三村仁司が語る「シューズ工房M.Lab(ミムラボ)とNew Balance(ニューバランス)がマラソンシューズで世界の頂点を目指す!」
マラソンオリンピック金メダリストの高橋尚子氏や野口みずき氏など数多くのトップアスリートのシューズを手がけてきた「現代の名工」とも呼ばれる三村仁司氏。2018年1月に三村氏とNew Balanceの間でグローバルパートナー契約を結ばれた。三村氏が代表を務めるシューズ工房「M.Lab(ミムラボ)」では、トップランナーのシューズ作りと新シューズ開発が行われている。
先日、兵庫県加古川市にあるミムラボで、三村氏によるアルペングループ社員向けの研修講演が開催された。
NB HANZO V2
――絶対に勝てると確信を持ったマラソンシューズNB HANZO V2
三村:「やるからには世界一を目指そう。再び世界で活躍する選手のシューズ作りに携わりたい」と思いました。
12月から発売される New Balance NB HANZO V2 については、長らくどのようなものにするか検討を重ねてきました。私がこれまで培ってきた技術・ノウハウ全てをNB HANZO V2に注入しています。
NB HANZO V2はミッドソール、アウターソール、アッパー、補強などの検証を何度も繰り返しました。ランナーが求める機能性全てを兼ね備えているので、絶対に勝てるマラソンシューズであると思います。
――長距離選手として活躍
三村:私はもともと長距離陸上選手でして、マラソンでは2時間28分台を記録しました。
当時のシューズは布製で、カーブを走るのがきつくて右の小指の付け根が痛くなりました。すぐ破れてソールはすぐ摩耗するので、1ヶ月に2足は買っていました。大卒初任給が1.6万円の時代に、シューズは880円と高かったですね。
――高校卒業後からシューズ作りの世界へ
三村:高校を卒業してから走りやすいシューズ作りに携わろうと、自宅から近い神戸市にあるオニツカに入社しました。陸上も続けていまして、練習ためにと思って走って通勤をしていました。
シューズを作れば売れる毎日で、残業ばかりしていました。その後に2時間練習するので、帰宅するのは22時でしたね。
――オリンピック選手のマラソンシューズ作りを担当
三村:当時、マラソン大会に出場できるランナーは150人程なので、かなり狭き門であったと思います。大会ではオリンピック選手の寺沢徹氏や君原健二氏と一緒に走り、仕事では彼らのシューズ作りを担当していました。
トップ選手のシューズ作りを担当するのは自分だけでした。作り方を教えてくれる人はいないので、自らの走った経験や勘を頼りに製作していたので1年目はかなり苦労しました。不安な毎日を過ごしていましたが、結果を恐れると何もできないので、失敗は成功のもとだと思って没頭しましたね。
――マラソンコースの路面チェックを行ってきた理由
三村:オリンピックと世界陸上では、大会前に現地に行ってコースの路面チェックを行いました。設置面、硬さ、形状は国によって全然違います。世界にはアスファルト、コンクリート、石畳、レンガなど様々な道があります。
チェックが終わってから選手と話し合いをし、シューズのクッション性などを決めていましたね。
――思い出に残る1998年ソウルオリンピック
三村:日本人選手6人中5人をサポートし、片方100gのシューズを作りました。シューズは非常に軽く通気性がありましたが、耐久性とクッション性がないシューズでした。多くの選手が「軽いので空回りし過ぎてリズムに乗れなかった」と言う中で、4位に入った中山竹通選手だけが「100gシューズが良かった」と言っていましたね。
――機能性の中で1番大切なのはフィッティング
三村:シューズ作りでは機能性が大事でして、フィッティングが悪ければ全てがダメになってしまいます。フィッティングを良くしてから、足型、素材、デザインを考えて作っていきます。他の機能としては、通気性、クッション性、反発力、グリップ性、軽さ、安定性が大事ですね。
――理想のフォームとは
三村:理想のフォームは体が腰の位置が地面と水平になっていて、リラックスしながら左右のバランスが均等で上下運動なく腕振りをしながら走ることですね。多くの人が真っ直ぐ着地して走ることができません。
――最後に、長距離を走る際に必要なものとは
三村:長距離は、最終的には走る量と筋力が大切になると思ってます。あたりまえのことですが、故障することなく適切なフォームでコツコツと練習を積んでいけば、自然と強くなっていきます。