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running2023.12.29

【2023年日本マラソン界を総括】男女ともにパリ五輪への激しい競争が繰り広げられた

2023年の日本マラソン界は、国内外で熱いレースが続いた。24年パリ五輪出場を賭けたマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)が開催されたからだ。
まずは男子に触れよう。

2月下旬の大阪マラソン2023で、西山和弥(トヨタ自動車)が2時間6分45秒で6位入賞を果たす。初マラソン日本最高記録にして日本歴代9位の好タイムで、MGC出場権を獲得した。

翌週の3月5日には、東京マラソン2023が開催された。1位から3位までをエチオピア勢が独占するレースでは、先頭集団の後方で山下一貴(三菱重工)と大迫傑(ナイキ)が日本人トップを争った。40キロ付近から山下が抜け出すと、日本人歴代3位の2時間5分51秒でゴールし、日本人トップの7位となった。また、其田健也(JR東日本)が残り1キロ地点で大迫をかわし、日本歴代4位の2時間5分59秒で8位に食い込んだ。2時間6分13秒の大迫は、この大会でMGC出場権を獲得した。

ハンガリーの首都ブダペストを舞台とした8月の世界陸上競技選手権大会男子マラソンには、山下一貴、其田健也、西山和弥の3選手がエントリーした。世界陸上初出場の3人が、13年以来5大会ぶりの入賞(8位以内)を目ざした。

42か国から85選手が出場したレースは、現地時間朝7時にスタートする。1周10キロあまりを4周回するコースは基本的にフラットだが、スタート時点の気温24度から30度過ぎまで上昇していく。

厳しい条件のなかで、冷静なレース運びを見せたのは山下だ。

入賞圏内で力走していくが、38キロから両足がけいれんするアクシデントに見舞われてしまう。それでも最後まで走り切り、12位でテープを切った。タイムは2時間11分19秒だった。

其田は35位、西山は42位だった。3人ともに自己ベストに遠いタイムとなったが、実に25人が途中棄権している。過酷なレースで健闘した、と言っていいだろう。

10月5日には、杭州アジア競技大会のマラソン競技が行なわれた。日本からは定方俊樹(三菱重工)と池田耀平(花王)がエントリーした。スローペースな序盤を経て、30キロ過ぎから先頭集団は7人に絞られる。36キロの給水で中国人選手がペースアップし、40キロ地点では定方、池田ともに4位グループとなる。日本勢12大会ぶりのメダルを目ざしたが、定方が3位と12秒差の4位に終わった。池田は6位だった。

両選手はMGCの出場資格を得ていたが、アジア大会のわずか10日後という日程を考慮し、エントリーしなかった。また、世界陸上に出場した西山和弥も、ケガで欠場することとなった。

そのMGCは、10月15日に行なわれた。男子は61人がスタートラインに立った。五輪代表の座を賭けたサバイバルである。

冷たい雨が降りしきるコンディションで、いきなり飛び出したのは川内優輝だった。通算130回目のフルマラソンとなった36歳の経験者は、軽快にラップを刻んでいく。

その一方で、2時間4分56秒の日本記録を持つ鈴木健吾(富士通)が12キロ手前で途中棄権した。また、世界陸上代表の其田健也も14キロ付近でリタイアした。

川内が独走していったレースは、35キロ過ぎに大きく動く。川内が後続に吸収され、大迫傑、小山直城(ホンダ)、赤崎暁(九電工)、堀尾謙介(九電工)、井上大仁(三菱重工)、作田直也(JR東日本)の7人が先頭集団を形成した。

最初に仕掛けたのは小山だった。38キロ付近でペースを上げる。大迫、赤崎、川内が追いすがるが、小山は3人を突き放す。そのままゴールテープを切った。

このMGCでは、上位ふたりがパリ五輪代表の切符をつかむ。2位争いで前へ出たのは赤崎だった。残り3キロで前へ出ると、大迫を置き去りにする。この結果、小山と赤崎がパリ五輪の出場権を獲得した。

ふたりに続いたのは大迫だ。川内との競り合いを制し、前回のMGCと同じく3位でフィニッシュした。

パリ五輪代表の残り一枠は、ファイナルチャレンジ指定大会で定められた設定記録(2時間5分50秒)を突破することが条件となる。条件を突破した選手がいない場合は、MGC 3位の大迫が代表資格を手にする。

男子の指定大会は12月の福岡国際マラソン、24年2月の大阪マラソン、24年3月の東京マラソンだ。福岡では設定記録を突破した選手はいなかった。パリへの熾烈な競争は、なおも続いていく。



女子マラソン界には、2023年早々にビッグニュースが飛び込んできた。1月15日に行なわれたヒューストンマラソン(アメリカ)で、新谷仁美(積水化学)が日本歴代2位の2時間19分24秒で優勝したのである。野口みずきさんが持つ日本記録へ12秒差と迫る好タイムに、女子マラソン界は沸き上がった。

1月29日の大阪国際女子マラソンでは、安藤友香(ワコール)が2時間22分58秒で日本人トップの3位に食い込んだ。2月26日の大阪マラソンでは、渡邉桃子(天満屋)が2時間23分08秒で3位となる。24歳の新鋭は地元のレースで自己ベストを7分以上更新し、MGC出場権をつかんだ。

経験者も存在感を発揮する。3月5日の東京マラソンで、22年世界選手権マラソン代表の松田瑞生(ダイハツ)が2時間21分44秒で6位でフィニッシュした。同12日の名古屋ウィメンズマラソンでは、東京五輪マラソン代表の鈴木亜由子(日本郵政グループ)が2時間21分52秒の自己ベストを叩き出した。

8月の世界陸上女子マラソンには、松田瑞生、加世田梨花(ダイハツ)、佐藤早也伽(積水化学)の3人が出場した。男子同様に7時スタートのモーニングセッションだが、日差しが高くなるにつれて気温が上昇していく。日本勢はレース中盤まで先頭集団に加わっていたが、徐々に後退を余儀なくされていく。

日本勢最高位は松田の13位だった。レース後には、準備段階で足を痛めていたことを明かした。加世田は19位、佐藤は20位でレースを終えた。

続く国際大会のアジア大会には、大西ひかり(日本郵政グループ)と和久夢来(ユニバーサルエンターテインメント)が出場した。大西は22年9月のベルリンマラソン(ドイツ)で、2時間25分54秒の記録を残した。10月のMGCにはエントリーせず、アジア大会に集中している。一方の和久は3月の名古屋ウィメンズマラソンで、自己最高の2時間25分58秒で7位入賞を果たしている。

17人が出場したレースでは、大西が序盤から引っ張った。20キロ付近からペースが落ちてしまい、徐々に差を広げられて5位でフィニッシュした。序盤から遅れた和久は、13位でレースを終えている。

女子のMGCは男子と同じ10月15日に、男子から10分遅れでスタートした。1月のヒューストンマラソンで歴代2位のタイムをマークした新谷は、9月24日のベルリンマラソン出場を優先してエントリーしなかった(ベルリンマラソンは11位)。

24人がふたつのイスを争うサバイバルは、有力選手がトップ集団の形成しながら進んでいく。レースが動いたのは23キロ過ぎだった。一山麻緒(資生堂)と細田あい(エディオン)が抜け出す。そこから10キロほど並走し、33キロ付近で一山が前へ出る。

ここから一山がレースを引っ張るが、鈴木優花(第一生命グループ)が38キロ付近で一山を抜いてトップに立つ。そのままリードを保ち、2時間24分9秒のタイムでフィニッシュテープを切った。出場選手最年少でマラソン3レース目の24歳が、自己記録を更新してパリ五輪代表の座を射止めたのだった。

2位争いは一山が制した。東京五輪で日本女子勢最高の8位入賞を果たした26歳が、粘りの走りで2大会連続となる五輪出場の切符を手にしたのだった。前回の五輪はファイナルチャレンジでの代表入りだったため、MGCでの内定は初めてとなる。

女子も男子と同様に、3つの代表枠の最後はファイナルチャレンジ指定大会の結果で決まる。24年1月28日の大阪国際女子マラソン、同3月10日の名古屋ウィメンズマラソンがその対象レースだ。設定された記録を上回る選手がいなければ、MGC 3位の細田あいが代表資格を手にする。

女子では世界陸上代表でMGCをケガで欠場した松田、東京五輪代表の前田穂南(天満屋)らの出場が見込まれている。また、日本歴代2位の記録を持つ新谷の動向も注目が集まる。

パリへのサバイバルから、24年も目が離せない。

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