ミズノ「WAVE REBELLION PRO 3」&「WAVE REBELLION PRO LOW」発売!
■WAVE REBELLION PRO 3(ウエーブリベリオンプロスリー)発売!
登場はとてもセンセーショナル、度肝を抜くそのルックスで2023年正月にデビューしたWAVE REBELLION PROシリーズも、今回で3代目、WAVE REBELLION PRO 3(ウエーブリベリオンプロスリー 以下:PRO 3)にアップデイトされました。
そして、WAVE REBELLION PRO LOW(ウエーブリベリオンプロロー 以下:PRO LOW)が同時に発売され、こちらはその名の通り、“ LOW “とあって全体的にフラットな形状、今回からランナーへのオプション、選択肢が広がった印象です。
やはり、こちらもPRO 3同様に、こだわりの機能性「SMOOTH SPEED ASSIST(スムーズスピードアシスト)」搭載モデルとなっています。
では、その辺りも含めて、どんな特徴があって、どう選び分けして、そして、どんなランナーに合うのか、解説をしていきたいと思います。
■ PRO LOWが加わり、2種類になり選択肢が広がった
WAVE REBELLION PRO LOW
まずは、今回からPRO 3に加えて、PRO LOWが加わったことが大きなトピックスです。
一見、この形状だけ見ると、World Athletics(ワールドアスレティックス)の定める「ソールの厚みが40mm以内」と言うシューズルールに抵触してイリーガル(未公認)シューズのように見えます。しかし、こちらはリーガル(公認)シューズですのでご安心を。
そのトリックはこうです。
スタックハイト(ソールの厚み)の計測ポイントは、踵から12%、75%の位置と決まっているのですが、このPRO 3とPRO LOWは、シューズを側面から見ると、実はそのポイントには厚みがない、というトリックとなっています。
逆にそのトリックを利用する形で、例えばPRO 3は計測ポイントではない1番分厚い部分は60mm近くあり、スーパーシューズ界で唯一無二のマックスクッションスタイルを実現しているわけですね。
WAVE REBELLION PRO 3
とは言え、このスタイルは世界中で徐々に話題になっていますが、まだまだNIKE VAPOR FLYのように沸点が来ていないことも事実。ですから、このタイミングでPRO LOWを選択肢として発売、ミズノとしてはWAVE REBELLIONシリーズを少しでも多くのランナーに体験して欲しいという思いがあるはずです。
■PRO 3とPRO LOWどこが同じで、どこが違う?
さて、このPRO 3とPRO LOWですが、スペックで言うと、SMOOTH SPEED ASSIST、カーボン繊維強化ナイロンプレート、もちろんアウトソールはお馴染みのG3ソール、そして、今回から新しくなったMIZUNO ENERZY XP(ミズノエナジーエックスピー)搭載と共通点が当然多くなっています。
そして、それぞれの違いというと、その見た目に象徴されています。
ちなみに、写真ではPRO 3ソールが厚く、PRO LOWが薄く見えますが、ナント、スペック上は、39.5mmと40mmとPRO LOWの方が厚いというトリック、これも計測位置やこの形状に由来するわけで、このシリーズの魅力を物語るエピソードです。
向かって左がWAVE REBELLION PRO LOW、右がWAVE REBELLION PRO 3
では、この見た目の形状で一体何が変わるのか
これにより、踵アングルの上がる場所、上がる角度が変わるので、「着地時に接するソールの接地感覚」と「想定するアシストスピードに違い」が出てきます。
そもそも、今回、どちらのモデルもソール裏側のクッションホールを少なくして、接地面を増やし、接地感を高めています。PRO 3は前作PRO 2と比較するとアングル角の立ち上がる位置、角度が違うことが分かりますよね。
WAVE REBELLION PROシリーズ(手前から3→2→1)
ソール中心部をくり抜くことは、軽量性とソールがたわむことでクッション性にプラス効果があり、他社ブランドでもこの形状は多く採用されています。しかし、このWAVE REBELLION PROシリーズにとっては、この部分こそ実は要。今回のアップデイトでは、ホールをヒール部のみにして、着地の安定要素を高める方向に舵を切っています。
その上でアングル角の角度ももちろんですが、上がる位置が後方で、よりフラットな形状のPRO LOWは、接地面積と接地感覚の高いモデルになっていて、違う言い方をすれば、より一般的な形状になっており、このシリーズの入門編的ラインナップという側面もあると思います。
■SMOOTH SPEED ASSISTのアシストと接地感の違いが形状の違い
このモデルができるまでに数えきれない数のアングル角度を試したそうです。
そして、その中から絞れたこの2種類は、接地感覚がキーになってくるでしょう。
ふくらはぎの伸長を抑えて、力を発揮すると言う論理がSMOOTH SPEED ASSISTです、アングル角が急角に設定されていて、強く前傾姿勢を保ち続けるようなポジションになるのがPRO 3、こちらは前方向での蹴り出しが活発になる作りフォフットストライクをイメージしている形状です。
一方、よりフラットなPRO LOWは、ややPRO 3よりもミッドフットストライクを想定したスタイルになっています。
今回、フラットエリアが37%、プレートエリアも14%、接地面が高まった作りになっていることは大きなポイントなのですね。
ちなみに、この発売に先駆けてWAVE REBELLION PRO Natural(ウエーブリベリオンプロ ナチュラル)が6月に限定発売、こちらはPRO LOWと同じミッドソール素材MIZUNO ENERZY XPを搭載しつつも、SMOOTH SPEED ASSIST非搭載という違いがあります。
向かって左がWAVE REBELLION PRO LOW、右がWAVE REBELLION PRO Natural
PRO 3とPRO LOWに加えて、PRO Naturalを入れたこのシリーズのラインナップは、スピードレンジや距離によって、スペックやランナーの好みで使い分けられるようになったと言っていいでしょう。
■SMOOTH SPEED ASSIST復習
そして、ちょっとこのSMOOTH SPEED ASSISTの効果を復習しておきましょう。
特許を取得したこの底面構造は、ランナーがより効率的にラクに速く走れること、具体的には、ふくらはぎの負担軽減を目指した機能性です。
蹴り出し時のふくらはぎの伸長性収縮、足関節の負の仕事を4.3%低減することになり、つまり単純にふくらはぎの負担が減るという研究データになっているそうです。
そこに長らくこだわってきたMIZUNO WAVEの知見がプラスされて、カーボン強化繊維ナイロンプレートが着地時の安定感をサポートして、SMOOTH SPEED ASSISTの機能性を高めているんです。
あくまでカーボンプレートではなくて、カーボン強化繊維ナイロンプレートにこだわっているのは他社のモデルとはプレートの役割が少し違うという側面があるようです。
■MIZUNO ENERZY XPにパワーアップ
そして、今回から新しい素材、MIZUNO ENERZY XPにパワーアップ。従来のMIZUNO ENERZYに比べて、12%クッション性、17%反発性アップしました。履いて走ってみると、感覚的にもまずそこを感じるランナーが多いはずです。
前回まではソール硬度の違う2種類の素材でプレートをサンドイッチする構造でした。しかし、今回サンドイッチ構造は同じですが、MIZUNO ENERZY XPのみで構成するミッドソールに変わっています。クッションと反発弾性の機能性を活かす方向にシフトしたと言っていいでしょう。
ソールバウンド感はもちろん同じですが、ミッドソールの形状差から出る容積の違いからSMOOTH SPEED ASSISTと相まって、それぞれのクッション性に差が少し出ます。
また同様に重量も同じで、PRO 3→PRO LOW→PRO Naturalの順で軽量になります。私のサイズ25.5cm でそれぞれ、197g、188g、186gとなっていて、他社のスーパーシューズと比較しても遜色のない軽さになっていると言っていいですね。
■まずはPRO LOWをオススメしたい
このようにスペック上は、機能性と対象となるランナーのスピードや使用する距離に違いがあり、ミズノは今回2種類のモデルを発表して、その選択肢を提案してくれたわけです。
その上で、私はWAVE REBELLION PROシリーズを体験してみたい、というランナーには、より一般的な形状のPRO LOWからオススメしたいですね。
WAVE REBELLION PROシリーズを3代履いてきた私でも、このPRO LOWは自然な接地感がありながらも、SMOOTH SPEED ASSISTの独特な着地感覚も同時に起こるような、ある種、とても新鮮な感覚で気に入っています。
今までどうしてもこのシリーズは馴染めなかったというランナーにも再チャレンジしてほしいモデルだと感じます。
また、PRO 3はスピードにハマる感覚があります。反面、ピッチをあげるようなフットワークの良さはPRO LOWの方が断然いいです。
ロングディスタンスではPRO 3、ショートやロングもこのモデルの特性が好みならPRO LOW、SMOOTH SPEED ASSIST非搭載のPRO Naturalは5Kや10Kのショートディスタンスというイメージですね。
このスペックは、フルマラソンであれば、サブ3から3.5ぐらいのランナーにフィットするモデルですが、どちらのモデルも前方方向の助力がカチッと制限される感覚ですし、そもそもヒールストライクがしにくい形状なので、例えば、ワークアウトで使用して、ランニングフォームを意識するような使い方もいいと思います。
是非一度店頭でお試しになってください。オススメです。
<著者プロフィール>
ランニングシューズフィッティングアドバイザー
藤原岳久(FS☆RUNNING(旧 藤原商会)代表)
日本フットウエア技術協会理事
JAFTスポーツシューフィッターBasic/Advance/Master講座講師
足と靴の健康協議会シューフィッター保持
・ハーフ1時間9分52秒(1993)
・フルマラソン2時間34分28秒(2018年別府大分毎日マラソン)
・富士登山競走5合目の部 準優勝(2005)
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