ASICS SUPERBLAST (アシックス スーパーブラスト)は「速く」より「心地よく」がテーマのデイリートレーナーモデル
■『速く』より『心地よく』がテーマのトレーナー
さて、2023年話題に事欠かないアシックス。新しい商品が次々と発売される中、この商品にはぜひ注目してほしいですね。それは、ASICS SUPERBLAST (アシックス スーパーブラスト)です。
この超厚底のルックスは、4.5cmと、通常のデイリートレーナーが大体3cm強の厚みですから、それと比較しても、その分厚さは際立っています。
ちなみに、こちらは、World Athletics(ワールドアスレティクス)競技シューズ使用ルール外のイリーガル(非公認)モデルです。
選手はレース本番では使えないのですが、とにかく「速く」を連想させるようなスペックとは裏腹に、どちらかと言えば、「心地よく」のポジショニングで作られた新時代のデイリートレーナーモデルといえます。
では、まだまだ正体不明のASICS SUPERBLAST (アシックス スーパーブラスト)がどんなシューズで、どんな用途で使うシューズか解説していきましょう。
■かゆいところに手が届く展開のASICS
まずスペックとしては、ミッドソールの素材に、ASICSが誇る箱根駅伝でも13%強のランナーが履いたスーパーシューズのMETASPEED SKY+、METASPEED EDGE+に使われているミッドソール素材FF BLAST TURBO(エフエフ ブラスト ターボ)が使用されています。
そして、ボトム層には、ASICSのGEL-KAYANO 29などデイリートレーナーラインナップに搭載されているFF BLAST PLUS(エフエフ ブラスト プラス)を使用、といった2層構造になっています。
カーボンファイバープレートは搭載されておらず、まさにスーパーシューズとデイリートレーナーの機能性のハーフ&ハーフの構造と、謎のベールに包まれた感があるシューズになっていますね。
BLAST…と言えば、まさに“ブラザー”のNOVABLAST 3がありますよね。ちょうど、NOVABLAST 3とSUPERBALSTの関係は、MAGIC SPEEDとS4の関係に似ているというと分かりやすいでしょうか。
この関係性は、”こちらはこうで、こちらはこう”とはっきり分けることができない、もはや“ブラザー”ならぬ、瓜二つの“双子”のような関係性。そっくりだけどそれぞれに良さがある、そう、これがランナーのかゆいところに手が届くASICSならではのラインナップの多さゆえの掴みにくさはあります。
■物づくりを変えるゲームチェンジャー、SUPERBLAST
もう一つの側面が、この分厚いソールは、まさに技術の進化であること、違う言い方をするとこんなに厚底にできるようになったと進化と言えるかもしれませんね。
いままでも、一般的な素材EVA(エチレンビニールアセテート)分子は、パンを作るように高発砲、スカスカにすれば、軽くて、分厚いソールを作ることはできました。しかし、反面、今までは、耐久性と特に安定感を両立させることがとても難しかったのですね。
「クッションがあることは柔らかいこと、逆に安定するということは硬いこと」を意味しますが、柔らかくて硬い素材という矛盾を実現するのが素材作りの難しさでもあり、ブランドの特徴を出す見せ所でもありました。その両立には構造や素材のブレンドなど知恵と工夫が詰まっているわけです。
それが、この素材を使うことで、簡単にそれは達成されるのです。まさに技術の進化。
FF BLAST TURBOには、分子レベルでは軽量性、反発弾性、素材の耐久性の3拍子揃った最強のPebaxⓇ(ポリエテールブロックアミド)が使われています。
気泡で構成されたスポンジ構造でなく、セル同士がくっついて質量が上がる構造でありながら、この素材ゆえのアドバンテージがあり、反発弾性と安定感が両立、デイリートレーナーとして、機能性バランスのいい物作りのゲームチェンジャー、未来形のランニングシューズ、そんなASICS SUPERBLAST (アシックス スーパーブラスト)を作ることができるのです。
■FF BLAST TURBOだからと言って同じではない
ASICS SUPERBLAST (アシックス スーパーブラスト)はFF BLAST TURBOを使って、NOVABLAST 3より6mm厚いソールが、全く違うクッション体験を提供するオプション、もっと軽くて、クッションの毛色が違うトランポリンのようなバウンドを作り出します。
たしか、スーパーシューズのMETASPEED SKY+、 METASPEED EDGE+のFF BLAST TURBOは反発弾性がケタ違い、だから、記録を目指すプロ・アマ問わずランナーに受け入れられてきたけど、耐久性がなかったですよね?って反論する方もいらっしゃるでしょう。
簡単に言えば、この2つモデルのFF BLAST TURBOは、違うもの、ということです。混ぜ合わせる素材や製法のような、料理で言うところのレシピが違うということになります。
発泡技術をコントロールして作ったSUPERBLASTのそれは、PebaxⓇを超臨海発泡してフワフワに、耐久性は犠牲に、究極の軽さ・バウンドを追求したスカイやエッジのFF BALST TURBOとは違うわけです。
この未来の素材は軽くて、反発弾性があり、耐久性があるので、製法を工夫することで安定感を生み出すホント、未来のランニングシューズです。
■デイリートレーナー的しっかり感のある機能性
クッションフィーリングとしては、追記として、NOVABLAST 3にもある靴底中央部の“窪み”も構造的には変形、復元する力でトランポリンのような弾み感をプラスで演出しています。その窪みのまわりに惜しみなく配置されたAHAR PLUS(エーハープラス)は、従来素材の3倍の耐久性があるもの、それが肉厚についているところも耐久性へのポイントですよね。
踵まわりのミッドソールの左右横、後方へ張り出すようなデザインソールは安定感を感じます、これはまさにデイリートレーナーのそれ、そのものですよね。
もう一つ安定感には、ミッドソール下層のFF BLAST PLUSも良い仕事をしていますよね。
甲まわりをしっかり包み込むガセットタンは、タンとアッパーを一体化したもの、しっかり感のあるフィット感を演出しています。サイズ感はわたしの場合、いつものサイズで履いていますが、少し小さめに感じています。これは前後のサイズを履いて確かめたいですね。追記として、ユニセックスなので、小さい足の男性にも優しいサイズレンジになっています。
アッパーデザインはMETASPEED、アウトソール意匠はNOVABLAST 3にそっくりです。
■使い方はいろいろのオールラウンダー
ちなみに、わたしの場合は、単純に気持ち良く、リズム良く走りたいときに使っています。このポンポン系トランポリンバウンドは、ランニングの気分を盛り上げてくれて単純に楽しい感じがしますね。
また、ワークアウト前のウォーミングアップでも使います。テンポアップの前にリズム感のあるバウンドを体験しておくことはプラスです。ワークアウトへの移行もスムーズです。そもそも、ワークアウト自体や、ちょっとしたペースの距離走なんかも良さそうですしね。
とにかく、このシューズは、ランナーの数だけ使い方にはバリエーションがあるまさにオールランダーなシューズだと言っていいでしょうね。
反面、ビギナーランナーのはじめてのシューズ…と言うような安心感のイメージではないことはたしか。ランニングという趣味が定着して、これからもっともっとランニングを楽しみたい、そんなランナーの2足目以降のデイリートレーナーモデルというイメージです。
そんなランナーでも、できれば、KAYANO、NIMBUSといった安定感が特徴のシューズとローテーションしているとベストです。
アメリカでは220ドルで、日本では22,000円(税込)と為替相場感を反映させてないプライスレンジは、日本人にお得な設定とも言えます。「アシックスラン 東京丸の内」で試し履きもできますから、行ける方は、購入前に履いてみる、走ってみることもオススメですね!
<著者プロフィール>
ランニングシューズフィッティングアドバイザー
藤原岳久( FS☆RUNNING(旧 藤原商会)代表)
日本フットウエア技術協会理事
JAFTスポーツシューフィッターBasic/Advance/Master講座講師
足と靴の健康協議会シューフィッター保持
・ハーフ1時間9分52秒(1993)
・フルマラソン2時間34分28秒(2018年別府大分毎日マラソン)
・富士登山競走5合目の部 準優勝 (2005)