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running2023.10.23

アシックス GT-2000 12(ジーティー2000 12)はスタビリティーシューズの常識を打ち破る1足

■アシックスの定番モデルGT-2000 12登場

ラン歴がある方であれば、誰もが1度は履いたことがあるかもしれないアシックスの“みんなの定番“ “はじめての1足“ GT-2000シリーズがフルモデルチェンジしました。

ランナーの足の内側へのオーバーなアクション、過回内(オーバープロネーション)を抑えてスムーズなライド感を提供するスタビリティートレーナーの12代目、今回は大きなアップデイトがありましたね。

では、このモデルは、いったい前モデル11代目とはどのぐらい、どう変わったのか?また、このモデルと同価格帯のニュートラルトレーナーのGEL-CUMULUS 25(ゲルキュムラス 25)、同じスタビリティーモデルのGEL-KAYANO 30(ゲルカヤノ 30)とはどう違うのか、などなどアシックスデイリートレーナーモデル全体を整理してご紹介していこうと思っております。


■3Dガイダンスシステムがスタビリティーの概念を変える

機能性の要、スタビリティースタイルが大きく変更、構造だけではなくて、発想転換があったと言っていいでしょう。内側が硬度を高めてオーバープロネーション(過回内)を抑えるダイナミックデュオマックスから10-11代目はライトトラスへの変化。そこに今回また新たな変化が加わったわけです。それが今回12代目に採用されている『3Dガイダンスシステム』です。


3Dガイダンスシステムとは、広いプラットフォーム、後ろからみて大きく張り出したソール、そしてソールジオメトリー(ガイド感)のセットでオーバープロネーションを軽減するというもの。つまり、今まで概念である内側の硬度をあげてサポートするスタイルを“卒業“したと言ってもいいでしょう。

既成概念を壊すようなこの一歩踏み込んだワンピース(1枚の素材)ミッドソールは、スタビリティーシューズとしての機能性を維持しながら、課題であったソールバウンドのソフトさを損なわないライド感を目指したものだと言っていいでしょう。


■スタビリティートレーナーの既存概念に挑戦

この3Dガイダンスシステムは発想構築には、2代発売された軽量性を追求したスタビリティートレーナーGEL-KAYANO LITE(ゲルカヤノ ライト)でのノウハウ蓄積が大きかったと言います。

軽量感も高めて、スタビリティー機能を維持するといった既成概念を考え直してみるいい機会になったということのようです。

そして、ソフトさへの貢献としては、今回FF BLAST(エフエフブラスト)からFF BLAST PLUS(エフエフブラストプラス)に変更されたことも大きいでしょう。

また、GEL-NIMBUS 25(ゲルニンバス 25)以来αGEL(アルファゲル)は内包され、10%軽量、65%ソフトになったPureGEL(ピュアゲル)に変わりました。このこともそれを後押ししていることは間違いありませんね。


■実際に履いた感触は一言“まるで違う“

実際に走って比較してみると、これがいい意味でまるで違うモデルになったなあと感じました。

GT-2000 11代目は硬度の違うパーツでスタビリティー機能を発揮するライトトラスでしたので、こうして12代目を履いてしまうと、やはり、全体的にはしっかり目のやや硬めのクッションなのは否めません。

前述、今回から変更されたミッドソール素材のFF BLAST PLUS+のクッション+PureGELのセットはソフトさもそうですが、接地するやいなや、すぐに前への推進力に変わるような乗り心地の良さ、レスポンスの良さがあることも特筆すべきですね。

これはまだ履いた感触がまるで違うといっていい、モデルチェンジとなりましたね。


■サステナブルなテーマにも踏み込んだモデル

そして、アッパーは、今回の12代目は踵のヒールクリップがトレンド感を取り入れるなど変更点がありますが、ラスト(靴型)は、前回同様のややスッキリスタイルで、サイズ感はトゥルーサイズ、前回とさほど変化はないかなと感じます。

甲から踵にかけての掴み感、前足部には程なく自由感があり、そのフィット感は流石の良さです。


またそのアッパーも含めて、インソールにはGEL-KAYANO 30同様 +9.9kg co2eとプリントされています。(GEL-KAYANO 30は、+10.7Kg co2e)

これはカーボンフットプリントと言って、素材調達から廃棄まで商品のライフサイクルで発生する温暖効果ガスの発生量。これは通常のシューズ生産で排出する一般的な量を21%と大幅に軽減したもので、サステナブルなテーマはもちろんですが、かなり踏み込んだ具体的な指標を提示していることも重要ですね。


■他のデイリートレーナーモデルとの差別化もしっかりある

ちなみに、同価格帯のラインナップとしてついになるモデル、ニュートラルトレーナーのGEL-CUMULUS 25と比較すると、内側に適度なサポート感もあり、踵まわりのエクストラな安定感がほしいというランナーにピッタリです。


もちろん、GEL-KAYANO 30は推進力、安定感ともにもっともっとアドバンテージのある作りで、4Dガイダンスシステムとして機能面でもプラスαのスタビリティー機能があることは事実です。

ただ、このGT-2000 12は15,400円というプライスレンジも魅力です。

当然プレミアムトレーナーと比較すると物足りなさもあるスタイルですが、もっと多目的な使用可能なバランスの良い商品構成ながらもリーズナブルなプライスと言っていいモデルです。

とにかく、定番が変わることは勇気がいることですが、この変化は意味のあるアップデイトであると言えるでしょう。それが今回のGT-2000 12ですね。
 


<著者プロフィール>

ランニングシューズフィッティングアドバイザー

藤原岳久( FS☆RUNNING(旧 藤原商会)代表)


日本フットウエア技術協会理事

JAFTスポーツシューフィッターBasic/Advance/Master講座講師

足と靴の健康協議会シューフィッター保持


・ハーフ1時間9分52秒(1993)

・フルマラソン2時間34分28秒(2018年別府大分毎日マラソン) 

・富士登山競走5合目の部 準優勝(2005)

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