。当時、日本特有の暑い夏に特化したテントがなく、「夏を涼しく過ごすためのテントを開発しよう」というところからスタートしました。

AOD-1を作っているときは、とにかく「細かいところまで徹底的にこだわる」ということに主眼を置いて開発していましたね。お客様にとって何がいちばん必要なのかを徹底的に考えて作り込んでいったので、どんな些細なパーツでも決して妥協しませんでした。


例えば今ではAOD-4にも標準で搭載しているフックにしても、当時一緒に開発していた女性メンバーが「テントを設営するときに、フックが硬いと指が痛いし怪我しそうでちょっと怖い」という意見を受けて、このツイスト型のフックを採用しました。

女性でも簡単に留められるフックを探し、工場でありとあらゆるフックを全部引っ掛けて、片っ端から検証したのを覚えています。 

もちろんフックに限らず、それはもういろいろな人の意見を聞き、お客様の声を拾いながら、全部を詰め込んでいく。そうやって完成したのがAOD-1でした。

おかげさまで、200張限定で発売したAOD-1は即完売。

春夏モデルでオンリーワンのテントを開発してきたので、次は秋冬モデルのオンリーワンをということで、AOD-2の開発が始まったのです。


――AOD-2はデザインがとても斬新でしたよね。

AOD-1はクロスフレームと2ルームという、よくあるスタイルの中で徹底的にこだわったテントでしたが、AOD-2は「完全に白紙から作る」という、まさにゼロからの挑戦でした。

そのとき話に出たのが、「ひとつのモデルで、キャンプシーンに合わせて自在に変形できるテント」です。
変形をテーマに開発するにあたり、役に立ったのが折り紙でした。まずイメージを描きおこし、折り紙を使って折ったり広げたりしながら進めていったので、「折り紙テント」なんてあだ名までついたりしましたね。

試行錯誤を繰り返していく中で、あるとき「1枚の折り紙=1枚の生地で作るのではなくて、分離したらどうだろう?」と閃いたときは、思わず「おおおおおっ!」と唸りました。「分離することで使い方が格段に広がる!もっといろいろなことができるんじゃない?」と。

そこからの商品化が本当に大変でした。分離できるが故に、サンプルを製作しても机上の折り紙のようにうまく立たない。何度も何度もサンプルを作り、最終的には店舗スタッフも駆けつけ、アイデアを出しながらその場で縫って立てて…を繰り返し、ようやく完成したのがAOD-2です。唯一無二のテントが誕生したので、特許も出願しました。

実際に発売日を迎えると、我々開発者が想像もしなかった変形ができるということも教えてもらったりして、「こんなふうになるんだ!」「あんなふうにもなるのか!」と発見の連続にビックリ。

開発は大変でしたが、いいスタートを切れたうえに、2022年度のGOOD DESIGN AWARDも受賞することができ、大満足な結果で終われました。


――AOD-3はどういった流れで誕生したのですか?

AOD-1発売後、お客様からあまりにたくさんの高評価をいただき「夏だけじゃなくて、オールシーズン使えるテントも出して欲しい」という声を受け、「オールシーズン使えるよう改良しよう」と始まったのがAOD-3です。

AOD-3を開発するにあたり、AOD-1の機能をすべて踏襲することは大前提でしたが、マッドスカートをつけるだけでは普通の冬モデルのテントになってしまう。そこで、マッドスカートを巻き上げられるようにしたり、間口を広げたり、メッシュの幅を大きくしたり、メッシュ窓を追加したりして、涼しさもアップグレードさせながらオールシーズン対応にして改良していきました。

これが爆発的にヒットしまして。今でもコンスタントに売れ続けており、アルペンアウトドアーズの代表格の商品になっています。


AOD-3の発売と同時に、我々も展示会やイベントに参加するようになり、お客様と直接話すことが増えたのもこの頃です。すると「開放感といい涼しさといい、オールシーズン使えることといい、AOD-3はとっても良いテントだけれど、うちは3人家族だからちょっと大きすぎて」という意見をたくさんいただきました。

確かに、これまではファミリーキャンプを想定して4人でも余裕があるくらいの大きさで開発してきたので、小さなお子様がいるご家族やご夫婦、カップルではサイズを持て余してしまう。「これはミドルサイズを作らないといけないよね」という話になって、AOD-4の開発を始めることにしました。 


――お客様の声をカタチにするため、AOD-4の開発がスタートした、と。

はい。AOD-3をそのままスケールダウンする話もありましたが、「いや、それでいいのか」と。

なぜならAOD-3は縦向きに間口があるスタイルだったため、小さくした分、間口も小さくなってしまうのです。ただ僕は、絶対に窮屈になることだけは避けたかった。ひとまわり小さくなるけれど開放感は出したくて、どうしたものかと導き出したのが「間口を横向きにする」というアイデアでした。

結果、AOD-4はAOD-3よりも間口を大きくすることに成功。AOD-3の特徴的なところはすべて受け継ぎながら、ミドルサイズでも抜群の開放感と快適性を感じられるテントに仕上がったので、 発売日まであと少しだけお待ちください。


――AOD-4を開発するにあたり、どんなところに苦労しましたか?

いちばん苦労したのが、インナーの大きさですね。「どうやってインナーを配置して、3人まで寝られるようにするか」というところに、ものすごく苦労しました。

実はAOD-3のファーストサンプルを作ったとき、テントの半分はインナーに、そして一番端に小さいインナーも付けてみたのですが、あまり用途がなく「小さいから必要ないね」と採用しませんでした。

そんないきさつから完成したAOD-3を軸にAOD-4の開発が始まったので、最初はテントの半分がリビング、もう半分がインナーという形で進み始めたわけです。

ところが、実際にライフテストをしたり店舗スタッフの意見を聞いてみたりすると、「インナーが広いので3人ゆったりと寝られるけれど、リビングは狭く感じる」と。


そこで思い出したのが、AOD-3のファーストサンプルに付けていた、小さいインナーでした。

これをAOD-4で応用し、片方に1人用のインナーを、もう片方に2人用のインナーを…と、2つに分けて付けることで、空間を存分に活かしながら寝室の使い方もアレンジできる。

例えば家族3人でキャンプをするときは、1人用インナーにはお父さん、2人用インナーにはお母さんとお子様で使ったり、大人2人で行くのであれば、1人用のインナーは取り外してリビングを広くしたり…と、人数やシーンに合わせ、AOD-3の良さを継承しながらAOD-4ならではの独自性が発揮できる、といった具合ですね。

そんなわけで、AOD-4は従来のテントでは見たことのないようなインナーの配置をしたということもあり、これまた工場とすったもんだがありまして(笑)

こうすればできるんじゃないか、ああすればできるんじゃないか、と写真もたくさん撮って議論を重ねました。

妥協せず何度もやりとりを繰り返したおかげで、想いをカタチにすることができましたし、「インナーが2つあるテント」という、AOD-3とのいちばんの変化をAOD-4で実現できたと自負しています。


――AOD-4の開発で「ここだけは譲れない!」というところはありましたか?

AOD-4は譲らなかったところだらけですが(笑)、特にこの1ヶ所、TC素材を使用したルーフの部分は最もこだわりました。

一般的にキャンプでTC素材というと、ティピーのようなイメージといいますか、吸水性や通気性があって、さらに風合いがいい、というのが特徴なんですけれども、AODシリーズの「抜群の涼しさ」を実現するためにはどうすればいいかを考えたときに、換気機能はもちろん、「影の濃さ」というのがものすごく重要だなと思ったわけです。

ルーフの機能として大事なのが「濃い影」となると、普通のポリエステル生地に黒いコーティングをするよりも、TC素材の方が生地が厚いため、影も濃くなる。

本当に涼しいですからね。非常に暑い日に工場でさまざまな素材のルーフを設置し、下に入って検証もしましたが、やはりTC素材がダントツで涼しくて「これはもうTCを採用するしかない」と確信しました。

ただ、TC素材をルーフに使うだけでは、耐水的に厳しい。基本的にTC素材は防水加工をしませんから、耐水圧は450mmくらいしかありません。それをあえて、防水加工を施して3000mmにしました。ルーフ=屋根だから、影は濃くないといけないし、雨を絶対に防がないといけないですから。

工場からも仲間からも、「吸水性と通気性が特徴のTCなのに、なぜわざわざ防水加工をするの?」と聞かれたものです。

しかしお客様目線で考えたときに、やっぱり雨には絶対に濡れたくないだろうし、涼しい方がいいに決まっているしという、もうそこを信じて譲れませんでした。

TC素材特有の「呼吸する生地」という面では防水加工を施すことによってなくなるかもしれませんが、そこはテントの換気構造でしっかりクリアしているので、「屋根」という機能に特化して作らせてもらいました。


――他にもお客様の声を反映したところはありますか?

あとは、細かいところになりますが、お客様からたくさん声をいただいたのがポール部分です。

AOD-3では、テント設営がしやすいよう、ポールの下部分をポールスリーブの色に合わせて着色していました。

しかしお客様から「テントはいい色だし、デザインも設営のしやすさも大満足だけれど、そのぶんポールの色や着色された赤や緑の目印が逆に目立つ」と意見をいただきまして。「確かにそのとおりだな」と、AOD-4で改良を施すことにしました。

デザインも、設営のしやすさも、どちらも叶えようとなったときにまず行ったのが、ポールの色をシルバーからライトブラウンに変更したことです。そして、赤や緑のポールの着色は下部分ではなく、真ん中にする。そうすることで、設営時は色で識別できるけれど、設営が完了すればポールスリーブに隠れて見えなくなるから見栄えも良くなるんじゃないか、と。

あとは、AOD-3でかなり好評だったツイスト型のフック部分です。当然今回のAOD-4でも採用していますが、「そもそもフックを付けなくてもいい構造にすれば、もっと楽になるのではないか?」と思い、ポールスリーブまわりを見直しました。

ポールスリーブって、長ければ長いほどテントの形が綺麗に出せるんですね。ただ、長くなると強度もぐっと増すため女性だけでは設営できなくなってしまいます。そこでスリーブを短くすると、今度は設営は簡単になるけれどフックが欠かせなくなる。

そこで、下にアジャスターバックルを付けることで設営をサポートして、極限までスリーブを伸ばし、フックを使うことを極力減らしました。

このように、説明しないと気づかないような部分にもしっかりこだわって作ったのが、AOD-4です。


――今後の予定について、アルペングループマガジンの読者のみなさんにだけ情報をお聞かせいただけますか?

そうですね。今のところはAOD-1から順にAOD-4へと展開してきましたが、今後も引き続き進化していきたいと考えています。それは決してAOD-5や6へ…というような進化だけでなく、例えばAOD-3のリニューアル、といったように、ひとつのモデルを進化させていくことも含めてです。

あとは、最近よくお客様から聞くようになった「AOD-3やAOD-4の機能を踏襲した、ソロタイプのテントが欲しい」という声です。

まだまだ構想段階ではありますが、もっともっと声を拾いながらお客様の期待に応えられるよう、開発していきたいと思っています。声が多くなればなるほど、「よし、すごいものを作ろう!」と俄然スイッチが入りますから(笑) どうぞ楽しみに待っていてください!


以上、発売前から大注目されているアルペンアウトドアーズのミドルサイズテント「AOD-4」の誕生秘話でした。

後編 はいよいよお待ちかね、AOD-4の細部を徹底リサーチ!

引き続き開発者である伊藤さんから、それぞれのパーツ部分の特徴をインタビューしますのでお楽しみに!


> 後編はこちら
 

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