【レビュー】今世紀最大のサプライズ!?アディゼロ ボストン 10とアディゼロ ジャパン 6、キミはどちらを買うべきか?
みなさん、こんにちは。藤原商会代表:シューズアドバイザー藤原です。
さて、アディダスのアディゼロシリーズが、その見た目にも、そして、機能的にも、かなりドラスティックに大きく変わりフルモデルチェンジします!
こんなフレーズは聞き飽きたという方も読んでください。今回は凄すぎます、本当に要チェックですよ!
まず、象徴的なのは、昨年の9月にファーストジェネレーションが発売された話題の厚底レーシング、『アディゼロ アディオス プロ』が、10ヶ月、1年経たずに第二世代『アディゼロ アディオス プロ2』に生まれ変わったことです。これはより良いものを提供したい、より良いものができたので早く届けたい、他社に負けたくないというブランドの現れでしょう。
また、ソールスタックハイト(厚さ)が50mm!のまさにレースイリーガルシューズ(ワールドアスレチックスルール143条により40mmを超えたシューズは公式戦では未公認、6/25の最新リストにも未掲載)の『アディゼロ プライム X』が発表されたり、話題に事欠きません。
そんな中、まさに“みんなの定番“テンポアップモデル、アディゼロボストンとジャパンシリーズも 『アディゼロ ボストン 10』 『アディゼロ ジャパン 6』とアップデイトしました。こちらも半年前ぐらいから情報がリークされて、注目のモデルチェンジとなっていますので解説していきましょう。
■かつてない大きなモデルチェンジ、ボストンとジャパン
両シューズともにこのところ、マイナーチェンジ(小さな変更)やフルモデルチェンジでも期待より小さな変更のみで話題性にも乏しかったのは事実。
ジャパンにいたってはかつての2時間2分台の世界最高記録達成シューズでしたが、ナイキ厚底レーシングが登場以来、そのポジショニングすら怪しい存在になっていました。
ボストンは、あの世界最古のフルマラソン、近代オリンピックの翌年1897年からスタートしたボストンマラソンがその名の由来です。毎年4月パトリオットデーに合わせてボストン限定カラーが出るのも慣わしですが、こんな歴史あるレースの冠シューズ、多くの決まったルーティンがある中で、定番中の定番モデルとして君臨していたボストンは大幅な変更がしにくかったというのは本音としてあったでしょうね。
そんな崩しようがない2モデルが今回、今までのレガシーやそれぞれのポジショニングはそのままで、見た目、そして機能的にもドラスティックに大きく変わり、そして、結果、お互いのシューズとしての棲み分けがしっかり、はっきりした印象です。
そして、両モデルとも、使用箇所のバランスはあれど、アディゼロ アディオス プロに使われている「ライトストライクプロ」という反発弾性の高い素材が使われていることもトピックスです。
では、アディゼロ ボストン 10から見ていきましょう。
■“全速力。365日の5本指エナジーロッド“アディゼロ ボストン 10
※新旧両モデルスペック差
『アディゼロ ボストン 10』
ミッドソールドロップ:8.8mm (ヒール:39.8mm / 前足部:31mm)
15,400円(税込) 280g
『アディゼロ ボストン9』
ミッドソールドロップ:10 mm (ヒール:26mm / 前足部:16mm)
13,200円(税込) 235g
もともとボストンは、ランナーに体の前傾インプットを強く与える10mmドロップの坂道スタイル、それでいて軽い、それが特徴。まさにどこか一つの要素に強いというより、あらゆるランニングシーンでOKのオールインワンモデルでしたよね。
今回も基本的にはこの路線ですが、何しろ今回は、機能的にメチャクチャアップグレードされて、スタイリッシュな見た目が、さらに近現代的、未来的スタイリッシュさに変わった印象です。
柔らかく反発弾性がある「ライトストライクプロ」と安定感のある「ライトストライクEVA」ボトムに、さらに、グラスファイバー素材を用いた5本骨状バー『エナジーロッド』をそれらがサンドイッチする構造に生まれ変わりました。
EVA+ブーストフォームのシンプルなスタイルから、かなりアディゼロ アディオス プロのような速く走れる機能性にインスパイヤされた、オールインワンのボストンが、速く走れる重量感のあるスペックになりましたね。
なんと前足部のスタックハイト(厚み)が1.5cm厚くなりました!
■オールインワンモデル『アディゼロ ボストン 10』はよりしっかりに
他社モデルラインナップにもあるような、レースデイシューズ「アディゼロ アディオス プロ2」のワークアウトトレーニング用的な位置付けでしょうか?はたまたエナジーロッドが入った速く走れる厚底シューズなのでしょうか?
履いてみると答えははっきりします。足入れをするとまず伝わってくるのが、ミッドソール素材「ライトストラクイクプロ」のソフトさ、走り出してみると「ライトストライクEVA」の安定感を感じますね。
厚底レーシング「アディゼロ アディオス プロ2」のようなフワフワでバウンドがあるような感覚ではなくて、“軽量感としっかり感“が両立したモデル、以前からあるバランス感がさらにパワーアップしたようなシューズに感じます。このシューズを一言で表すと“しっかり感“そう感じます。
価格は少しアップして、重装備になり重量も重くなりました。しかし、オールラウンドモデルボストンは、10でさらにしっかりとしたモデルに生まれ変わりました。スタックハイトも全体的に厚くなったのもそれを後押ししていますね。
“365日の5本指エナジーロッド“のキャッチフレーズ通り、その重厚感からインターバルのような速いランニングを除いて、長めの距離のペースランからフルマラソンで記録を目指すランナーのレース用シューズ、はたまたデイリーのトレーニングまで使えるシューズになりましたね。
■“快速。瞬間密着フィット“ アディゼロ ジャパン 6
※新旧両モデルスペック差
『アディゼロ ジャパン 6』
ミッドソールドロップ:8 mm(ヒール:27mm / 前足部:19mm)
14,300円(税込) 230g (プロ2 210g)
『アディゼロ ジャパン 5』
ミッドソールドロップ:9.5 mm (ヒール : 21.5mm / 前足部 : 12mm)
15,400円(税込) 224g
むしろ、テンポアップするならこのシューズを使いたい、そう思います。
世界最高記録樹立というレガシーを確実に受け継ぎながら、良い感じでドラスティックにアップデイトしたと言っていいでしょう。今回のアディゼロシリーズの派手なラインナップの中で、正直、地味目のモデルチェンジなのかな、って思っていましたが、ところがどっこい、でした。
足入れをしてみると、これはボストンもですが、ニットアッパーやエンジニアードメッシュといったシームレス(縫製しない)アッパーが全盛の中、今どき珍しいトゥの補強や所々にしっかりとした補強材が縫製されたしっかりとした作り、フィット感がとてもいいです。
0.01mmまでこだわりぬいたアディダス独自のマイクロフィットラストは、この商品の名前ジャパン(海外展開名はアディオス)の通り、往年のジャパンレーシング雰囲気があるアッパーですね。これ、今回の両モデルのポイントかもしれません。
踵からウエストまわりは密着感があって、前足部は膨らみがあって、足の動きを邪魔しない感じは、まさにキャッチフレーズ通り “瞬間密着フィット“ですね。
■機能的でこれはテンポアップしやすい構造
今回のアップデイトでボストンはドロップが下がりましたが、ジャパン6も同様に、10mmドロップから8mmドロップに変更されています。前回よりややフラットに近づき、履いた感覚は、今までを知っている方ならかなりフラットに感じるでしょう。
前足部のみ「ライトストライクプロ」を使用して、全体はライトストライクEVAで構成されたミッドソール構造は、見た目、機能はゴツイ感じにはなりましたが、履いた感触としても着地した瞬間から来る反発感は、前に進むモチベーションに確実になっています。
また、アディゼロ アディオス プロ2のようなハイバウンドで“シューズに走らされている感覚“がなくて、自分の足で走っている感覚は、以前までの接地感があるジャパンのまま、ファンを裏切らない仕上がりです。
前足部に確かな接地感とそれでいて「ライトストライクプロ」のバウンド感がもらえるネオテンポアップシューズに生まれ変わりました。
よりフラットに近づき、前足部に反発弾性のあるライトストライクプロが入っている構造で、はっきりするように、このシューズは、アディゼロ ボストン 10より、テンポアップさせる機能に特化したと言えるでしょう。
前回モデルよりも両者の差ははっきりしたという印象がしますね。こちらは、金額的には安くなって、そして、軽さも十分。ワークアウトなどでのテンポアップトレーニング用はこれで決まり、そう思いますね。
■コンクルーション(結論)キミはこちらを選べ!
今まで、用途や特徴が酷似していた2つのモデル、ボストンとジャパンは今回のモデルチェンジでその棲み分けがはっきりした、これが結論です。使う人の使い方によってはっきり分かれると思いますよ。
アディゼロ ボストン 10は、オールインワン最強モデルにチェンジ。トレーニング・フルレース用としてのスーパーオールインワンシューズと言えます。サブ4、いやサブ3.5ぐらいのランナーにもこのしっかり感はロングディスタンスで有効ではないでしょうか。
一方、アディゼロ ジャパン 6は、よりテンポアップトレーニングで使いたいモデルになりました。また、10Kなどショートディスタンスレースでもハマる方が多いでしょうね。そういう意味ではネオレーシングフラット(新薄底レーシング)なのかもしれません。
ボストンでジョグはしたいですが、ジャパンではジョグはしない
ボストンではインターバルはしないが、ペースランはしたい
ジャパンでジョグはしないが、テンポアップはしたい
そんな例えはどうでしょうか?
両シューズとも耐摩耗性素材として今までも使用されていた「コンチネンタルラバー」が広範囲で使用されているのもメリット。自動車のタイヤのラバーで、耐久性とグリップの良さは定評がありますからね。
最後にアディゼロ アディオス プロ2は、サブ3以内のレースデイシューズという印象です。ハイバウンドは反発弾性の高さの一方で、素材の柔らかさ不安定でもあります。
目標の高いランナーはもちろん試してみてください。ただわたしも含めて、ボストンやジャパンでしっかり接地感や自分のパフォーマスを高める努力を忘れずに。素材の不安定感を補うのはランナーになります。
ジャパンに関しては、ワークアウトシューズとしてピッタリと言いましたが、前足部の「ライトストライクプロ」は反発弾性があり、しかもそれは、アディゼロ アディオス プロに使われているものです。もちろんランナーがトレーニング使っていて感じが良ければ、その方のレースデイシューズになり得ると思います。これを追記しておきましょう。
アディゼロ ボストン 10は、的を絞って言っちゃうと多くのサブ4ランナーにとっての、長めのロードでのペース走からレースデイシューズにピッタリ。エナジーロッドが効いている感じは正直、アディゼロ アディオス プロ2やアディゼロ プライム Xより感じて、前足部の足離れのガイド感がスムーズなんです。デイリートレーナーなどを同じように、接地時間をクリアする機能が付いていると言えるでしょう。これは、長い時間、ある一定のペースを守るのに欠かせない機能です。
最後に言っておきたいのは、アディゼロ ボストン9、アディゼロ ジャパン 5が旧モデルになるので安いから購入したいというランナー、わたしはアディゼロ ボストン 10とアディゼロ ジャパン 6を履いてから検討してもらいたいなあと思いますよ。
機能は日進月歩、ランニングの唯一の道具、動作インプットがあり、トレーニング効果を高めてくれるものを価格だけで選ぶなんて、この記事を読んだ方にはそんな選択はしてもらいたくない、今回のアップデイトですからね。是非店頭に履きに行ってくださいね。
<著者プロフィール>
ランニングシューズフィッティングアドバイザー
藤原岳久(F・Shokai 【藤原商会】代表)
日本フットウエア技術協会理事
JAFTスポーツシューフィッターBasic/Master講座講師
足と靴の健康協議会シューフィッター保持
・ハーフ1時間9分52秒(1993)
・フルマラソン2時間34分28秒(2018年別府大分毎日マラソン)
・富士登山競走5合目の部 準優勝 (2005)