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running2024.12.20

くれいじーかろ、新田颯コーチが224gの軽量シューズ「ADIZERO EVO SL」を語る

2023年ベルリンマラソン、ティギスト・アセファ選手が2時間11分53秒でゴールテープを切った時、彼女の足元にあったのは「ADIZERO ADIOS PRO EVO 1」だった。アセファの記録とともにEVO 1もADIZEROシリーズ最上位のレーシングシューズとして印象付けられたのではないだろうか。EVO 1はトップアスリートが履く雲の上の存在のようなシューズ、そんな風に感じていた方も多いだろう。しかし、いま同じくADIZEROシリーズの中で人気のトレーニングシューズSLの最新モデルとして、EVO 1の流れを汲む「ADIZERO EVO SL」が登場し、人気を博している。EVO 1を思わせるフォルムながら、一般向けにチューニングされたテクノロジーで市民ランナーを魅了する「EVO SL」の魅力とは何か。実際に履いてみたランナーの声を紹介するとともに、ランニング界のインフルエンサーくれいじーかろさん及びアディダスランナーズの新田颯コーチら識者の見解を伺った。


「ADIZERO EVO SL」は27cmで224gとアディダスのトレーニングシューズの中では最軽量だ。レーシングシューズと同じソールを搭載していながらプレートは入っていない。土踏まずの上あたりに「ドックボーン」というナイロンプレートが入っているため、蹴り出す際のシューズの捻じれも補正してくれる。12月にAlpen TOKYOで行われたEVO SLのトライアルセッションには日頃から走り込むシリアスランナーが集まり、EVO SLでトレーニングを行うことでスペックの程を体感した。


まずは軽く練習場所までジョギング。参加者からは「ミッドソールだけで反発がもらえる」「軽いです。重さを感じさせないし、足さばきが凄くいい。必要なクッションはあるけれど、地面をちゃんと蹴って走れる感じがします」「私は指の長さが一緒なので、前がキツくなりがちなんですが、これはちょっと広めだからいい」などの声。


アディダスランナーズの新田颯コーチ。丁寧にストレッチ指導を行います。


トレーニングメニューは、約1300mのコースを1本ごとに15秒ずつビルドアップしていくレぺテーションだ。3段階に切り替わるスピードにシューズがどう反応するかも明確になる。


参加者をリードするくれいじーかろさん。


トレーニング中、参加者からは「ソールが硬過ぎず、柔らか過ぎずいい感じ」「扱いやすい。いろんな走りのパターンに対応してくれる。ちょっとスピードを出したり、ゆっくり目で走っても大丈夫」「安定感がもの凄くあります。普通のスピードから加速に切り替える時もスムーズでした。安定感のあるシューズは重く感じがちですが、軽さも両方ある感じがしました」


新田コーチからさまざまな走り方を試すようにアドバイスされた参加者は「歩幅を変えて踏み込んでみましたが、内側に補助が入っているので、足が捻じれず、ギュッと綺麗に反発するんですよね。捻じれない分、横にブレたりしないで脚が真っすぐ進み親指側でいい感じに踏み込んでパワーを使える感じです。綺麗なラインで反発するからストライドを伸ばしても大丈夫なんですよ。ストライドが伸びると同じ歩数で距離も行けて、自然と速く行けます」「レースでも走れそう。デザインもカッコいい」


走り終えた参加者たちはトレーニング後とは思えない軽快さで帰途についた。

後半はセッションをリードしてくれた、くれいじーかろさん、新田颯コーチにさらに詳しく「EVO SL」について語っていただいた。


――「EVO SL」の第一印象はいかがですか?

くれいじーかろ:レースシューズと思うくらい凄くて、いざ走ってみたらジョギングでも気持ちいいし、流しでも気持ちよくスピードに乗れる感覚がある。カーボンを使っていないからこそ、自分の蹴り出したい位置でしっかり踏めるので、万人受けするシューズという印象です。軽さもあるし、他のシューズとの違いでいうと、どこでも使えるシューズ。サブ4とかサブ3.5くらいの方であればデイリーユースからジョギング、インターバルの高強度のポイント練習やレースまで、全部この1足でこなせるんじゃないでしょうか。


――前足部が反りあがった構造をしていますが

新田:反りあがっている分、ロッカーポイントが下がったので、よりランナーの足をサポートしてくれると思います。なぜかというと、今までのシューズは反発が強いだけに踏むところを限定してあげないと反発を推進力に活かせなかった。けれどEVO SLはロッカーポイントが下がっているので、踏む位置がわかっている。加えて、フルレングスで「LIGHTSTRIKE PRO」が使われているのでどこで踏んでも反発をもらえる。しっかりと返ってくるので蹴らなくてもいい。


――ミッドソールの感覚はいかがですか?

くれいじーかろ:反発はもちろん、変にプレートが入っていないのが僕は凄く大きいと思っています。プレートがあると自動でアシストしてくれるんですけれど、アシストしてくれるが故に自分のつきたいポイントや、蹴り出しのポイントが限定されちゃう。対してEVO SLはフルで「LIGHTSTRIKE PRO」が入っているので、ついて弾みたい場合も、蹴って行きたい場合も自分の蹴りたいポイントで行ける。どこでついても大丈夫です。プレートがあるといい意味で強制されてしまい、靴に走らされてしまう。その点、EVO SLは自分で行けるのがいいんじゃないかなと思います。シューズの概念が変わりそうです。

新田:「LIGHTSTRIKE PRO」ってレース用シューズに使われるのが大前提だった。これがジョギングシューズにも取り入れられるようになったのがSL 2。そこからさらにフルレングスで使わるようになったのがEVO SLだと思います。レース前提のミッドソールが入ってきたことでどんな練習でも使えるようになった。


EVO SLは指1本でも持てるくらい軽い。


――SL 2より20gくらい軽いですが

くれいじーかろ:20gって足にとっては全然違う。特に長い時間走っていた時の負担が変わってきます。疲労して脚が上がらなくなってきた時この20gの差があるのかなと。だからこそスピードも乗りやすい。マラソンの後半でも僕は試してみたいです。

新田:高性能のシューズで、レスポンスもしっかりしているのでフルマラソンでもサブ5からサブ3.5くらいまでなら僕は全然いけるんじゃないかと思います。5:00/kmペースくらいまでだったら、気持ちよく使えるんじゃないかな。

くれいじーかろ:カーボンが抜けているからこそ、足への負担が少ないと思うのでマラソンの後半失速する方はこれで行ったら意外に速く走れると思います。


――EVO SLを使ったおすすめの練習は?

新田:まず、レースのペースが1kmあたりどれくらい余裕度があるかを基準にしてください。例えばサブ3.5で1km 5:00/㎞を切るようなペース。これに対しては余裕があるけれど、実は距離が適正でない、自信がないんだよねという方は距離走の頻度を増やしてもらって、スピードは抑えても全然いい。逆のパターンだと距離を踏むのは月1回くらいにして残りはスピードにする。そうした中でEVO SLは距離走も行けるし、スピードも行けるので、その人の課題を克服してくれるシューズになってくれると思います。

くれいじーかろ:EVO SLは、どのペース帯でも行けると思います。ただ、一番力を発揮するだろうと思うのは、フルマラソンのレースペースよりちょっと落ちるくらい。市民ランナーの方でいうとペース走やちょと速めのジョグです。練習では、距離走にいいんじゃないかと思います。レースでカーボンシューズを履く方が、練習としてガンガン走るのには凄くいいと思います。


――フィット感はいかがですか?

くれいじーかろ:キュッと詰め込まれているというよりは、結構ゆとりがあってストレスがありません。

新田:窮屈じゃない。レースシューズの場合、足先が細くてカーボンも入っていると指先を握りしめがちです。それがないシューズだと思う。幅が広いから。また、ソールが広いので安定感は確実に生まれます。

くれいじーかろ:幅が広いからこそ、長い距離で足がむくんできた時もストレスのない感じはしますね。


――アウトソールはいかがですか?

新田:実は私トラックで履かせていただいたんですけど、滑らなかったですね。これだけ平らなのに、滑らないということはグリップ性もある。特にどこで滑らないかというと、抜ける瞬間。どうしても速いペースだと蹴ってしまう。けれどトラックで300mのインターバルを44‐5秒くらいで行っても抜ける感じはありませんでした。グリップ性は抜群なんじゃないかと思いますね。


――おしまいにEVO SLを検討されているランナーの方にひとこと

新田:今回新しいのはデザインですよね。一番注目されているというか。ランニングシューズの幅を超えたシューズなんじゃないかと思っています。そういった意味ではファッションとしても楽しむことができる。ランニングを楽しみながら、目標に向けて練習もしっかり組み込んでいただければと思います。


くれいじーかろ:僕は海外遠征に行くことが多いんですけれど、荷物がかさばったりした時にシューズを選ぶ。私服にも合わせられて、ジョグも、ちょっと質の高い練習もしたいという時、これ1足あれば何にでも対応できます。ですので、出張が多いランナーにもおすすめです。あとは、弾む感覚や、色んなペース帯で走れる点も味わってもらえたらと思います。結局エンジョイですね!


聞けば聞くほど、EVO SLの魅力は深まるばかり。ここぞの勝負にレーシングシューズを検討する方は多いが、走力は日頃のトレーニングがモノをいう。質の高い練習を行う上で、EVO SLは心強い相棒となってくれそうだ。幅広い練習に対応できるだけでなくレースでも使えることを考えると、トレーニングシューズの枠を超えたハイスペックシューズといえる。ぜひ、ご自身のシューズラインナップに付け加えてほしい。

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